世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) スリランカ日本語教育レポート!

ケラニア大学
新井 潤

スリランカ、ケラニア大学に着任して2ヶ月が経とうとしています。前任者から引き継いで、わずかしか経過していませんが、筆者が感じたスリランカ日本語教育の第一印象について述べたいと思います。とにかく、学習者(学生に限らず現地の教師も含めて)がとても熱心なことに驚きました。偏見ながら、暑い国だし、もっとのんびりしているのかと思いきや、普段はもとより休みの日にも勉強会や教師会といった活動がおこなわれています。むしろ、休みの日を自身のレベルアップのために有効活用しようという気概を感じます。

では、筆者の勤務するケラニア大学の様子、および関連業務についてご紹介します。

1.ケラニア大学

筆者の勤務するケラニア大学は、スリランカの日本語教育には欠かすことのできない重要な機関です。スリランカ国内の日本語教育の中心的存在として活躍している日本語教師の多くがこの大学の卒業生です。さらに、中等教育機関のシラバスや教科書作りもケラニア大学の先生たちが中心となって、取り組んでいます。

現在、筆者が担当している講義は「教授法」と「文学」です。どちらも3年生(最上級生)の講義です。「教授法」の講義には、おもに中等教育機関で日本語を教えたいという学生が集まります。また、「文学」の講義では「文化」や「歴史」なども交えた「日本を知る」ための講義をおこなっています。

ケラニア大学では、来期から日本語を主専攻とするコースが開講される予定です。目下、コース設計としてシラバス作成が急ピッチでおこなわれており、ますます日本語教育機関として重要な役割を担うことになります。

2.NIENational Institute of Education

ここは国家教育省に所属する機関で、初中等教育の管轄機関の1つです。中等教育機関のシラバス作成や初中等教育機関の教師向けの研修などをおこなっています。

NIEでの授業風景の写真
NIEでの授業風景

ここではディプロマコースと称する中等教育機関で日本語を教える先生たちへの日本語教授法プログラムを実施しています。筆者はおもにコースシラバスの作成および調整、現地講師へのアドバイスをし,さらに講師として講義を担当することもあります。

大学生は恥ずかしがり屋が多いのか、授業中はとても静かです。しかし、このコース参加の先生たちはさすが精鋭揃い。どのような活動でも積極的に取り組み、わからないことはそのままにすることなく、かならず質問して解決しようとします。

このコースの支援は、中等教育という日本語教育の裾野開拓のため、つまりスリランカの日本語教育を左右する重要な業務だと言えます。

3.スリランカ日本語教師会

スリランカ日本語教師会はスリランカで日本語を教える教師の自主的な組織で、日本語振興のためにさまざま活動をおこなっています。

優勝チームの熱演!の写真
優勝チームの熱演!

2013年2月には教師会主催で「第2回日本語演劇コンテスト(通称,ドラマコンテスト)」が開催されました。中高合わせて10数校から応募があり、予選を経てファイナルに5チームが挑みました。教師会委員の役割は、審査および、予選を通じて各チームにアドバイスを送ったり日本語スクリプトの修正をおこなったりすることです。

見事優勝したのはゴール(スリランカ南方の都市)から参加したサンガミッター女子学校で、この学校は2年連続で優勝の栄冠に輝いています。今年は、3連覇なるか、はたまた3連覇を阻むチームが現れるか楽しみにしています。



派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Kelaniya
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケラニア大学の日本語講座はスリランカの高等教育機関の中で最も長い日本語教育の歴史を持ち、また中級レベルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。スリランカではまだ上級レベルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼によりAレベル試験(高校卒業兼大学入学試験)の問題作成、採点などにもケラニア大学講師が参画しており中等教育の日本語教育にも影響力を持っている。本講座には毎年高校で初級を終えた学生が集まる。専門家は大学での授業を始めとして、コース運営の支援、講師の指導、Aレベル試験の問題作成と採点の協力を行う。
所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
人文学部 現代語学科
日本語講座の概要
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