平成30(2018)年度 日本語指導助手レポート 頑張り屋なブルガリアの学生

ソフィア大学
納土 知樹

私が派遣されているソフィア大学は、東欧のブルガリア共和国の首都ソフィアに位置し、1968年に夜間の一般公開講座として日本語の授業が開始され、1981年から日本語教育専門家が派遣されています。2001年に現在の東アジア言語文化学科日本学専攻が作られ、そして、日本語指導助手(以下、指導助手)は2008年から派遣が開始されました。

指導助手の業務は様々なものがありますが、主な担当業務は1年生の日本語初級クラスの指導と運営です。1年生の日本語の授業は1週間で90分×7コマあり、学期によって編成は変わりますが、私を含め3~6人の教員で授業を担当しています。1年生の学生登録数は約25人です。日本語学専攻の学生は言語習得に関する能力がとても高く、入学前の時点でブルガリア語、英語そしてフランス語やドイツ語等の第二外国語を習得しており、他言語・文化を受け入れる素地ができているように見えます。また、積極的で頑張り屋な学生が多く、授業では積極的に質問や発言をします。毎学年度末の5月に行われる日本文化祭は、学生が自主的に運営をしており、長い時間をかけて準備や練習をした様々な日本文化のワークショップやパフォーマンスを行います。担当学年の運営に関しては、前任者から運営に関わる資料が引き継がれていたので、その資料を基に同じ学年の担当教員から話を聞きながら、スケジュールやシラバスの作成をします。

日々の授業だけでなく、学外のイベントに関する業務もあります。ソフィアでは、1年に1回日本語弁論大会が行われます。その大会に参加する学生に対しての指導は、授業外に行われます。2018年度の弁論大会には、ソフィア大学から3人参加しました。それぞれの学生の原稿の作成から発表練習まで、1か月以上も平日の授業外の時間や、直前には学生からの依頼で休日も顔を合わせて、発表の日に向けて準備をしました。参加者の内の1人は、私の担当しているクラスの学生でした。授業内でも空き時間はクラスメートを観客に見立てて発表の練習を行ったり、当日はクラスで応援に駆け付けたり、ある学生は皆の分のおにぎりを作って来たり等、参加者だけでなく、クラスメートも気合が入っていました。本番では、全参加者とてもいい出来で、入賞した学生もおり、指導を担当した他の先生同士で話をしていても、満足の声が挙がっていました。私自身、日頃の授業で、クラスでの仲間意識が強くなるように取り組んでいたので、この弁論大会でのクラスのまとまりを見ることが出来て、とてもいい経験になりました。

日本語弁論大会に参加した学生との写真
日本語弁論大会に参加した学生と

私で指導助手の派遣が終了するという事で、取り組んだ事はいくつかありますが、その中の一つに、学生の自主学習環境の構築があります。ソフィア大学への指導助手の派遣が終了すると、今まで指導助手が担当していた業務を現地教員が担うこととなり、現地教員は授業以外にも様々な業務や仕事を抱えているので、負担が大きくなることが懸念されます。その結果、学生へのケアが不十分になってしまう恐れもあったので、学生自身が自主的に学習する環境や習慣が必要だと考えました。もちろん大学生なので、宿題や課題を個人でする事はしているのですが、学習でつまずいた時や、意欲が下がってしまいそうな時に、学生同士が教えあったり、支え合ったりする事が出来れば、相乗効果として学生の質が上がっていき、それによる教員の負担の軽減、そして指導の質の向上にも繋がると思いました。そこで、担当学年の教員と話し合い、授業外の時間で教室を借りて、自由参加の形で自主学習時間を作りました。そこでは、日頃の授業のような形で私が話す事はせず、学生が自分の勉強したい事を決めてそれに取り組み、わからない事はお互いに質問し合う、そして、それでも解決しない事はこちらに質問をしに来るという形にしました。また、ソフィア大学には毎年日本の大学から日本人留学生が来るので、その学生も参加してもらい、彼らはブルガリア語や英語の学習を行いながら、グループで自主学習に取り組み、お互いが教え合うという環境を作りました。すると、私が授業で行っているアクティビティ等をする学生が出てきました。また、学生からアンケートを取ると、会話練習や日本語を使ったアクティビティをしたいという学生も出てきたので、こちらからアイデアを提示して学生がそのアクティビティをする機会も作りました。学年度末に近づき、学生にこの自主学習時間を作った理由、そして、これからその学生が2年生になってからは、この自主学習時間を先生が作ることができるかはわからない事を話した後に、今後についてアンケートを取ると、学生主体で続けていきたいという声が多く挙がりました。もちろん、私が見ているからこその建前の意見もあるかも知れませんが、この意識が持続され、また来学年度の新1年生も交えた形で、この環境が受け継がれていくように私自身も残りの派遣期間で取り組もうと考えています。

学生の漢字ノートの写真
学生の漢字ノート

御精読頂きありがとうございました。

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