日本語専門家 派遣先情報・レポート
国際交流基金ソウル日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金ソウル日本文化センター
The Japan Foundation, Seoul
派遣先機関の位置付け及び業務内容
韓国の日本語教育事情の把握、日本語教育関係機関および日本語教育関係者とのネットワーキングに努めるとともに、日本語学習者と日本語教師の双方を対象とした多様な支援を行っている。
具体的な支援活動は各種中等日本語教師研修の実施、各地域の日本語教育研究会・日本語教師会への出講、日本語教師・日本語学習者を対象とした特別セミナーの開催、日本語教師との協働・ネットワーキングおよび情報収集を目的とした中等・高等学校訪問、日本語講座の実施、学会参加等を主軸とし活動を行っている。また、韓国全土に向けて、ニュースレターやSNSを通じた情報提供を行なっている。
所在地
Office Bldg.4F, Twin City Namsan, 366 Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Korea
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名、専門家:2名(内1名は嶺南地域担当、釜山駐在)、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2002年

韓国全土に学びの機会を届けます!「テーマ別特別セミナー」、始めました。

国際交流基金ソウル日本文化センター
信岡麻理

1.いろいろ届けたい、たくさんの人に届けたい…

ソウル日本文化センターでは、さまざまな層の日本語学習者と日本語教師をターゲットに、2021年度より新しく「テーマ別特別セミナー」をオンラインにて実施しています。韓国は約54万人、世界第3位の日本語学習者数を有し(2018、海外日本語教育機関調査)、人口比で換算した場合、世界第2位の数となります。韓国全土、隅々に、そして日本語学習者と日本語教師の双方に、コロナに負けず!日本語・日本文化を学ぶ機会と日本語教育支援を届けるため、「テーマ別特別セミナー」を初年度の2021年度は、4回実施しました。テーマなど詳細は以下のとおりです。

落語家・桂かい枝氏の写真
落語家・桂かい枝さん

  • 第1弾 2021年6月28日実施
    • テーマ:落語家・桂かい枝さんによる「落語」ワークショップ
    • 対象:一般日本語学習者(B1以上)
  • 第2弾 2021年8月4日実施
    • テーマ:『まるごと中級(B1)』韓国語版出版記念・特別セミナー
    • -執筆者に聞こう!韓国の実践を知ろう!-
    • 対象:高等教育機関・日本語教育機関の日本語教師
    • および日本語教育関係者
  • 第3弾 2021年11月20日実施
    • テーマ:『いろどり 生活の日本語』をもっと知ろう!
    • 対象:[韓国]高等教育機関の日本語教育関係者(特に日本就職支援プログラム関係者)、
    • [日本]教育機関で韓国人を対象に教える人およびその機関関係者
  • 第4弾 2022年2月5日実施
    • テーマ:日本語教師サロン(中等教育・高等教育における実践報告)
    • 対象:中等教育・高等教育機関の日本語教師

「落語ワークショップ」は広報を開始して2日で定員が埋まってしまうほどの反響で、急きょ、定員を拡大し受け付けました。また、オンラインでの開催ということもあり、第2弾の『まるごと中級(B1)』セミナーには韓国を含む28の国・地域から参加の申し込みが、第3弾の『いろどり 生活の日本語』セミナーには17の国・地域からの申し込みがあり、いずれも大盛況でした。
「日本語教師サロン」は新学期が始まる直前のタイミングで2名の講師をお迎えし、授業の実践例などを紹介いただきました。韓国の日本語教師を対象としたものでしたが、日本や東南アジアなどの国からの参加もあり、国外の方が韓国の日本語教育に関心を持ってくだることを嬉しく感じました。

2.第1弾は、落語家・桂かい枝さんによる「落語ワークショップ」!

中でも、韓国の人たちに大きなインパクトを与えたのが「落語ワークショップ」でした。
ワークショップの前半では、落語家の桂かい枝さんが落語にまつわるミニクイズや、動作・声の使い方・表情・視線などの基礎知識を実演を交えて紹介してくださいました。後半では、外国の方にも本物の落語を通訳なしで楽しんでもらいたい! 落語の楽しさを直に感じてもらいたい! という思いから生まれた簡単な日本語を使っての落語、「やさしい日本語落語」を披露してくださいました。中には、落語特有の表現であったり、文化背景を知らないと理解が難しい日本語表現などもあったと思います。しかし、言葉以外の要素、例えば体の動きや声色、表情などから、言わんとしていることが十分に伝わっていると感じる場面がありました。落語鑑賞を通して、日本文化への理解が深まり、日本語の表現や語彙が増えたという人もいたのではないでしょうか。

オンラインで実施した「落語ワークショップ」の写真
落語ワークショップの様子

ワークショップの最後に設けた質問コーナーでは、またとない機会!という様子で、子供から大人まで多くの人が桂かい枝さんに積極的に質問をしていました。中でも印象的だったのは、高校生くらいの女の子の日本語がとても流暢で感動したこと、それから、モジモジしながら勇気を振り絞って手を挙げてくれた小学生の男の子の姿です。プロの落語家と直接話ができる機会は日本にいてもなかなかありません。質問に丁寧に答えてくれたり、自分の名前を呼んで優しく語り掛けたりしてくれる桂かい枝さんの姿に、聴衆のワクワク感と子供たちの興奮が、画面越しに伝わってきました。
「落語ワークショップ」には、子供から大人まで非常に幅広い層の方々が参加くださいました。継承語として日本語を学ぶ子供たち、中学・高校で日本語を学ぶ生徒たち、大学で日本語・日本文化を専攻する学生、趣味や生涯教育として日本語クラスに通う一般成人学習者、そして学校教育機関や大学、民間の語学学校などで日本語を教える先生方の姿もありました。

これからも、たくさんの人に、いろいろな形で、日本語・日本文化に触れる機会を届けることができれば……。日本語の先生方にいろいろな学びの機会を届けることができれば……と思っています。知恵を絞りながら、手を変え品を変え、今後もいろいろなセミナーやワークショップを引き続き展開していく予定です。

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