令和3(2021)年度 日本語指導助手レポート 対面からオンラインへ

ローマ日本文化会館
宮澤 あかね

ローマ日本文化会館(以下、会館)には、イタリアで初めて実現された日本庭園があります。教室の窓からふと外に目をやると、「泉園(せんえん)」の様式を用いた庭園の要素である小池や橋、灯篭などが目に入ります。晴れた日には、猫が散歩したり、カモメやカモの家族が小池で泳いだりしている景色を見ることができます。そんな美しい自然と隣り合わせの日本語講座の教室で、日本語指導助手(以下、指導助手)として行っている業務について紹介します。

ローマ日本文化会館の教室から見える日本庭園の写真
会館の教室から見える日本庭園

日本語指導助手としての業務

指導助手として担当している業務は、主に(1)日本語講座の授業担当と(2)日本語関連イベントの企画・運営です。新型コロナウイルスの影響により、2020年10月に着任した際には既に全ての授業とイベントがオンラインで行われていました。会館の教室や図書館にて対面で行っていた授業やイベントを、オンライン化していく過程で学んだことについてレポートしたいと思います。

自律学習支援講座―オンライン上で自律学習をサポートするには―

指導助手が担当する本講座は、学習者自身が決めた日本語学習の目標を達成するために、自分のペースで学習を進めていく講座です。受講生の中には、国際交流基金(以下、JF)の「まるごと」オンラインコースで自習を進めている大学生や、書道や日本の歴史について研究している生涯学習者もいて、学習内容は広範囲にわたります。以前まで会館の図書館でおこなっていましたが、2020年10月よりオンラインでの開講となりました。初めは「自律学習をオンライン上で支援するにはどうしたらよいか」と試行錯誤を繰り返しました。受講生の希望を聞きながら、授業の時間を日々の学習のアウトプットの場にすること、また学期末に「発表会」を企画することで、学習者が自分で決めたテーマの発表に向けて学習を進められるようにサポートをすることにしました。具体的には、JFのオンライン学習ツールを紹介したり、発表内容について毎週フィードバックをしたりしました。2021年1月末に行われた「オンライン発表会」では、3人の受講生が発表しました。発表テーマは「日本のお笑い」「古事記と日本書紀」「テルマエ・ロマエ」と多種多様で、本講座の「自分で学習内容を決める」という特徴がよく出ていた発表会だったと思います。

本講座登録者には、生涯学習として日本語学習を続けている高齢者の方もいて、オンラインで受講するために必要なオンラインツールを使いこなすのが困難だと感じた学習者もいました。しかし、学習環境が変わっても日本語学習への意欲は変わらず、自分で目標をたてて着実に学習を進めていく姿は、生涯学習の理想だと思いました。これからも、広範囲にわたる一人一人の学習目的にあった、自律学習に使えるオンライン学習ツールの教材研究を進めていきたいです。

オンライン読書会―ケルン・ローマ2拠点共同開催―

会館図書館の司書と一緒に担当しているイベントに、「オンライン読書会」があります。

2020年1月の「第5回オンライン読書会」は、ケルン日本文化会館と共同開催しました。

以前まで会館の図書館で、ローマ在住の日本人とイタリア人学習者で行っていましたが、オンラインで開催することで、本読書会初めての他拠点と合同開催となりました。森鴎外の「高瀬舟」について約1時間半、少人数グループで話し合いました。イタリア人、ドイツ人の視点ならではの様々な意見が出て、両拠点にとって実りのある会となりました。このように、国境を越えて他拠点とイベントを共同開催することが容易になったのは、全てがオンライン化されたことによる一つの利点だと思います。これから他の欧州拠点とも積極的にオンラインイベントを企画することで、世界中の日本語学習者が交流できる機会を作っていきたいと思います。

第5回オンライン読書会のポスターの写真
第5回オンライン読書会(ケルン日本文化会館と共同開催)

これからの目標―学習環境の急速な変化に備えて―

授業やイベントがオンライン化されたと同時に、教師向け研修やワークショップ等もオンラインで行われることが多くなったため、私自身、他地域で行われている研修等に気軽に参加できるようになりました。他の国で日本語の授業がどのように行われているのか、どんなオンライン学習ツールを使用しているのかを学び、自分の授業にすぐ取り入れるようにしています。研修で「ハイブリッド型授業」について初めて学んだ時、「私たちは今、学習環境が日々変っていく時代に生きている」と強く感じました。変化の速さに戸惑うこともしばしばですが、オンラインツールに慣れる良い機会と捉え、これからどんな変化にも対応していける教師になれるよう成長していきたいです。

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