日本語専門家 派遣先情報・レポート
国際交流基金ソウル日本文化センター釜山日本語教育室
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- 国際交流基金ソウル日本文化センター釜山日本語教育室
- The Japan Foundation, Seoul
- 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- 1988年以来、在釜山日本国総領事館に日本語専門家が派遣され、嶺南地域の日本語教育を支援してきた。2005年8月より、派遣先はソウル日本文化センター、勤務地は釜山(釜山日本語教育室)という派遣形態に変更された。日本語専門家の担当業務は、当地域の中学・高等学校などの韓国人日本語教師を対象とした中等日本語教師職務研修、嶺南地域教育庁及び各中等日本語教師会への出講、学校からの依頼に応じて行う出張授業等である。
- 所在地
- YMCA Bldg. 15F, 319 Jungang-daero, Dong-gu, Busan 48792, Korea
- 国際交流基金からの派遣者数
- 専門家:1名(嶺南地域担当)
- 国際交流基金からの派遣開始年
- 2005年
オンライン開催で教師会が世界の日本語教師をつなぐ場に
ソウル日本文化センター(嶺南地域担当)
藤田智彦
1.教師会の中に興味・関心を同じくする学びの場が誕生
執筆者が運営委員として参加している釜山日本語教師会(以下、教師会)は、主に釜山市および周辺地域の日本語教師の学びの場・情報交換の場として1995年に発足し、対面での活動を続けてきましたが、2020年からは新型コロナの感染拡大を受けて、オンラインでの開催へと移行しました。その結果、参加者は韓国全域に広がり、さらには日本やその他海外の日本語教師も参加してくれるようになりました。そして、多い時には120名を超える参加者が集まり、大規模な例会も開催できるようになりました。
対面での釜山日本語教師会(2019年12月度例会)
そんな中、月1回の定例会で現場での実践についての発表を聞き、意見交換するだけでなく、興味・関心分野を同じくする教師同士が自主的に集まって学ぶスタディーを始めようと2021年2月に釜山日本語教師会(BUJA)スタディーが立ち上がりました。第3回に小柳かおる著「第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと」を取り上げたところ反響が大きく、不定期開催だったスタディーは月1回の学びの場となりました。学習者に良質のインプットを十分に与えているか、教師がフィードバックを入れるタイミングはいつが効果的か、文法の説明は最初にするべきか等、参加した教師の経験等と共に意見交換をして、理解を深めてきました。
今後も自由に教師会の会員が自らの興味・関心に基づいてテーマを決めて仲間を募りながらスタディーをすることになり、教師会の中に様々な分野について学べるスタディーが生まれてくるのではないかと期待が高まっています。
2.留学や就職で日本に入国できない世界中の学生を応援したい!
新型コロナは進学や就職で日本を目指す若者に大きな影響を与え続けています。特に防疫対策が強化されて以降、水際対策として日本は特段の事情がない限り外国人の入国ができないような状態になってしまいました。そのため、大学入試で合格しても、日本企業から内定をもらっても、日本に入国できない、また、一時帰国した後に日本への再入国ができないという現役の大学生も多くいました。入国を待ち続ける若者は世界中で15万人とも16万人とも試算され、待ちくたびれた若者が日本留学・日本就職を諦めるという悲痛な声もニュースで取り上げられるようになりました。そうした声を受けて、教師会としてできることはないか考え、同じ悩みを持っている大学生や留学準備・就職準備をしている若者等を対象にしたオンラインの交流会を開催することにしました。2022年2月に開催されたイベントには100名ほどの申し込みがあり、当日は約70名の日韓の学生たちが参加してくれました。想像を超える規模の参加に、入国を待ちわびる学生の多さ、事態の深刻さが感じられました。
前半はランダムに作った小グループでの交流を2回行い、後半はテーマ別の部屋に自由に出入りして交流できるようにしました。就職部屋、留学部屋、ドラマ好きの部屋、音楽好きの部屋、やさしい日本語で話す部屋、日本語と韓国語を教え合う部屋等を作り、同じ悩みを持つ学生同士、同じ趣味を持つ学生同士がゆっくりと話せるようにしました。アンケートを見ると、韓国人の学生は「とにかく日本語で話せてうれしかった」という回答が多くありました。なかなか日本に入国できず、日本語を話す機会が足りなかったのか、2時間たっぷりのイベントでしたが「時間が足りなかった」という回答が思いのほか多かったのは意外でした。また、イベント終了後、教え子に広報をしてくれた外国語高校の先生からは「入国できず、日本語も忘れつつあり、もどかしい思いをしていた学生たちが興奮冷めやらぬ様子で楽しかったと連絡してきました」という、うれしい報告もありました。
教師会は教師の学びの場であると同時に、日本語教師や日本語学習者のために何ができるのか、社会に貢献する活動として何ができるのか、改めて考えさせられるきっかけとなりました。