令和元(2019)年度 日本語指導助手レポート タスマニアでのティーチングアシスタントとして

シドニー日本文化センター(ホバート)
芝沼 梨沙

「オーストラリア」と聞くと、みなさんはどのような地図をイメージされるでしょうか。人によってさまざまだと思いますが、オーストラリアには、本土の右下に小さな島があるのをご存知ですか。そこはタスマニア島と呼ばれ、私はその島に住んでいます。

ここ、タスマニアに日本語指導助手(以下、指導助手)として派遣され1年が経ちました。私はタスマニア島内にある小学校~高校を訪れ、それぞれの学校で、現地教師とチームティーチングを行っています。ここでは、タスマニアで行っている私の業務をご紹介したいと思います。

オーストラリアでの指導助手としての活動

タスマニアでは

ティーチングアシスタントとして様々な小学校~高校を訪れ、各学校の先生とチームティーチングを行っています。より豊かな日本語クラスを運営するために、先生のリクエストに沿った教材やクラス活動の提案をしたり、リソースの紹介をしたりしています。日々学校が変わるので、授業の準備などが大変ですが、汎用性の高いパワーポイントなどを作成し、それぞれの学校の進捗・要望に合わせて編集し使えるようにしています。

その他には、現地教師会と関わりを持ち、定期ミーティングへの参加やスピーチコンテストの運営・審査をしたりしています。

高校2~3年生の授業の写真
College(高校2~3年生)での授業の様子

シドニー日本文化センターの方々と共に

シドニー日本文化センターの方々とは、年2回開催されている教師研修の運営を共に行っています。この研修では、私は「日本の新しいモノ・コト」を紹介し、それをどうクラス活動につなげるか、というセッションを担当しています。日々ネタ集めを行い、それらを使ったクラスアクティビティーを考えているので、大変な面もあるものの、とても楽しいです。それから、上級専門家、専門家の方が担当するセッションも見学できるので、自身の勉強にもなっています。

上級専門家の方とは、定期的にZoomミーティングを行っており、タスマニアでの活動報告をしたり、アドバイスをいただいたりしています。シドニー日本文化センターの方々とはいつもコミュニケーションがとれる状態なので、単独派遣の身としては、精神的にも大きくサポートしていただいていると感じます。

日本語教育?異文化理解?

前述のとおり、タスマニアは本土から離れているため、オーストラリア全体で比べると、外国人の数が多くありません。特に、北部地域や西部地域では、日本人だけでなく、外国人を見るのが初めてだという学生が少なくありません。また、小学校などでは授業時間が30分しかないという学校もあります。その一方で、スピーチコンテストに意欲的に臨んだり、ELLAプログラム(未就学児対象の言語プログラム)を積極的に利用し、幼少期からの言語学習に力を入れたりしている学校もあります。多種多様な学習環境の中で、それぞれの外国語教育において、指導助手として果たして一体何を求められているのか、考える日々が続きました。私は、日本語を教えることとは、日々新しい文法や語彙を教え、練習をし、教室を出るころには、一つ新しい日本語の知識が身についているというのが理想だと考えていました。しかし、ある先生に言われた一言に、自身の言語教育観を改めて考えさせられました。それは、「私たち言語教師は、生徒たちに“世界とはなにか”を教えるのが仕事だから」という一言でした。環境によって、言語知識より異文化理解の方を重視されることがある、ということを初めてきちんと理解できた瞬間だったと思います。

今では、異文化理解を通してどんな日本語をインプットすることができるのか、この学校の生徒にとって必要な知識は何か、現地教師と共に考え、クラス活動を行っています。もちろん、学校によっては言語の知識にフォーカスしているところもあるので、そういった学校にはその期待に沿うような教材やクラス活動を提案しています。

今後の活動

タスマニアでは、外国語学習者数が年々減少傾向にあることが問題視されています。学生が継続して日本語を学び、そして将来日本語教師として活躍する人が一人でも多く育つように、それぞれの先生方のティーチングスタイルに沿ったサポートの仕方を考え、結果として学生たちの学習継続意欲向上につなげることが出来ればと思っています。

小学6年生がクラスでミニゲームをしている写真
Grade6(小学6年生)クラスでミニゲーム

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