世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 今、エジプトの日本語教育現場が熱い!!

カイロ日本文化センター
酒見志奈子

みなさんこんにちは!今、エジプトではこれまでになく日本語学習熱が高まってきています。今回は新しい大学の日本語学科の紹介を中心に、エジプトの日本語教育現場の熱さを皆さんにお伝えしたいと思います。

日本式教育

エジプトでは若者を中心にアニメや漫画が人気です。しかし、それらの影響だけではなく、「日本式教育」がエジプトで注目されています。一部の小学校、中学校において「掃除」や「日直」、それら学級活動を中心とした教科科目以外の「特別活動(トッカツ)」を導入する取り組みが始まっています。エジプトで日本語の学校の習慣が根付くのでしょうか?乞うご期待です。

アスワン大学&バンハー大学

アスワンJAPAN DAYの写真
アスワンJAPAN DAY

エジプトの大学では日本語学科が増えてきています。最近まではカイロ大学とアインシャムス大学、ミスル工科大学の3大学だけでしたが、2013年にエジプト最南部のアスワン大学、2016年に北部デルタ地域のバンハー大学で日本語学科が設置されました。

アスワン大学では現在4人のJICAボランティアが授業を担当していますが、設立当時はカイロ大学日本語日本文学科学科長を中心とするエジプト人教員がカリキュラム作成を始め、カイロから800キロ以上離れたアスワンまで出張して授業を担当する大変な苦労の船出でした。

流しそうめんの写真
流しそうめん

2017年3月には、2016年に引き続きJAPAN DAYが開催されました。日本語での劇や、歌の発表での堂々とした様子には驚きましたし、日本文化紹介ブースでは浴衣や将棋などの紹介を日本語学科の学生たちが、JICAボランティアの手を借りながら、一生懸命担当していました。中でも、「流しそうめん」(本物の竹使用!!)は大盛況でした。

一方、学業面でも、2015年の日本語能力試験で初めてN3合格者が出るなど、着々と成果を出しつつあります。2016年11月のカイロ大学主催「アラブ世界日本語スピーチコンテスト」では、なんと優勝者も出ました!優勝者は国際交流基金からの航空券で、広島大学での短期研修に参加することになり、ますます日本語に磨きをかけたようです。そんな学生の皆さんの勉強の助けになるようにと、カイロ日本文化センターから日本語能力試験N2の問題集を寄贈いたしました。

バンハー大学の日本語学科は2016年10月、カイロ大学日本語日本文学科長の全面的な協力 のもと、カリキュラムが作られ、その運営が始まりました。カイロ日本文化センターもその立ち上げを支援するため、日本人教師を1名派遣しました。

2016年11月のカイロ大学主催「アラブ世界日本語スピーチコンテスト」のエンターテイメント部門では早速日本語学科の学生たちが参加して、『100%勇気』を元気よく合唱していました。「設置からわずか1か月で日本語でのパフォーマンスができるなんて!」と驚きです。

また2017年3月に行われた「東日本大震災追悼行事」では両大学とも有志の学生たちが遠くから参加し、日本語の歌を合唱しました。この歌声が東北の被災者の方に届いて、少しでも心の癒しになるようにと皆さん頑張って練習していたそうです。指導に当たられた先生方は本当に大変だったと思いますが、先生方の努力に学生たちは見事に応えていたと思います。

少し先の話になりますが、エジプト北部に位置するアレキサンドリアにあるE-JUST(エジプト日本科学技術大学)では、2017年9月から学部課程が開設され、第2外国語として日本語が取り入れられる予定です。このように、ますます多くのエジプト人が日本語や日本文化に触れられる環境ができつつあります。こうした背景には日本人の努力だけではなく、多くのエジプト人の日本語教育関係者の支えがあったということを、ぜひ日本の皆さんにも知っていただきたいと思います。

ただ、各教育機関で教える先生の募集、教え方の指導や教材の選定など、実際に充実したコースにしていくための作業は、実はまだ始まったばかりですし、私たちがお手伝いできる仕事はまだまだあります。

日本語を学びたいと思ってくれるエジプトの皆さんのために、これからもエジプト政府のこうした取り組みを後押ししていければと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Cairo Office
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東の近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対する情報提供やコンサルティングなどを行う。また、セミナー等を開催し、日本語教師のスキルアップを図るとともに、地域連携の強化、相互交流の活性化にも努めている。
所在地 5F Cairo Center Bldg.106 Kasr Al-Aini St.,Garden City, Cairo, Egypt
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年
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