世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 東アフリカにおける日本教育の中心として

ケニア国立ケニヤッタ大学
里見文

ケニアには、1,700名ほどの日本語学習者がおり、学習者、教師双方が日々熱心に日本語学習・教育に取り組んでおります。またケニアは、東アフリカにおける日本語教育の中心的立場を担っており、2013年に第一回東アフリカ日本語教育会議(第二回ケニア日本語教育会議)が開催されて、今年の会議で第三回を迎えます。会議には例年、ケニア、マダガスカル、タンザニア、エチオピア他世界各国で日本語教育に携わっていらっしゃる先生方にご参加頂き、東アフリカにおける日本語教育はどのように発展していくべきなのか、また、効果的な指導法や取り組みなどについて、研究発表や討論会を通して活発な意見交換が行われています。

第二回東アフリカ日本語教育会議(第三回ケニア日本語教育会議)

第2回東アフリカ日本語教育会議の写真
第2回東アフリカ日本語教育会議

2013年から始まった「東アフリカ日本語教育会議」は、昨年、元筑波大学の小林典子先生をお招きして、『初級を教えるー初級日本語学習者の指導について考えるー』をテーマとして、3日間にわたり開催されました。東アフリカにおける日本語教育では学習者の多くが初級学習者であり、彼らへの効果的な指導法等について、基調講演、ワークショップ、研究発表等を通じて、互いに学び合うことができました。また、東アフリカにおける日本語教育従事者が対面して互いの活動を報告したり、情報を共有したり、学び合うことができるのは、この会議が唯一の機会です。この会議は東アフリカにおける日本語教育ネットワーク強化のために欠かせないものであり、ケニア日本語教師会はそのホスト役として例年多大な貢献をしています。

マダガスカルにおける教師研修セミナー

東アフリカにおける日本語教育を語る際に、マダガスカルについてもはずすことができません。マダガスカルは、ケニアに次ぐ日本語学習者数を誇っており、2011年にはマダガスカル日本語教師会が発足、2013年からはJLPTが開始されるなど、日本語教育に関して非常に勢いがある国です。教師会の先生方も向学心に満ちあふれていて、年に二度、マダガスカル日本語教師会の招聘により、国際交流基金日本語専門家(ケニア)がセミナーを実施しています。2014年は、6月に『JF日本語教育スタンダードとCan-doサイト』、12月には3日間にわたり『学習者の評価−テスト作成を考える』が実施され、多くの先生にご参加頂きました。

ケニアや他の東アフリカ諸国の先生方、皆さんもちろんそうなのですが、マダガスカルの先生方も例外ではなく、非常に勉強熱心です。特にマダガスカルには日本人日本語教師がいないにも関わらず(2015年5月現在)、現地の先生方が中心になって週1度の勉強会を実施するなど、教師会がとても活発に機能しています。今後はケニア、マダガスカル両国が中心となって東アフリカの日本語教育を牽引していくことが期待されます。

弁論大会

2004年に始まった弁論大会は、2014年で8回目を迎えました。弁論大会はケニア国内での日本語学習者が日々の学習の成果を広く一般に披露する絶好の機会です。会場には立ち見がでるほど多くの観客が訪れ、参加者たちは日ごろの学習の成果を大勢の観客の前で存分に披露できたことを、誇らしく思っているようでした。今年は多くの学習者が参加できるように、英語での文化紹介プレゼンテーション部門も設けました。これにより、より多くの参加者を得ることができ、会場に集まった観客に日本語・日本文化の素晴らしさを存分にアピールしていました。

スピーチコンテスト表彰式の写真
スピーチコンテスト表彰式

当日は大使館からの日本食のデモンストレーションや、青年海外協力隊隊員の活動機関によるソーラン節の披露などがありました。会場には入りきらないほどの観客が詰めかけ、全てのプログラムを楽しんで満足している様子でした。全てのプログラム終了後に在ケニア日本国公使と弁士たちや、弁士同士、観客との写真撮影会が行われるなど、大変アットホームなコンテストとなりました。

今後の東アフリカにおける日本語教育

2013年6月に日本政府は、日本で開催されたTICAD(アフリカ開発会議)Ⅴにおける行動計画を踏まえ、以後5年間でアフリカから1,000人の若者に対し日本の大学、大学院での教育に加え、日本企業でのインターンシップの機会を提供することを表明しました。現在、第一パッチの155名が日本にて研修中です。このような現状を受け、アフリカにおける日本語学習熱は今後ますます高まっていくことと思われます。

今年の第三回東アフリカ日本語教育会議(第四回ケニア日本語教育会議)のテーマは、多様な学習者やそのニーズに対応するためにも教師はどのように成長するべきか、また、教師同士、学習者同士、教師と学習者がどのように学び合うべきかについて考えるために『教師の成長と学び合いについて考える』としました。普段の授業や教室運営等を見直し、教師の成長や、協働などについて考えていきたいと思います。

What We Do事業内容を知る