世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)カリブ海に臨む日本語教育(中米カリブ日本語教育ネットワーク)

国際交流基金メキシコ日本文化センター
平田好・松田涼子・鵜飼香奈子

アメリカの下

世界地図を見てみると、アメリカ合衆国の南にはメキシコがあります。そのもっと南は?ブラジルでしょうか。いいえ、メキシコの南にはグアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、パナマがあります。「国の名前は聞いたことあるけど、どこにあるか知らなかった~」という人は多いのではないでしょうか。私たちはメキシコだけではなく、中米カリブ諸国の日本語教育も支援しています。中米カリブには大小様々な国が存在していますが、国際交流基金が確認できている中米カリブの日本語教育はすべて合わせても、メキシコよりも教師数、機関数、学習者数が少なく、規模が小さいと言わざるを得ません。しかし、そんな国々にも、日本や日本語教育に対する熱い想いを胸に抱いて、日々頑張っている先生方、そして遠くはなれた日本という国に興味を持ち、一生懸命日本語を勉強している日本語学習者がいます。

中米カリブ日本語教育ネットワーク

中米カリブ諸国の中でグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、キューバ、ジャマイカ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴの10か国の日本語教師が集まって、日本語教育ネットワークを形成しています。それが中米カリブ日本語教育ネットワーク(Red Centroamericana y del Caribe para la enseñanza del idioma Japonés、略称、RCCJ)です。そして現在このRCCJで活躍している教師のほとんどは日本語非母語話者教師(Non-Native Teacher以下、NNT)です。国によっては日本語母語話者教師(Navive Teacher以下、NT)が一人もおらず、教師全員がNNTという国もあります。RCCJは10の小さな国々で成り立っており、またこのネットワーク内では公用語が異なる国も存在するため、ネットワーク内の公用語は日本語です。ネットワークを有効活用するために、各国代表を務める教師が毎月1回、ZOOMというビデオ会議システムを利用し会議(以下、月例会議)を行っていますが、話が盛り上がって白熱してくると、日本語、英語、スペイン語など様々な言語が飛び交い、意見交換がなされます。RCCJの主な活動としては様々なタイプの日本語学習奨励活動と中米カリブ日本語教育セミナーの実施です。2018年には第2回中米カリブ日本語スピーチコンテストと第10回中米カリブ日本語教育セミナーが開催されました。

中米カリブ日本語スピーチコンテスト

2018年10月13日(土曜日)にドミニカ共和国にて、第2回中米カリブ日本語スピーチコンテストが開催されました。このスピーチコンテストは、各国のスピーチコンテストで優勝した強者たちが集まり、日本語スピーチで競うと共に、普段はなかなか交流できない他国の日本語学習者と交流を深める場でもあります。優勝賞品はなんと、約2週間の日本への研修旅行!この研修に参加する費用は、RCCJの教師たちが各国の弁論大会でTシャツや日本食を販売したり、スポンサー企業へ協力依頼に行ったりして集めたものです。学習者のために先生たちは必死で頑張りました。

第2回中米カリブ日本語スピーチコンテスト出場者の写真
第2回中米カリブ日本語スピーチコンテスト出場者の皆さん

中米カリブ日本語教育セミナー

「中米カリブ日本語教育セミナー」(以下、セミナー)は毎年異なる国が会場となり、また月例会議でセミナーの内容やその他担当業務について話し合い、皆でセミナーを作っていきます。10回目の節目となる2018年度のセミナーはエルサルバドルで開催されました。2008年に第1回が開催されたときは、中米カリブ地域に派遣されている国際協力機構(JICA)の海外協力隊(日本語教育分野)の方々が中心となり、セミナーを企画運営していました。しかし第10回セミナーはすべてNNTによる企画運営で実施されました。10年という年月の中でNNTによる努力が実った証明でもあると思います。その中で私たちメキシコにいる日本語専門家の役割は、セミナー企画運営に関する助言、セミナーでの講演等です。直接話し合うことが難しい中で、ZOOMやメールを利用しながらセミナー運営やセミナーでの講演内容を話し合っています。

セミナーに参加する教師たちは、日本語専門家による講演から学ぶばかりではなく、他の参加者との意見交換により学ぶことも多くあります。国内でのネットワークでは限りがあるため、様々な国の教師たちが集まるこのセミナーは大変貴重な機会となります。また、セミナーの最後には「交流会」と称した文化紹介も行われます。歌や踊りの披露、お祭りの紹介、クイズ形式の文化紹介など、セミナー参加者全員が楽しめるような方法を考え、発表者も共に楽しみます。中米諸国の文化は日本人からすると間違い探しのような文化の差異ですが、一つ一つ見ていくと、やはりそれぞれの「色」や「形」があります。

これからもRCCJが作り出していく個性ある「色」や「形」のセミナーを期待し、支援していきたいと思っています。

第10回中米カリブ日本語教育セミナー閉会式の写真
第10回中米カリブ日本語教育セミナー閉会式

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Mexico
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
メキシコ及び中米・カリブ諸国において教師研修会を実施し、カリキュラム・教材・教授法など日本語教師に対する助言・支援活動を実施している。教師間ネットワーク形成の促進を行い、各地での自主研修も奨励している。またメキシコ日本語教師会、中米カリブ日本語教育ネットワーク、各地の教師会等との共催による教師研修、学習者奨励事業も行っている。E-learningプラットフォーム「みなと」内の『まるごと教師サポート付きコース(スペイン語)』も実施。日本語教育関係者を対象にSNSを活用して情報発信も行っている。
所在地 Ejército Nacional #418 Int. 207
Colonia Polanco V sección
C.P. 11560, CDMX, México
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年
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