教材作成とイベント企画で学んだこと

ローマ日本文化会館
宮澤 あかね

ローマ日本文化会館(以下、会館)に日本語指導助手(以下、指導助手)として2020年10月に着任してから、約1年と5カ月が経ちました。私がこの期間に会館で指導助手として担当した業務は、主に(1)日本語講座の授業担当と(2)日本語関連イベントの企画・運営、そして(3)教材作成です。今回のレポートでは(2)と(3)の業務について詳しく紹介します。

「みなと」の新コース制作

みなと新コース「ようこそ!日本語と文化A1自習コース/Benvenuti in Lingua e Cultura Giapponese! Corso A1 di autoapprendimento」のイラスト
みなと新コース「ようこそ!日本語と文化A1自習コース/
Benvenuti in Lingua e Cultura Giapponese! Corso A1 di autoapprendimento

国際交流基金関西国際センターが開発した、JFにほんごeラーニング「みなと」(以下、「みなと」)という日本語学習プラットフォームでは、現在様々なコースが開講されています。会館でも、「みなと」上で初めてのイタリア語コース「ようこそ!日本語と文化A1自習コース/Benvenuti in Lingua e Cultura Giapponese! Corso A1 di autoapprendimento」の制作が2021年3月より始まりました。このコースは他の国際交流基金(以下、JF)の拠点との共同制作で、ケルン日本文化会館、マドリード日本文化センターの専門家、指導助手と作成しました。対象はA0(日本語学習を始める前の人)で、『まるごと』A1コースへの橋渡しとなるように工夫しました。より視覚的にわかりやすくするため、Vyondというアニメーション制作ソフトを使用したり、各拠点現地語の特徴や文化に合わせて内容を細かく変更したり、試行錯誤を繰り返しました。私が主に担当したユニット4では、お礼の言い方や返答の仕方、またキャラクター別の特徴的なお礼の仕方について紹介しています。約1年間の制作期間を経て、先日2022年2月1日に無事開講し、現在の本コース登録者は192名です(2022年3月10日時点)。

このコースを制作する上で一番勉強になったことは、チームワークの大切さです。共同制作をした他拠点との連携はもちろんのこと、会館内でも沢山の方にご協力いただきました。制作期間が長く、何度も諦めたくなることがありましたが、この仕事へ応募した一つの理由が「オンライン教材を作ること」だったため、一つ一つの工程が非常に勉強になりました。コース完成後の現在は、本コースの登録者数、またイタリア国内の「みなと」登録者数を増やすため、会館SNSでの定期的な広報などを積極的に行っています(参考:会館YouTube)。このコースが、「これから日本語学習を始めてみよう!」という人にとって良いスタートになれば、コース制作者としてとても嬉しく思います。

「芸術鑑賞×日本語交流」:アートをしゃべりあーも

対話型鑑賞法を用いた会話イベント「アートをしゃべりあーも」の画像
対話型鑑賞法を用いた会話イベント「アートをしゃべりあーも」

会館では、2006年よりイタリア人日本語学習者と日本人で、気軽に"ワイワイ"日本語でのおしゃべりを楽しむイベント「和伊和伊(ワイワイ)しゃべりあーも(注1)」という日本語交流イベントを開催しています。

上記の「和伊和伊しゃべりあーも」から発展して、2021年11月に「対話型鑑賞法(Visual Thinking Strategies,以下VTS)(注2)」を取り入れ、アートを活用した言語交流活動「アートをしゃべりあーも」を実施しました。「アートをしゃべりあーも」とは、ある美術作品(絵画や写真)を用いて、日本語学習者がアートについて日本語でディスカッションをするイベントです。「アート」と「言語学習」についての前例があまり無かったため、どうすれば学習者にとってより良い言語交流の場になるかを何度も企画を練り直しました。VTSに関する記事や文献を調べたり、実際にVTSのイベントに参加したりしました。企画を始めてから約1年後の2021年11月に、第1回「アートをしゃべりあーも」をオンラインで開催しました。イタリア人16名、日本人7名 、計23名が参加し、当日は想像していたよりも色々な発見があり、「もっと話したい」「語彙を増やし、表現力を磨くことができるので、みんなにおすすめ」という感想をいただき、とても有意義な時間となりました。今回は美術作品でしたが、映画や音楽、文学作品など、色々な「アート」を使用した言語学習・言語交流の可能性はまだあると思うので、これからもより良いイベントにしていけるよう改善していけたらと思います。

(注1)「しゃべりあーも」…日本語動詞「しゃべる」をイタリア語の1人称複数-iamo(~しましょう)に変化させたイベント名。
(注2)「対話型鑑賞法」…「対話型鑑賞法」とは、1980年代に開発された新しい美術鑑賞法。 1980年代にMoMA(ニューヨーク近代美術館)の教育部部長のフィリップ・ヤノウィン氏と認知心理学者アビゲイル・ハウゼン氏が共にVisual Thinking Strategiesというあたらしい鑑賞教育を開発した。

日本語指導助手としての活動を振り返って

指導助手の業務を通して、授業担当だけではなく、上記にあげたような教材作成、イベント企画・運営に一から関わることができたのは非常に貴重な経験でした。挑戦する機会をいただけたことに感謝の気持ちでいっぱいです。ここで学んだことを糧にこれからも成長していけるよう頑張ります!

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