世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 教師としての視野を広げる場としての研修会

ケルン日本文化会館
榛葉久美・平川俊助

ケルン日本語教師研修会の1コマの画像
ケルン日本語教師研修会の1コマの全貌

国際交流基金ケルン日本文化会館(以下、会館)では、本コース、入門体験講座、テーマ別コース、日本語しゃべりーれんなど、「日本語を学びたい!」「日本文化に触れてみたい!」という方に向けて講座を運営しています。その一方で、日本語教師を対象にした日本語教師研修会も主催してきました。

この日本語教師研修会(以下、研修会)は、ベルリン日独センターとケルン日本文化会館を会場に年に3、4回開催しています。2007年に第1回目が行われてから間もなく10年となるこの研修会、キーワードを1つ挙げるとすれば「多様性」と言えます。

研修会では毎回あるテーマのもと、講義やワークショップを行っています。これまで扱ってきたテーマは、「音声」、「評価」、「読む活動」、「書く活動」、「Can-doに基づく日本語教育」、「言語教育における文化」・・・・などなど多岐に渡っています。また、国際交流基金開発の教科書である『まるごと』の使い方についての研修や、複数の言語をもつ海外在住の子どもたちの言語習得について考える講演会やワークショップも行ってきました。

市民大学 支部勉強会の1コマの画像
市民大学 支部勉強会の1コマ

当館所属の教師のみならずドイツ国内外の様々な教育機関から講師や発表者を迎えていることも、この研修会の特徴です。2015年春に開催した「中上級の日本語教育」では、大学、市民大学、会館と、多様な機関で教える先生たちの発表の場となりました。また、「中等教育の日本語教育」をテーマにした回では、中等教育の現場に携わる先生だけでなく、未来の教師を送り出す立場にある日本語教師養成課程を持つ大学の先生を交えてのセミナーとなりました。学習者や機関が変われば教師の取り組みも大きく変わります。1つのテーマを様々な切り口で捉えることで、研修参加者の皆様方に日本語教育の視野を広げる機会にしていただけたらと願っています。

研修参加者も様々です。研修会には毎回40名近くの方が参加されますが、ドイツ国内だけでなくポーランド、スイス、チェコ、オランダ、ベルギー、オーストリア、スウェーデンなど近隣の国からの参加も多く、研修中はもちろんティータイムや懇親会でもたくさんの交流が生まれています。新しい出会いを通じ自分の教育現場とは違う知見を得られるのも、この研修会の醍醐味です。

このように、ケルン日本文化会館が提供している教師研修会は、色々なテーマのもと様々な背景を持つ先生たちが集う、多様性を持った研修会となっています。今後も色々な角度から日本語教育や言語教育について考え、各機関で熱心に教育活動に取り組んでいる先生方が機関の垣根を超えて集い、学び合う場を作っていきたいと思っています。

(執筆者:平川)

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Cologne (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケルン日本文化会館はドイツ語圏における日本語普及事業の拠点として、日本、日本語、日本文化の理解促進を目的に多様な活動を行っている。1970年から一般社会人対象の日本語講座を開講しており、現在ゼロ初級から上級まで約300名が日本語を学んでいる。通常の日本語コースだけでなく、日本文化体験コース、テーマ別コースなども開講し、様々なニーズに対応している。日本語講座運営の他に、研修会の企画・開催を通した教師支援、日本語能力試験などによる日本語学習者の支援、日本語教育に関する情報の収集と提供などを行っている。近年では地元機関と協力して行う各種催し物を通して新規学習者の発掘や広報にも力を入れている。
所在地 Universitaetsstr 98, 50674 Cologne, Germany
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1985年
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