世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本人との交流

アインシャムス大学
足立健治 崖高延

エジプトには世界各国から観光客がやってきます。もちろん日本からも多くの観光客が訪れます。しかし、日本語を勉強している学生が日本人と接する機会が多いとは言えません。在留日本人は子どもも含め、1,000人程度となっています。ネットを駆使して、日本人と交流する学生もいますが、話したことがある日本人は先生だけという学生も少なくありません。そこでエジプトの日本人会や日本人学校、国際協力機構(JICA)などにも協力をお願いし、交流の機会を設けています。

ポスター発表

大学の授業内では、ビジターセッションを2年生の作文の授業に取り入れています。2018年は日本人にインタビューを行ったのですが、2019年はポスター発表を行うことにしました。テーマは「エジプト観光」。グループごとに観光地を1つ選び、観光地について調べ、作文を書き、その作文を持ち寄り、ポスターを作りました。日本人参加者には発表を聞いて、質問、コメントをしてもらいました。

ビジターセッションの様子の写真
ビジターセッションの様子

作業中にけんかになるグループ、発表当日の朝までポスターを作っているグループなどあり、ハラハラしましたが、さすがは本番に強いエジプト人、本番の発表では堂々と発表していました。  後日行った振り返りでは、「日本人に、日本語で自分の国について紹介し、自分の国に誇りを持てた」、「うまくはできなかったが、日本語を話す自信がついた」といった意見がありました。この経験を通して、学習者に何か新しい発見、気づきがあればうれしいです。

現在は、専門家が担当している授業でビジターセッションを行っています。エジプト人教師にも実施してもらいたいとは思いますが、日本人の協力者集めなど、なかなか難しい課題もあります。今回、ビジターセッションを行うことを学生から聞き、エジプト人教師1名が見学に来てくれたので、日本人役で参加してもらいました。授業後には、「おもしろそうなので、自分の授業でも取り入れられないか考えたい」と言っていました。すぐに実現することは難しいかもしれませんが、少しずつ、ビジターセッションをカリキュラムの一部として定着させていければと考えています。

秋祭りボランティア参加

毎年秋に日本人会主催で秋祭りが開催されます。日本人会からの要請もあり、毎年アインシャムス大学から学生はボランティアとして参加しています。ある程度の日本語は必要になりますが、学生たちは積極的に参加しています。

秋祭りでボランティアをする様子の写真
秋祭りでボランティア

去年はボランティアの募集人数を申し込み人数が上回り抽選をしました。学生は日本人と一緒に焼きそばを作ったり、ソーセージを売ったりします。秋と言ってもエジプトです。暑い秋空のもと、焼きそばを日本人とともに汗びっしょりになりながら、作っています。仕事の後は焼きそばが食べられます。そこで初めて焼きそばを食べた学生もいます。秋祭りのボランティアを通して、日本人と交流をし、日本料理の作り方を覚え、日本料理を食べる体験ができます。秋祭りは大学を卒業してからも、入場料を払って参加している学生もいます。それだけ学生にとっては楽しく、思い出深い日本のイベントになっているのでしょう。

今、私たちは日本人会などの日本人関係者と学生をつなぐパイプ役をしていますが、将来はエジプト人教師にもパイプ役をしてもらえるよう働きかけています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アインシャムス大学
Ain Shams University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アインシャムス大学言語学部日本語学科は2000年に設立された。当大学は外国語教育としては国内で高い評価を受けており、その中でも日本語学科は優秀な学生が集まっている。日本語専門家はカリキュラム作成や現地スタッフへの指導、助言を行っている。
所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
国際交流基金からの派遣者数 専門家2名
日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学言語学部日本語学科
日本語講座の概要
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