世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)多様化する日本語学習者

土日基金文化センター
栗田恵美子

イスタンブールやカッパドキアなど世界的に有名な観光地があるトルコは、親日家が多い国としても知られています。街中でも、日本人だと言うとたいてい好意的なコメントが返ってきます。

2015年に実施されたJF日本語教育機関調査によると、トルコでは42の教育機関で日本語が教えられています。そのほとんどが高等教育機関です。学習者数は2194人で、この数は中東・北アフリカ地域で最大です。その内訳を見ると、日本語・日本文学科、日本語教育学科といった主専攻学科を持つ4大学を中心とした高等教育機関が大半を占めています。

一方で、トルコではここ数年、ちょっとした日本語ブームが再来しています。歴史的に親日感情が強いうえに、昨今のアニメブームもあり、特に若い年代を中心に、日本語学習を希望する人が増えているのです。しかし、中等教育機関で日本語を設けている学校はわずか3校しかありません。現時点では、一般市民向け講座、プライベートレッスンが受け皿になるようですが、そうした機会が得られるのはやはり大都市に限られます。最近は、インターネットの普及もあり、独学という人も多いようです。

土日基金文化センター 日本語講座

こうしたブームの影響を受けてか、配属先の土日基金文化センター一般講座でも高校生を中心とした若い世代の日本語学習希望者の問い合わせが多数あります。ここ半年は、申し込み開始日に定員が埋まってしまうほどです。

土日基金は、日本・トルコの官民の支援を受けて設立されたトルコの日土友好団体です。専門家が配属されている文化センター日本語講座は、設立以来約20年、多くの日本語学習者を育て、二か国間の友好関係に寄与してきました。専門家はこの日本語講座を担当するとともに、講座運営の支援も行います。主教材を「まるごと」に変更して4年目ですが、教師が日々の授業で感じる様々な疑問を話し合いながら解決し、より良いコース運営を目指します。

土日基金によるビジターセッションの様子の写真
土日基金 ビジターセッションの様子

日本語講座では現在約160名が日本語を学んでいます。内訳は高校生56名、大学生・大学院生52名、社会人52名で、特にここ数年、高校生の受講生が増加しています。この中で仕事や留学などの明確な目的があって学習している人はほとんどなく、ほとんどが趣味として日本語を学習しています。動機は日本文化への関心がほとんどです。特に若年層はアニメ・マンガを理由に挙げます。コースは、1年に3学期あります。1学期間全10回の授業の後、各学期のまとめテストが行われています。「まるごと入門」から始め、7学期で「まるごと初級2」を終えます。

日本語授業のほかに、文化体験として、書道・折り紙、墨流しとさまざまな文化体験セッションを取り入れています。一部のクラスでは、日本人ボランティアの協力を仰ぎながら、日本人との会話を楽しむビジターセッションも設けています。なかなか日本人と接する機会のない学習者にとって、学んだ日本語を使うのは貴重な体験であるようで、皆、興奮しながら話した内容を発表してくれました。今後も様々な形でこうした体験セッションを組んでいきたいと考えています。

トルコの日本語教育

専門家の外部業務として、トルコの日本語教育全体の支援というものがあり、各地の大学、高校、日本語講座を訪問する機会があります。その中で筆者が面白いと思った事例を紹介します。

大学の模擬授業間中の写真
大学の授業の一コマ 模擬授業

ある大学では、日本語教員養成課程が設けられており、授業の一環で、一般市民向けに「週末日本語コース」を開き、学生が自分たちで作成した教科書をもとに日本語を教えています。訪問時、「教材開発」という名前の授業を見学させていただいたのですが、そこでは、学生が担当する項目についてグループで話し合いながらそのコースで使用する教材を作成していました。教材作成の過程で、日本語の表現一つ一つについてより深く考えることになり様々な気づきが生まれます。日本語、日本研究だけでなく、こうした教材開発を授業に取り入れることができるところに、トルコの日本語教育の奥の広さを感じました。

教科書に関しては、「ちょうどいい教材がない」とよく相談を受けます。他の大学でも、「教科書を作ろう」という声が再び上がっています。教材を開発することは日々の実践を見つめ直すよい機会にもなります。ただ、なかなか各自のアイデアをまとめるところが難しいようです。そうした点で専門家として少しでもお手伝いができればと考えています。

トルコは国土が広く、また地域、機関種別によって事情が大きく異なり、統一した勉強会のような機会を頻繁に設けることが難しいのですが、各機関の訪問を重ね、多くの先生とつながることで、トルコの日本語教育の質の向上に役立ちたいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Turkish-Japanese Foundation Culture Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
トルコにおける日本文化紹介、文化交流の中心となるべく設立された機関。センター内の多目的ホール、セミナーホールでは各種文化事業が行われる。図書館には1万冊以上の日本語の蔵書・視聴覚教材が揃っており、日本に関する情報収集の場としての役割も果たしている。
専門家は、派遣先機関の一般市民向け日本語講座の授業担当、コース運営の支援、文化行事への参加協力を行う。このほか、トルコ国内の日本語教育機関、日本語教育関係者、日本語学習者に対する支援・協力、日本語能力試験や弁論大会の実施協力、その他国際交流基金プログラムに関する案内等を行い、トルコ全体の日本語教育の発展に努めている。
所在地 Ferit Recai Ertugrul, Cad. No.2 Oran, 06450 Ankara
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
土日基金文化センター 日本語講座
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年   2000年10月
  国際交流基金からの派遣開始年   2000年
 
コース種別
  一般市民講座
 
現地教授スタッフ
  常勤3名(うち日本人1名)、非常勤3名(うち日本人2名)
学生の履修状況
  履修者の内訳    
  学習の主な動機   日本・日本文化への興味
  卒業後の主な進路   一般市民講座のためなし
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
  初級終了時にN4合格程度
  日本への留学人数   なし

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