世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)エリンテーマソング合唱&歌詞コンテスト

国際交流基金北京日本文化センター
王崇梁・平田好・小川佳子・清水美帆

2013年、北京日本文化センターでは中国の中学生・高校生などの若者向けに日本語教材『艾琳学日語』(人民教育出版社)を出版しました。国際交流基金が2007年に出版した『エリンが挑戦!にほんごできます。』を編集したものです。以来、毎年“エリン〇〇コンテスト”を実施しています。
※『艾琳学日語』については以下をご覧ください。
世界の日本語教育の現場から「エリン、ようこそ中国へ! 『艾琳学日語 エリンが挑戦!にほんごできます。』出版」

世界のどこからでも誰でも参加できるコンテスト

北京日本文化センターでは、2015年より毎年1回“エリンテーマソング合唱&歌詞コンテスト”(以下、エリン合唱コンテスト)を行っています。合唱と言っても、舞台で歌を披露するのではありません。このコンテストのために作曲したエリンテーマソング『コトバの魔法』をグループで歌い、携帯で撮影して動画をサイトにアップロードするというコンテストです。主な参加者は中国の中学生と高校生です。中国で高いスピーチ力や作文力を競うコンテストが開催される中、本コンテストは日本語力に関係なく参加できます。そして、楽しく歌ってパフォーマンスしたグループが賞に選ばれます。「日本語は少しだけわかる」あるいは「これから勉強してみたい」という人でも参加できます。場所や時間、日本語力等を問わずに応募可能な、まさに世界のどこからでも、誰でも参加できるコンテストです。

応募作品の画像
応募作品

中国の中学・高校における日本語教育

中国の中学・高校では、日本語を第一外国語(以下、一外)として学ぶ生徒が大勢います。一外の生徒にとっては、日本語が大学の受験科目ともなるため、高い日本語力を目指して学習しています。また近年は第二外国語(以下、二外)や課外活動として日本語を学習する生徒も増えています。二外は受験科目ではないため、難しい文法や語彙を覚えることよりも、日本語や日本社会に触れ、異文化理解能力を育てることが重要視されています。さらに、日本のアニメや文化に対する興味などから、独習する人もますます増えています。 

コンテストから新たな興味へ

このような様々な背景や日本語レベルの人たちが一同に参加できる企画ができないかと考え、エリン合唱コンテストを始めました。『コトバの魔法』は次の歌い出しで始まります。「日本語という言葉の魔法で、エリンの人生が一段と輝きだした」。日本語学習をきっかけに、また新たな興味へと広がることを願っています。

2年間の実施で55作品、のべ985名より応募があり、金賞、銀賞、銅賞、特別賞などの各賞が選ばれました。このコンテストには、2つの部門があります。
“合唱パフォーマンス部門”…『コトバの魔法』をそのまま歌いながらパフォーマンスをする
“歌詞創作部門”     …『コトバの魔法』のメロディにオリジナルの歌詞を載せて歌う
ダンスや民族楽器の演奏、日本語への気持ちを歌った歌詞など、個性あふれる多彩な作品が集まりました。下記のサイトよりぜひご覧ください。
エリン中国サイト“艾琳学日语”  http://www.jpfbj.cn/erin/

金賞受賞者には個人名入り金メダル、入賞者全員に賞状を贈りました。日本語を使ったコンテストで表彰されたのは初めてだという生徒も大勢いました。入賞者が高校生の場合には、北京日本文化センターが実施する“高校生プロジェクトワーク”への招待、講師が出張する日本文化講座なども賞品としました。コンテストへの参加が、日本や日本語に触れる次の機会へとつながるようにしているためです。

受賞校での表彰式の画像
受賞校での表彰式

エリン合唱コンテストは2017年も実施予定です。民族や地域、学習背景は様々ですが、日本や日本語に関心を寄せる気持ちは共通しています。各地からの参加者が、このコンテストを通じて日本語で創作する楽しさを分かち合えることを願っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Beijing
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
中国の日本語教育事情についての情報収集のほか、中国各地で教師研修会を実施し、カリキュラム・教材・教授法など日本語教師に対する助言・支援などの活動を行っている。また、教師会など各地の教師の自主研修の奨励、教師間のネットワークの形成への促進活動も実施している。教師研修会には、全国大学日本語教師研修会、全国中等日本語教師研修会、日本語教育学実践研修会、全国高校生プロジェクトワーク/観察型教師研修会、地域巡回教師研修会などがある。一般成人及び大学生を対象に『まるごと 日本のことばと文化』を使用した日本語講座も開講している。HP以外にSNSを活用して情報発信している。
所在地 #301, 3F, SK Tower Beijing, No.6 Jia Jianguomenwai Avenue, Chaoyang Beijing, CHINA, 100022
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名、専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年 1999年
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