世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)南米における日本語教育の更なる成長に向けて

サンパウロ日本文化センター
久野元・柿内良太・中島永倫子・里見文

サンパウロ日本文化センター(以下、FJSP)の日本語事業は、幅広い分野にわたって行われているため、一つにまとめるのが難しいです。しかし、大きく言えばブラジルおよび南米での日本語教育の普及と、教師の育成をメインにした業務です。以下、4人の専門家が、それぞれの担当業務を紹介します。

「オンライン講座開始」 日本語講座担当(柿内良太)

日本語講座で、ここ最近のホットなトピックはオンライン講座です。インターネットで日本語が学べるプラットフォーム「みなと」上で、2018年4月ブラジル在住学習者向けのコース運用を開始しました。オンライン講座の運用開始で、関わることができる学習者の範囲が、サンパウロ近郊のみからブラジル全土へ一気に広がりました。

2019年3月、継続的にオンラインセッションを実施するコースを初公開しました。反響は大きく、定員20名のコースに約380名の応募者が集まりました。これまでも、単発コースを2度開講しましたが、どれも応募者が多数集まり、オンライン上での日本語学習を希望する学習者の存在を強く感じています。しかし、応募者が多数集まるにも関わらずセッション当日に受講生が来ない、というのが課題でした。今回の開講にあたって、受講生選びを工夫し、事前の受講希望者とのやり取りの仕方も変更しました。その結果、初回のオンラインセッションに20名中16名が出席しました。サンパウロ、リオデジャネイロ、ブラジリア、ゴイアスなどの様々な場所からオンライン上に集まり、一緒に勉強していく仲間たちと出会い、「みなと」からの「航海」を始めました。ひとまず順調なスタートを切り一安心です。次の課題は、何名が修了するか。今後も継続的なサポートを続けながら、次の「みなと」まで、何名がたどり着くのか見守っていきたいと思います。

「国境なき言語の成果」 高等教育担当(里見文)

ブラジル教育省が進めている「国境なき言語」プロジェクトの日本語講座は、現在ブラジルの5連邦大学(ブラジリア大学・リオデジャネイロ連邦大学・パラナ連邦大学・リオグランデドスル連邦大学・アマゾナス連邦大学)と1州立大学(パウリスタ州立大学・アシス校)で開講されています。この講座は「ブラジルの大学の国際化と研究レベルの底上げ、それに伴う、高等教育の充実のための語学教育」を目標として、学部生・院生・大学関係者を対象として実施されています。国際交流基金は、このプロジェクトに対して、「日本語・日本文化に親しみを覚え、興味を持つ親日家を数多く育てること」と、この講座の授業を担当する、各連邦大学・州立大学の日本語専攻の「学生チューターの育成」に焦点を当てて支援を行っています。これまで延べ1100人強がこの講座を受講し、35名の学生チューターを支援してきました。受講生の中からは日本へ留学する学生がいたり、大学を卒業した学生チューター経験者の大部分が日本語教師となったりと、順調に支援の成果が見られています。

「多様な日本語教育」 南米担当(中島永倫子)

南米日本語教育地図2019
南米日本語教育地図2019

主な業務は、スペイン語圏9か国の日本語教育支援として、各国の日本語教育の現状調査、各国教師会等が主催の教師研修への出講、ネットワーク形成支援などのアドバイザー業務です。日本語教育の現状は国によって様々で、日本語専攻として大学で学ぶ学習者、アニメや漫画がわかるようになりたいと趣味として語学学校で学ぶ学習者もいれば、日系人が運営する日本語学校で幼稚園から学び13歳でJLPTのN1を取得するというような学習者までいます。南米の大きな特徴はこのように日本語学習の目的が幅広く、さらには世界中でも南米にしかない現象として、日本人移民が子弟教育として行った国語教育から日本語教育が始まり、そこから独自の日本語教育へと発展していっていることではないでしょうか。このような現場を目にすると現地のニーズに即した支援とは何なのか?ということは、常に考えさせられる課題です。「南米」と一言でいっても、国や地域やコミュニティーを構成する人々によって日本語教育に対する目標や方針が大きく違い、まずはこれらを知ることが、現地のニーズを理解するための鍵になると思っています。すべてに対応することは容易ではありませんが、このような多様な日本語学習環境があることは、南米の日本語教育の魅力の一つでもありますので、現地の方々が多様性を誇りに思えるよう支援していきたいです。

「教師の成長と支援」 初等・中等教育機関、その他の教育機関(久野元)

初等・中等教師研修会の様子
初等・中等教師研修会

私は主に初等・中等教育機関や、その他の日本語教育機関への支援を担当しています。今年は初等・中等教育機関の教師に大きな動きがありました。2016年に初等教育の教師グループが中心となって結成した「ピオネイロ勉強会」が、今年FJSPの小規模助成を受け、初等・中等教師研修会を企画・実施しました。研修では、ピオネイロ勉強会のメンバーが講師役も務め、自らが開発に関わった「子どもCan-Do」を、参加した教師たちに紹介しました。FJSPは、教師たちによる自発的な取り組みを継続させていくため、今後も支援をしていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Sao Paulo
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
日本語教育の質的向上を図るべく、初等教育教師勉強会、中等教育教師研修、大学日本語チューター育成を行っている。また、他の団体や教育機関が主催する研修会への出講を通して、ブラジルの日本語学習者の大半を抱えている日本語学校に対しても支援をしている。加えて、南米アドバイザーは南米スペイン語圏の国々における日本語教育の現状調査と、教師研修による支援を行っている。
所在地 Av. Paulista 52, 3º andar, CEP01310-900, Sao Paulo, SP, Brasil
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
専門家:3名
国際交流基金からの派遣開始年 1994年

ページトップへ戻る