世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 色々な日本語教育のかたち

土日基金文化センター
平川 俊助

2013年5月と10月の安倍総理大臣の2度に渡るトルコ訪問、そして14年1月のエルドアン首相の訪日によって、多くの人に両国交流のさらなる進展が印象づけられたのではないでしょうか。

このような交流の活性化は日本語教育の状況にも表れています。12年に国際交流基金が実施した「日本語教育機関調査」では,トルコにおける日本語学習者数は約2,000人と09年の調査から約65%増加しており、中東アフリカ地域最大の規模となっています。

トルコにおける日本語教育の特徴

初級クラスのひとコマの写真
初級クラスのひとコマ

トルコにおける日本語教育の特徴の1つは、高等教育機関における学習者がその半数を占めることです。アンカラ大学日本語日本文学科とエルジェス大学日本語日本文学科には日本語日本文学の主専攻学科があり、チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学日本語教育学科には日本語教師養成課程が設置されています。これらの機関では将来のトルコの日本研究や日本語教育を担う専門家たちが育てられています。また、14年の時点で主専攻開講を控えている機関が4校あり、さらなる拡大が期待されています。同時に選択科目として日本語を教える機関も多くあり、科学技術など様々な分野で日本留学を目指す学習者も少なくありません。一方で、中等教育機関における日本語教育は14年時点で3校とまだまだのびしろがあり、これからが楽しみな状況です。

学問の分野に加えて、トルコでは様々な日本語事業も行われています。

2013年で「アンカラ日本語弁論大会」は第22回目、「イスタンブール日本語弁論大会」は第23回目を迎えてトルコにおける日本語弁論大会としてすっかり定着しました。さらに14年3月にイズミールにて開催された「私の目から見た日本語コンテスト」は、非専門の日本語学習者のための日本語コンテストという新たな発想のもとで行われたイベントで、その地域の状況に特化した日本語事業のモデルケースとして注目を集めています。また、コスプレやカラオケコンテストを行うイベント、「TORUKON」には若者を中心に数千人が集まるなど、アニメ・マンガなどのポップカルチャーにおいても盛り上がりを見せています。

土日基金文化センター

書道体験クラスの様子の写真
書道体験クラスの様子

私が派遣されている土日基金文化センター(以下、TJV)は、両国の交流を目的に首都アンカラに設立された公益機関です。2000年に一般市民向けの日本語講座が開講され、現在は約100名の受講生が日本語を学んでいます。今年度の延べ受講生数は300名と、これまでの記録を大幅に更新しました。こうしたところでも近頃の日本への関心の高さが感じられます。TJV日本語講座には「仕事で日本語を使う」、「学校で学んでいる」という受講生がほとんどいなく、日本文化や日本社会への興味から学習を始めたという方が大半です。受講生が満足できる講座にすべく、コースには語学学習に加えて多くの文化体験や日本人との触れ合いを取り入れています。毎年恒例のカラオケ・パーティー、日本人ゲストを招いてのスピーチ発表会、けん玉体験講座、書道体験など、地域の日本人を巻き込んでたくさんの「日本」に触れてもらうことを心がけています。

このように、世界でも有数の親日国といわれるトルコでも様々な背景を持った人々が日本語を学習しており、「語学学習の形は一つではない」ということを実感しながら日々業務に取り組んでいます。その地域や学校に相応しい日本語教育の形を模索しながら、さらなる拡大と充実を目指したいと思います。

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