令和2(2020)年度 日本語指導助手レポート マレーシアの中等教育派遣

マレーカレッジ・クアラカンサー
齋藤 綾日

私が派遣されているマレーカレッジ・クアラカンサー(以下、マレーカレッジ)は首都クアラルンプールから車で3時間離れたのどかな町にあります。マレーカレッジは歴史ある全寮制男子中等学校で、1年生から5年生まで(日本の中学1年生~高校2年生)各学年約120人、計約600人の生徒がともに学んでいます。マレーカレッジには日本語教師として、現地教師1名のほか国際交流基金から派遣された日本語指導助手(以下、指導助手)が在籍しています

学校の寮とグラウンドの写真
学校の寮とグラウンド

指導助手の業務

マレーカレッジでは第二外国語として日本語、フランス語、中国語、アラビア語が設置されており、入学時に全員それらの中から一つの言語を選択し、その後5年間にわたって学習します。日本語は最も人気が高い言語です。日本語クラスのみ2クラスあり、一つは現地日本語教師のクラス、もう一つは私が担当しています。指導助手の主な業務は、日本語クラスの授業、日本語クラブの活動、試験の問題作成、スピーチコンテストの指導、職員会議の出席、学校行事への参加などです。

また、業務とは別に毎朝校門に立って挨拶をする活動も行っています。この活動は前任者から続いているものです。その甲斐もあり、マレーカレッジでは日本語履修者のみならず、多くの生徒たちが校内ですれ違うたびに「おはようございます」、「こんにちは」と日本語の挨拶をしてくれます。

日本語の授業

日本語の授業は各学年週2回あります。基本的にマレーシアの日本語の教科書『日本語-BAHASA JEPUN-』の学習項目に沿って授業を進めますが、時にゲームや文化紹介も取り入れています。生徒たちは日本のアニメや日本の文化が大好きです。しかし、日本語を学ぶにつれ「難しい」と感じる生徒も少なくありません。また、マレーカレッジの生徒たちの傾向として、聞いた音を即座に再現する能力に長けている一方、使う機会がないため短期間で忘れてしまうという課題がありました。そこで、一年目に心がけたことは「繋げる」ことです。学習項目を生徒の興味がある話題や身近な学校生活に繋げたり、毎時間行う単語練習で覚えた単語を意識的に会話やリスニングに取り入れたりして、覚えたものを点ではなく線として繋げるようにしました。暫くすると、教師の質問に自ら発言する生徒や「聞き取れた」とひらめいた表情をする生徒がでてきました。まだまだ試行錯誤の日々ですが、現地日本語教師や国際交流基金クアラルンプール日本文化センターの日本語上級専門家からアドバイスをもらいながら、経験を積んでいます。二年目は「繋げる」から「使える」を心がけていきたいです。

課外活動

マレーシアの中等教育、特に全寮制のマレーカレッジでは一日の時間割から年間行事に至るまで予定が組まれており、教科単位で課外活動を行える機会があまり多くありません。一方で、文化祭や運動会といった学校イベントはたくさんあります。

2019年11月に第二外国語学科(日本語、フランス語、中国語、アラビア語)で国際言語祭を開催しました。マレーシア各地から中等教育の外国語学習者をマレーカレッジに招待し、約20校が集まりました。文化紹介、踊り、伝統的な遊び体験、キャラ弁作りなど様々な活動を通して言語・文化交流をしました。キャラ弁づくりでは、グループでアイデアを出し合い、黙々と作る姿が印象的でした。どれも食べるのがもったいないお弁当ばかりでした。

生徒たちが作ったキャラ弁の画像
生徒たちが作ったキャラ弁

一年を振り返って

赴任してからはや一年以上が経過しました。試行錯誤しながらマレーシアの中等教育の現場に携わり、生徒たちや教師陣と同じ時間を共有できていることはとても貴重な経験です。この一年を振り返り、様々な学校行事に参加したことで、日本語履修者・非日本語履修者の垣根を越えて、生徒たちと交流することができました。私は日本語を履修していない学生との交流も重要だと考えています。日本語を履修していない学生にも日本に触れてもらいたいという意味もありますが、それ以上に日本語履修者への良い影響が期待できるからです。日本語履修者の多くの学生は「日本語を話さなきゃ」というプレッシャーを感じています。一方、履修していない学生はそのようなプレッシャーがないので、知っている日本語を披露したり、英語で話しかけてきたりしてくれます。彼らの存在がその場の雰囲気を和ませ、日本語に対するハードルを下げ、巡り巡って日本語履修者の口を開かせてくれます。この短い期間の中でそのような場面に何度も遭遇しました。お互いのことについて話しながら、少しでも日本のことや日本語が出てきたときは嬉しく感じます。

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