令和3(2021)年度 日本語指導助手レポート 毎日が学びの連続

バンコク日本文化センター
奥野 紗衣

バンコク日本文化センター(以下、JFBKK)に派遣されて、約8か月経ちました。派遣当初から新型コロナウイルスの影響により、いくつかの業務は実施延期や中止となってしまいました。しかし、オンライン実施に代替するなどして、臨機応変に対応しています。多くの業務がオンラインになり、タイ国内の日本語学習者や日本語教師と直接会う機会が少なく、とても残念に思います。それでもJFBKKの日本語指導助手(以下、指導助手)として、様々な業務をすることができています。この現場の声・レポートでは、タイ国内の日本語教育事情をご紹介するとともに、私がどんな業務をしているのかをお話したいと思います。

タイの中等教育の先生はとても熱心で生徒思いです!

JFBKKでの指導助手の業務は大きく二つに分けることができます。一つ目は、中等教育機関への支援です。タイの日本語学習者184,962人のうち、143,872人が中等教育機関(日本の中学・高校)の生徒です。日本語学習者全体の77.8%を占めています(国際交流基金 2018年度海外日本語教育機関調査)。後期中等教育機関(高校)の生徒は、次の3つの形態で日本語を学習しています。(1)週に5~7コマ程度学習する専攻コース、(2)週に1~2コマ程度の選択科目、(3)週に1回学ぶ程度の日本語クラブです。前期中等教育機関(中学)の生徒の多くは、(3)日本語クラブで日本語を学習しています。

そのような中等教育機関で日本語を教えている先生を対象に「日本語ブラッシュアップオンライン研修」を2020年11月に行いました。これは、タイ人日本語教師の日本語運用能力を向上させるためのもので、オンラインで行いました。本来は、「日本語ブラッシュアップ集中研修」といい、全国から先生が20名程度集まり、約30日間行われる集中研修です。オンラインで行ったということもあり、34名の先生が参加し、読解の授業を2週間かかけて行いました。私はその研修で行っている授業のうち1コマを担当しました。

タイの中等教育機関で日本語を教えている先生を対象とした日本語ブラッシュアップオンライン研修の様子の写真
日本語ブラッシュアップ研修の様子(みんなの教材サイトのJF読解活動集を使用して研修を行いました。)
「みんなの教材サイト」

私は、中等教育機関の日本語の先生に会うのは、この研修が初めてでした。どんな先生がいるのだろうと、楽しみ半分心配半分でしたが、とても積極的に研修に参加してくださいました。授業中や宿題はもちろん、自習時間に各自読んだものを、他の参加者の先生へオンラインツールを利用して共有するなど、熱心に取り組んでくださいました。この研修で行った読解の授業ですが、普通の授業とは少し違う点があります。それは、授業の中で上手に読むためのポイントも確認しながら授業を進める点です。読解では、ただ単に読むのではなく、必要な情報を探し出すといった目的を持って読むことが大切です。この研修に参加した先生方は、自然とできている人もいるかもしれませんし、そうでない人もいるかと思います。「目的を持って読む」を意識することで、「より効率よく正しく読むことができる」ことを理解してもらえたと思います。

また、研修のアンケート結果から、「研修で学んだことを同僚に共有する。」「自分の授業に取り入れてみたい。」という話を聞くことができました。参加した先生方は、学習者の視点だけでなく、教師の視点も持って、研修を受けていることが分かりました。このような姿勢に強く感銘を受け、先生方がこの研修で得たことを、各学校で実践をしようとしてくださるのは大変嬉しく思いました。またそれと同時に、JFBKKでの業務は、タイの中等教育機関での日本語教育に影響力があるものだと気づかされました。プレッシャーを感じることもありますが、その分やりがいや達成感があるお仕事だと思います。

“日本語を教える”以外のお仕事もあります!

JFBKKでの指導助手の大きな業務の二つ目は、一般学習者への日本語教育支援です。一般の方々に向けて、『まるごと』を使った日本語講座も開講しています。『まるごと』は、日本語を使って自分のことを話すことができるテキストだと思います。受講生は身の回りのことや興味のあることを生き生きと話してくれるため、とても楽しい雰囲気で授業をすることができています。

日本語入門者向けに国際交流基金が作成した日本語学習eラーニング教材の写真
「まるごと」をはじめとした教材

またその一方で、国際交流基金関西国際センター作成の日本語学習プラットホーム「JFにほんごeラーニング みなと」の広報動画の作成も行いました。JFBKKでは海外拠点によるコースとして、3つのオリジナルコースを開講しています。しかし、実際のところあまり知られていません。そこで、タイで日本語や日本文化等を発信しているインフルエンサーの方にご協力いただき、みなとの魅力とオリジナルコースの魅力が伝わるような動画JFにほんごeラーニングを作成しました。他にも、現地講師を中心に企画をした、日本語入門者向けに国際交流基金作成の日本語学習e-ラーニング教材を紹介するオンラインワークショップを行いました。JFBKK公式YouTubeチャンネルに投稿していますのでぜひご覧ください。日本語を教えるだけでなく、JFBKKの指導助手として、日本語教師として、日本語学習eラーニングなどを普及させることも、とても大事な役割だと思います。

これからも…

まだ赴任して1年経っていませんが、上級専門家や専門家、そして現地講師の力をお借りしながら、上記以外にも様々な業務をしています。経験が浅い私にとっては、毎日の業務が学びにつながっています。新型コロナウイルスが早く終息することを願うと共に、タイの日本語教育の発展に役立てるよう、残りの任期も精一杯勤め上げたいと思います。

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