スペインの日本語学習者の様子

マドリード日本文化センター
迎 明香

私がマドリード日本文化センター(以下、JFMD)に派遣されて、1年が経過しました。JFMDはスペイン・マドリード市のセントロ地区にあり、スペイン・ポルトガルで日本語教育事業を展開しています。また、日本語指導助手(以下、指導助手)として、私が初めての派遣となります。指導助手派遣が初めてということで、業務を手探りで進めてきたことや、新型コロナウイルス感染症の影響もあって様々な制約の中でのお仕事でしたが、そのような環境下でもいくつかのイベントの開催が叶いました。そのうち2つの活動から、スペインの日本語教育事情をご紹介したいと思います。

熱い!日本ファン向けの日本語講座

スペインでは、毎年各地で日本関連イベントが開催されています。2020、2021年度はコロナ禍の影響で多くのイベントが中止となったものの、11月にはスペイン一の動員数(期間中12万2000人)を誇る「マンガ・バルセロナ」が開催されました。「マンガ・バルセロナ」は、その名の通り日本のアニメや漫画、ゲームファンが各地から集まってくる、日本ファンにとっての一大イベントです。若者だけでなく、親子・家族グループでの参加も見られ、幅広い年代でファンを獲得している様子が見受けられました。

「マンガ・バルセロナ」のミニ日本語講座の画像
「マンガ・バルセロナ」のミニ日本語講座

今回私はこのアニメファンに向けて、JFMDに派遣されている海外日本語教育調整員とともに期間中に4回、50分間のミニ日本語講座を開催しました。この講座は、既存の「アニメ・マンガの日本語」と、着任後からケルン日本文化会館・ローマ日本文化会館と共同制作してきた「JFにほんごe-ラーニング みなと」の新規オリジナルコースである「ようこそ!日本語と文化A1自習コース」をもとに教案を作成し、実施しました。アニメは好きだけど、日本語はまったく分からない、という参加者に向けて日本語で日本語を教えるのはとてもどきどきしましたが、2日間で104名が受講し、参加者が一緒に盛り上げて楽しく日本語を学んで帰ってくれました。また「みなと」のオンラインコースにも興味を持ってくれた参加者がいました。新規の日本語学習者の獲得に貢献できていれば、大変嬉しく思います。

年少者向けの読み聞かせイベント

JFMDでは、『まるごと』講座の他に、目的別講座として年2回の中高生向けA1コースを開講しています。一方で、これまで幼児・児童向けの日本語イベントはあまり開催されていませんでした。2021年10月、マドリード市内で「La noche de los libros(読書の夕べ)」というイベントが開催されました。そのイベントに合わせて、JFMDは隣接しているマドリード図書館(Iván de vargas)の子どもスペースを借りて、6歳から10歳向けの読み聞かせイベントを実施しました。子ども向けの歌を交えながら、現地職員とともに日本語とスペイン語のバイリンガルで読み聞かせを行いました。最初は聞き慣れない日本語に戸惑いながらも、積極的に参加して楽しんでいる姿を見ることができ、こちらも大変やりがいを感じました。

子どもたちと一緒にの写真
子どもたちと一緒に

最近は年少者から中高生など若年層の日本語学習ニーズの高まりが見られ、2021年9月から提携校であるカサ・アシア(Casa Asia)でも中高生向けコースの開講が決まりました。今後も多くの子どもたちに日本語を身近に感じてもらい、将来の言語学習の選択肢の一つとして日本語を選んでもらえるよう、活動できればと思います。

今後の課題

上記で紹介したように、2021度はいくつかのイベントは対面で実施できたものの、ほとんどの学習者奨励活動はオンライン開催でした。またこれまで日本語専門家が実施していたスペイン各地方での学習者奨励活動の数は激減し、ポルトガルについては感染症対策の規制によって一度の出張さえ叶いませんでした。2022年度は、新型コロナウイルスが落ち着き、さらにスペイン及びポルトガル現地の学習者や日本ファンと密なコミュニケーションが取れるようになることを祈るばかりです。残りの任期で、スペイン・ポルトガルの日本語教育の発展に貢献できるよう、試行錯誤したいと思います。

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