令和元(2019)年度 日本語指導助手レポート 多様な日本語教育の中で

マニラ日本文化センター
村上 奈未

マニラ日本文化センター(以下、JFM)に赴任してから早いもので1年が経ちました。私は、中等教育チームに所属し、主に高校教師の支援をしています。JFMの日本語指導助手(以下、指導助手)は、幅広い業務を担当しますが、今回は特に私がやりがいを感じた2つの業務を紹介します。

オンラインで勉強しよう!

研修で使用する教科書の画像
研修で使用する教科書

フィリピンの中等教育では、英語や社会といった他教科の教師が3年の研修を経て、日本語教師として教壇に立ちます。その為、JFMの中等教育チームは、フィリピンの夏季休暇に当たる4月から5月にかけて5週間の夏季集中研修と月に1度の補完研修を実施しています。この研修では、フィリピンの中等教育用教材『enTree Halina! Be a NIHONGOJIN!!』の教材分析、レアリアの使い方、模擬授業などが実施されます。また、『まるごと 日本のことばと文化』による日本語学習も行われ、研修後に、各高校で日本語教師として教壇に立てるように研修が構成されています。

2018年度は、研修3年目の教師に、通常の通学型の研修に加えて「JFにほんごeラーニング みなと」を使用した自主学習とオンラインツールを使用した日本語レッスンを実施しました。研修の対象となる高校教師は広範囲に在籍しており、通学となると数時間かけて研修先まで出向かなければいけないこともあります。そのような教師にとって、オンラインでのレッスンは、魅力的だったようです。オンラインレッスンは、自主学習で学んだ文型や語彙を使って話すことをメインに行われます。おしゃべりが大好きなフィリピンの先生たちとのレッスンは、毎回あっという間に終わってしまいます。

通学型と変わらず元気いっぱいの先生たちが、パソコンの画面を通して日本語の勉強をする。支援のあり方も少しずつ変化していることに、私も対応していかなければいけないと思っているところです。

笑いあり、涙あり、感動ありのにほんご人フォーラム in フィリピン

みなさんは、「にほんご人」という言葉を聞いたことがありますか。

にほんご人とは、国際社会において日本語を使って何かを達成したいという意思を持ち、そのために日本語でコミュニケーションをする人々を指します。JFMは、かめのり財団と共催で、にほんご人フォーラム in フィリピン(以下、JSFP)を毎年1月に実施し、日本とフィリピンの中高生が相互交流する機会を提供しています。

このJSFPを担当する中等教育チームでは、フォーラムの数か月前から幾度も協議を重ね、テーマやプログラムの設計を行います。2019年のフォーラムでは、“もったいない”をテーマに、日常生活にあるごみ問題について考えました。このテーマを決定するまでに、中等教育チーム全員がプログラム企画案を作成し、内容を検討していきました。参加者に気づいて欲しいことは何か、どんなインプットが必要か、フィリピンと日本の中高生が相互交流する仕掛けはどうするのかなど、様々なことを中等教育チーム一丸となってアイディアを出し合います。

こうして完成したプログラムを基に3日間のフォーラムが開催されます。指導助手が主に担当したパートは、日本語と振り返りのセッションです。日本語のセッションでは、日本人の生徒に絵カードを渡し、フィリピン人の生徒に日本語を教える場面を作りました。日本語を初めて教えたという日本人生徒がほとんどで、とても楽しんでくれたようです。また、振り返りのセッションは、3日間という短期間で様々な気づきや学びを深める為に、私が最も準備に力を入れたパートです。参加している生徒たちが、楽しかったこと、苦労したこと、頑張ったこと、乗り越えたことなど、気づいたことや学んだことを一緒に共有できた貴重な時間となりました。

伝統衣装を着て相互交流をしている写真
伝統衣装を着て相互交流の時間!

フィリピンの生徒にとっては、初めて日本人と接する機会となり、日本の生徒にとっては、やさしい日本語と英語を使って、コミュニケーションをするという機会となりました。どの参加者も、相互交流を心から楽しみ、時にはコミュニケーションがうまくいかず悔しい思いをしたりと、3日間で、様々な表情を私たちに見せてくれました。このような人の成長と出合えることも、中等教育チームで業務をする醍醐味です。

JFMでは、講座、EPA、中等教育チームがあり、多様な日本語教育を提供しています。フィリピンは、様々な想いで日本語を学んでいる学習者と出会える、いま一番熱い国かもしれません。そのチームの一員として、指導助手も日々の業務にあたっています。

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