令和元(2019)年度 日本語指導助手レポート ベトナムの日本語教育はワクワクが止まらない

ベトナム日本文化交流センター
森近 美菜

私の所属先である国際交流基金ベトナム日本文化交流センターは、ベトナムの首都ハノイにあり、国際交流基金の東南アジアにおける5番目の拠点として、2008年3月に開設されました。私がハノイに着任した2018年6月から現在2019年5月までの約1年間の業務についてご報告します。

ベトナム全土には国際交流基金から上級専門家1名、専門家8名、指導助手1名の計10名が派遣されています。特にベトナムは専門家の数が多いため、多岐にわたる日本語教育関連事業を専門家とともに行い、色々な事業に関わって仕事をしています。それぞれの専門家から様々な仕事の仕方や考えを聞き、貴重なアドバイスを頂くことができるのは日々大変勉強になります。

日本語指導助手である私は中等教育の業務を中心に携わっていますが、現在ベトナム全土で90校を超える中学校、高校で日本語教育が行われており、学校、生徒数とも増加の一途をたどっています。

日本語を通して生まれる新しい学び

日本語指導助手としての中等教育における主な業務のひとつは、北部のハノイ、ハイフォンの中学校・高校で日本語を教えるベトナム人教師の授業サポートです。教材の作成や教案チェック等の授業準備をし、授業を見学して改善につながるようなフィードバックを行うこともあります。その中で、ひとつのエピソードをお伝えしたいと思います。

ハノイには一般の生徒と視聴覚障害のある生徒が一緒に学習している中学校があり、そこでも日本語教育が行われています。

その日本語クラスの先生から、「視覚障害のある生徒は教科書を読んで学習することが難しい。全員一緒に能力を高めていくにはどうすればいいでしょう」という相談がありました。

そこで生徒にとって一番いい学習方法は何か、先生と一緒に話し合い、まずは、テキストを見なくても聞くだけで日本語が勉強できるように、日本語パートナーズの方の協力を得て、ベトナム語と日本語で吹き込んだ音声教材単語リストを作ることから始めました。

音声教材の作成風景の写真
音声教材の作成風景

これはほんの小さなサポートに過ぎませんが、こうした一つ一つがベトナム全土の中等教育現場の日本語学習の将来に繋がる助けになればいいなと願っています。

これからも現場のあらゆるニーズに応えられるよう、ベトナム人教師のサポートをするにあたって、常に身近な存在でありたいと思っています。

新しい挑戦と成長

指導助手をしていて面白いと思うことは、常に新しい挑戦ができることです。研修やJF講座の講師、スピーチコンテストの審査員やニュースレターの編集、大きなイベントの企画・運営など、数えきれないほどの日本語教育に関連する様々なイベントや行事に携わることができます。そして、それら全てが自身の学びに繋がっていると実感しています。

中でも一番記憶に新しいのは、「ベトナム中学生日本語キャンプ(以下、中学生キャンプ)」です。指導助手が企画、運営をする新たな挑戦の場を頂きました。

この中学生キャンプには日本語が導入されている全国の中学校32校から中学生51名、ベトナム人教師17名が参加しました。3日間にわたる様々な活動は、生徒にとって日ごろの日本語学習の成果を発揮する場であると共に、全国の生徒との日本語を通した交流の場となりました。企画から当日に至るまで、ベトナム人の先生方にも関わって頂き、協働のプロセスの重要性を先生方と共に体験できた貴重な時間になりました。

今後は、ベトナム人教師の皆さんが中心となり、この中学生キャンプのような授業外の活動においても、互いに持つ知識・経験・アイディアを共有しながら、更に自立していける仕組みづくりをしていくことが大切になるのではないかと感じています。

ベトナム中学生キャンプ2019の集合写真
ベトナム中学生キャンプ2019

今後の抱負

これからは、「にほんごフェスティバル」というスピーチコンテストの実施や、「にほんご人フォーラム2019」という東南アジア5か国の日本語教師と高校生を対象にした、年に1回10日間程度の教師研修・相互交流プログラムがベトナムのダナンで行われるため、その開催に向けて、今まで以上に様々な業務をこなしていかなくてはなりません。今まで経験したことのない業務ですので戸惑いや不安は尽きませんが、それをチームのみんなで達成できた時には更なる喜びと、成長が待っていると信じています。

今の自分に「何が求められているのか」ということを常に考えながら残りの約1年間もベトナムの日本語教育の普及、発展の役に立てるよう、精一杯支援させて頂きたいと思います。

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