令和元(2019)年度 日本語指導助手レポート 日本語が作りだす「学びの場」

パリ日本文化会館
井上 美優

2018年6月から2019年2月にかけて「ジャポニスム2018」という大規模な文化芸術イベントがフランス・パリを中心に行われました。イベントが行われた8か月の間に300万人を動員し、パリが日本文化に沸き始めた2018年6月に、私は日本語指導助手(以下、指導助手)としてパリ日本文化会館(以下、会館)に派遣されました。会館はセーヌ川に面しており、ガラス張りの会館上階からはパリの四季を180度眺めることができます。フランスの日本文化発信の中心である会館の日本語事業部に指導助手は所属しており、研修サポートから会館日本語講座まで、業務の幅は多岐にわたっています。会館に着任して約1年の間に、日本語教育を通して多種多様な「学びの場」作りを行ってきました。ここでは、指導助手が特に関わっている「学びの場」作りについて紹介しようと思います。

日本語学習者×日本語

会館では「まるごと 日本のことばと文化」を使用した日本語講座を行っています。指導助手は90分の授業を週に2~3コマ担当しています。主に成人学習者が多く、趣味で習っている学習者が大半を占めます。ここでの私の役割は日本語と学習者を繋ぐ「学びの場」を作ることです。教師が一方的に学習者に話すのではなく、クラスの中で学習者が失敗を恐れず発言し、学習者同士で意見を交換し、お互いに教え合えるようなクラスになるよう心掛けています。授業後には、良かった点・良くなかった点などを振り返り、次回以降の授業に反省を生かし、日々精進を重ねています。

指導助手が担当している初級2A2のクラスの写真
指導助手が担当している初級2A2のクラス

人×人

会館の講座受講生を対象に、パリ近郊在住の日本人と交流する交流会「しゃべろん」を3か月に1回の頻度で行っています。この交流会では指導助手が企画・運営を担当しています。この交流会では4~5人のグループになって約2時間、自由に会話を楽しみます。時には「ジャポニスム2018しゃべろん」などテーマを決めて話す交流会も行いました。交流会終了後に、連絡先を交換したり、日本語で楽しそうに話している受講生の姿にやりがいを感じます。日本語を勉強していても、普段日本人とあまり接点がない講座受講生にとって、日本語で話すよい機会になっています。更に、参加する日本人の方にも好評で、毎回来てくださる方もいます。この交流会は「人と人を繋ぐ学びの場」であり、言語の練習だけでなく教科書に載っていないお互いの国の文化や生活について知ることができる、大変貴重な機会となっています。

交流会「しゃべろん」の中でジャポニスム2018について話をしている写真
交流会「しゃべろん」の中でジャポニスム2018について取り上げました。

教師×教師

日本語事業部の三大事業である「フランス中等教育機関日本語教育研修会」や「欧州日本語教育研修会」などの「教育者の学びの場」である研修会にも上級専門家と協力して企画段階から運営まで指導助手が携わります。これらのイベントの中での指導助手の主な仕事は研修の細かい準備です。一つのイベントを実施するには、その4~5か月前から準備が始まり、指導助手は参加者とのやりとりや資料の作成、会場の準備、備品の手配などの表にでない業務が多いです。しかし、そのような業務を担当することで、研修の企画時から研修後のフォローアップまでの一連の流れを上級専門家の隣で学ぶことができ、大変勉強になります。研修当日は、フランスないし欧州で活躍され、エネルギーに満ち溢れている先生方にお会いでき、「私ももっと頑張らなくては」といつも刺激をもらっています。

日本語教育×私

2014年に初めて日本語教育現場に飛び込み、日本語を教えることだけが日本語教育だと思っていた視野の狭い私に、会館での多岐にわたる「学びの場」が、日本語教育の幅広さを教えてくれました。今後は、日本語教育について専門的な勉強を続けていきたいと考えていますが、様々な形で日本語教育に携わることが可能だとわかったので、更なる日本語教育の可能性についての見識を広げ、様々な日本語教育現場で「学びの場」を作っていきたいです。

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