令和2(2020)年度 日本語指導助手レポート 白亜の国の日本語教育‐トルクメニスタンの日本語教育現場より

トルクメニスタン国立ドゥーレットマーメットアザディ名称世界言語大学/
トルクメニスタン国民教育大学(研究所)
派遣日本語指導助手 大内 将史

トルクメニスタンは、カスピ海の西、ウズベキスタンとカザフスタンの南、イランの北に位置する中央アジアの国です。2020年7月現在、国際交流基金(以後、基金)からは日本語上級専門家(以後、上級専門家)と日本語指導助手(以後、指導助手)が派遣されています。

トルクメニスタンの日本語教育は、2007年に受け入れ先機関の一つであるドゥーレットマーメットアザディ名称世界言語大学(以後、アザディ大学)で始まり、もうすぐ15年を迎えようとしています。日本語教育には国をあげて取り組んでいるというありがたい事情があり、現在学習者数は3000人を超え、アザディ大学でも毎年履修者が増えています。

トルクメニスタンでの指導助手の業務は、日本語授業の実施、各種教材・授業資料の作成、現地講師の総合的なサポートです。トルクメニスタンでは在留邦人数が少なく、日本語教育や大学に携わる人たちのために「日本人」としてそこにいるということも大切な役割の一つです。

トルクメニスタンでの活動の印象を一言で述べるとすれば、「日本から遠い」に尽きます。邦人数は100人に満たないため、任国の人たちのほとんどは生の日本人を見たこともなければ、日本語を聞いたこともありません。

そのため、日本語の授業を行う場合は、ほぼ日本語だけで授業を行い、一人でも多くの学生たちと一言でも多く日本語でやりとりできるよう心がけています。日本人と日本語を話せるというのはいい刺激のようで、「日本人の授業」として現地の学生たちは、指導助手や上級専門家の授業に嬉々として熱心に参加してくれるので、できるだけ彼らの期待に添えるようにしたいと奮い立たせられます。

現地講師陣のサポートに際しても、やはり「日本人」としてのサポートが求められます。
トルクメニスタン人の日本語講師は多忙で、授業だけでなく、日本文化の紹介行事や、時には翻訳の依頼にも対応しています。そういった際に、日本語のネイティブチェックをしてほしい、手軽に紹介できる日本文化があれば教えて欲しいなどの要望があるため、書道や和食を紹介するなど、自身の中の日本人力をフル活用して可能なお手伝いをしています。

地域の事情として、日本から文化の専門家を呼んだり、あるいは様々なものを取り寄せたりするのは容易では無いため、現地講師陣のみならず、派遣者も苦労が絶えません。教材の取り寄せも頻繁にはできないので、既存の教材に手を加えたり、新しくテストなどを作ったりといった教材作りもしています。

また、学習者数が増えるにつれて、文部科学省の各種留学プログラムを利用して日本に留学したいと希望する学生や、「日本語」経験者が増えてきています。大学が学生を手厚く世話するトルクメニスタンと、基本的に学生の自主性に任せる日本といったように、トルクメニスタンと日本の大学の様子はまったく違うため、留学希望者の相談に乗ったり、日本の生の学生生活について話したりするのも「日本人」としての役割です。その甲斐あってか、2019年、2020年(2020年7月現在では予定)と連続してアザディ大学から日本に留学する学生が輩出されています。

トルクメニスタンは夏に40度を超えることもあるカラクム砂漠に位置する国です。初夏はうだる熱気の中で授業を行い、講師も学生も汗をかきかきという光景も珍しくありません。しかし、そこで日本語教育に携わる講師陣、そして学生たちはそれ以上に熱い熱意を持って、真摯に日本語に取り組んでくれます。「日本から遠い」国ではあるものの、現地からの熱意、そして、これからも増えていくであろう訪日経験を実際に持つ学生や講師と今後もトルクメニスタンで日本語教育に携わっていく日本人たちで、地理的な距離をぐっと飛び越えられるような日本語教育を作っていってもらえれば、そして及ばずながら、自身も貢献できればと思っています。

市街地に並ぶ大理石の建物群の写真
市街地に並ぶ大理石の建物群
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