日本語専門家 派遣先情報・レポート
アインシャムス大学
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- アインシャムス大学
- Ain Shams University
- 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- アインシャムス大学言語学部日本語学科は2000年に創設された。外国語学部は、入学難易度が高く、エジプト国内では名門として知られている。専門家は、主に、学部クラス担当のほか、ゼミでの卒業論文指導、新任教師への助言、修士・博士課程に進学・所属する教師への研究支援を行う。
- 所在地
- Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
- 国際交流基金からの派遣者数
- 専門家:1名
- 日本語講座の所属学部、学科名称
- アインシャムス大学言語学部日本語学科
- 国際交流基金からの派遣開始年
- 日本語講座の概要
沿革 講座(業務)開始年 2000年 国際交流基金からの派遣開始年 2000年 コース種別 専攻 現地教授スタッフ 常勤35名(内7名は現在産休やサバティカル等で休職中)、邦人客員教授1名、国際交流基金派遣専門家1名 学生の履修状況 履修者の内訳 主専攻(1年30名、2年20名、3年31名、4年20名) 学習の主な動機 アニメ・マンガ、日本文学、日本語への興味・関心から 卒業後の主な進路 日系企業への就職、大学院進学、翻訳・通訳業、日本語教師 卒業時の平均的な
日本語能力レベル日本語能力試験N2程度 日本への留学人数 8名程度
2022年3月現在のアインシャムス大学日本語学科
アインシャムス大学
近藤弘
みなさん、こんにちは。2021年8月にエジプトはアインシャムス大学(以下、ASU)に着任しました近藤弘と申します。今回のレポートでは、2022年3月現在のASU日本語学科の様子や、着任から現在までに得た私の所感をお伝えします。
キャンパスの様子
遠隔授業から対面授業へ
2020-2021年度、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、ASU日本語学科では全授業が遠隔で行われていました。しかし、エジプト国内のワクチン接種率が高まってきたことで、2021-2022年度は段階的に対面授業が行われるようになりました。前期は隔週で対面・遠隔授業が使い分けられましたが、日本語学科を含む一部の学科では後期の全授業が対面となり、キャンパスに活気が戻りつつあります。対面授業では、学生の笑顔が連鎖し、教室全体が暖かいムードに包まれているように感じる時があります。今現在の私がこのように感じるのは、コロナ禍における遠隔授業に慣れていたからかもしれません。国内の状況や学生のニーズによって遠隔授業がまた積極的に取り入れられることも考えられますが、対面授業の可能性についても、自分自身や学生の反応を観察しながら再確認していきたいと思います。
ゼミにおける卒業論文指導
ASUの学生は、4年時に約1年をかけて、卒業論文を執筆します。学生が扱うテーマは、言語学、文学、言語教育学など様々です。卒業論文の指導担当となった教師は3〜4名程度の学生から成るゼミを持ちます。私は、日本語教育に関心がある3名の学生とゼミを行っています。
ゼミでディスカッションをしている学生たち
これまで日本語の習得を目標とした「勉強」に多くの時間を割いてきたASU日本語学科の学生にとって、「研究」することは、おそらく初めての経験です。「研究」では、目的に沿った問いを立て、データを分析し、その結果について考察することが求められます。ゼミが始まった当初、学生は、「勉強」と「研究」の違いに戸惑い、答えがなかなか出ない問いに向かう不安を覚えているようでした。「先生、これは○ですか?×ですか?」といった質問が非常に多かったです。しかし、最近は、「今、私はこの問題についてこのように考えている」と自身の解釈を示した上で、ゼミの仲間たちと意見交換をしながら、自分なりの答えを深めようとする姿が見受けられます。ゼミが始まってまだ半年程度ですが、彼女たちの変化のスピードには驚かされます。そして、私も彼女たちから日々刺激を受けています。卒業論文を書き上げた時、彼女たちがどんな答えに辿り着いているのか、今からとても楽しみです。
先生方の研究サポート
ASUの先生方の多くが、日本語学科で勤めるようになってから、修士号・博士号取得に向けて国内外の大学院に進学します。大学で勤め続ける上で学位の取得が重要になるためです。彼ら・彼女らにとって、授業と同様に研究及び論文執筆も重要な仕事です。専門家には、先生方の研究アドバイザーのような役割も求められています。相談を受ける際は、先生方の迷いの言語化、アイディアやプランの整理、経験の共有等によるサポートを心がけています。これまで、研究計画書や修士論文・博士論文の方向性等についての相談を受け、意見交換を行ってきました。研究のサポートは、先生方と問題意識や興味・関心について共有することができ、私にとっても非常に学びが多い活動です。
今後のASUにおける活動について
2000年の日本語学科創設から約20年間、ASUへの専門家派遣は二人体制で行われてきましたが、前任の専門家派遣以降は一人体制での支援となりました。そのため、ASUで専門家に求められる役割も変化しつつあります。今後は、これまで専門家が担ってきた業務を、引き継ぎ・引き渡しながら、一人体制となったASUにおける専門家の役割を、学生や先生方との関わりを通して再構築・具体化していきたいです。