世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)今日のデリーと日本語

ニューデリー日本文化センター
武井康次郎/村上智里/奥山寛

日本語を学ぶ若者たち

みなさん、突然ですがクイズです!インドの首都はどこですか?ほとんどの人が「ニューデリー」と答えると思います。しかし、インド人に同じ質問をしたら、「デリー」と答えるでしょう。「ニューデリー」というのはデリーの中心部から南の地域であり、北の方は「オールドデリー」と呼んでいます。インドは狭い道に人や牛がいっぱいでごちゃごちゃしていて・・・というのは「オールドデリー」のイメージです。ニューデリーは道路も広く整然としており、南に行くと巨大なショッピングセンターもあり、都会的な雰囲気です。そんな、デリーの都会っ子たちが日本に興味を持ち、日本語を学んでいるのです。

彼らに、日本と言えば・・・と質問すると、まずHONDATOYOTASUZUKIなどの自動車会社の名前をあげます。確かに周りを見まわすと、日本車の数が多いことに気が付きます。2013年10月にはインドに進出する日系企業の数が1000社を超え、日本と言えば、日本企業・・・というイメージが更に強くなりそうです。

そして、次にイメージとしてあがるのはアニメ・漫画です。インド全国で「ドラえもん」が放送されており、根強い人気があります。しかし、デリーに限って言うと、現在日本の少年漫画雑誌に連載されている漫画や、テレビで放映されていたりするアニメも知っていて、最新のポップカルチャーも入りはじめています。

その一方で、忍者、サムライ、芸者・・・と答える人もいます。サムライや忍者は今も存在すると思っている人も少なくありません。ということは、忍者やサムライが日本車に乗って通勤し、会社でパソコンをたたいて・・・などと想像している人もいるかもしれません。誤った情報や考えを正し、正しいことを伝えるのも私たちの仕事です。

2006年に中等教育機関に日本語が導入されてから8年がすぎました。最初に日本語を学んだ学生は、現在大学1年生です。もう数年たつと、社会へと出ていきます。彼らがどのように日本や日本語と関わっていくのか、まだわかりませんが、将来がとても楽しみです。

ビジネス場面での日本語需要高まる

現在ビジネスの分野では日本語ができる人材が急速に必要とされています。もちろん、英語が公用語の一つとなっているインドでは、英語ができれば、日本語は必要ないという企業もあれば、日本語が必要だという企業もあります。しかし、現在、日本語ができる人材が欲しいという需要に供給が追い付いていません。さらに言えば、日本語が教えられる人材も需要を満たしていません。

私たちは、今まで学校教育機関に対する支援を中心に考えてきましたが、実際にはそれだけではなく、ビジネス日本語における支援が必要となってきています。それらのニーズに答えていくのも大切な仕事だと考えています。しかし、ビジネス日本語と言っても、漠然としており、ニーズも多様です。もちろん簡単なことではないのですが、私たちは何ができるかを考え、それらに応えて行こうと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
インド及び周辺の南アジア諸国における日本語教育支援・普及を目的としている。具体的な業務としては、(1)インド国内外での巡回セミナー、勉強会、コンサルティングなどを通じた日本語教師や日本語教育機関への支援・協力(2)初等・中等学校への日本語導入のためのプロモーション、行事への参加(3)初等・中等学校に所属する現職教師の研修及び新教師養成、情報通信技術を利用した日本語教育の導入推進(4)JF講座の運営、講座担当講師の育成など多岐にわたる。
所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-Ⅳ, New Delhi, 110024, India
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年 1999年
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