世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本語教育アドバイザーの仕事

国際交流基金ロンドン日本文化センター
藤光由子

日本語教育アドバイザー(以下、アドバイザー)の仕事は多岐に渡りますが、今回のレポートでは、英国での多様なイベントへの協力と、新しい研修スタイルの模索について取り上げ、紹介したいと思います。

アドバイザーの仕事(1) 日本語・日本文化イベントへの出講

ロンドン日本文化センター(JFロンドン)は、英国の幅広い層の人々の間に日本への関心を高め相互交流を促進するため、様々な機会を捉えて積極的に活動しています。

アドバイザーも、いろいろなところに出かけて行って、ワークショップやレクチャーを担当する機会があります。出講先は、学校とは限りません。対象者も小学生から研究者まで。連携団体や機関、イベントの目的も非常に多様です。この半年間の私の出講先の例をあげますと、スコットランドの小学生のイベントでの日本語体験セッション(後援:在エディンバラ 日本国総領事館)、ロンドン大学アジア・アフリカ研究学院(SOAS)で開かれる高校生のためのワークショップ(主催:英国Japan Society、ロンドン大学SOAS及び立命館英国事務所)、大学主催の日本文化イベントでのワークショップ(主催:スターリング大学)、日本留学志望者のためのレクチャー(主催:British Council日本支部及び慶應義塾大学)、渡日予定の研究者のための日本語授業(主催:日本学術振興会ロンドン研究連絡センター)などです。

アドバイザーは、このように様々な外部諸機関の日本語・日本文化事業等への出講依頼に応えて、英国の人々に日本文化と日本語の面白さを発見してもらう機会を広げる活動をしています。

アドバイザーの仕事(2) 教師研修会の企画、開発、実施

教師の学びを支援する研修会の企画、開発、実施も、アドバイザーの中心的な仕事の一つです。JFロンドンは、研修事業においても、現地の教育団体・日本語教育拠点諸機関との連携を重視しており、英国日本語教育学会とは、年に2回ほど共同主催で研修会を実施しています。英国日本語教育学会は、高等教育機関の日本語教員の尽力によって1998年設立された学会で、年次大会やセミナー、大学生のためのスピーチコンテストの開催のほか、会員の企画による研究プロジェクトの実施、ニュースレターやジャーナルの発行など、年間を通じて活発な活動を行なっています。

2019年の春の共催研修会は、英国日本語教育学会の担当役員の先生方とオンライン会議で意見交換しながら企画を練り上げたもので、準備の共同作業には4ヶ月をかけています。

2019年春の研修会「参加・表現する学び」の写真
2019年春の研修会「参加・表現する学び」

この研修は、「参加・表現する学び」というテーマのもと、ロンドン大学SOASを会場に、(1)英国日本語教育学会員3名による報告、(2)2017-2018年「欧州日本語教育研修会」参加者有志(イタリア、フランス、ドイツ)による実践研究報告、(3)ベルリン日独センター講師によるワークショップの3部立てで構成しました。また、オンライン会議システムを活用した、いわゆる「ハイブリッド型」(会場参加+オンライン参加)で提供することを提案し、実現させました。会場での活動とオンラインでの活動が並行して進行、オンライン側からのプレゼンテーションや、会場とオンライン側のインタラクションを組み込んだプログラムでした。

初等教育から高等教育、継承語教育から一般成人教育など様々な現場から、会場とオンライン合わせて50名ほどの参加がありました。 オンラインでの参加枠を設けたことから、家族の事情等からロンドンの会場に来ることが難しい会員の参加を促すことができたようです。 また、英国外の参加者も多数ありました。その参加者の居住国はというと、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン、ウクライナ、ケニア、中国、日本と10カ国にも及びます。改めて、世界の日本語教育の広がり、日本語教師のグローバルなネットワークの存在を実感します。それは、この職業の「強み」とも言えるかもしれません。

世界の「同僚」たちと学び合う場を作りたい

私自身、日本、アジア、オセアニア、欧州と、移動してきた日本語教師ですが、国際交流基金の海外拠点の専門家の仲間たちも含めて、世界中の日本語教育の「同僚」たちから学び、励まされて働いてきました。オンライン会議システムが気軽に使えるようになった時代、アドバイザー業務を通じて、各地の日本語教育のネットワークを繋ぎ、学び合う機会を作り出すことに貢献していけたらと願っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, London
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ロンドン日本文化センターは、英国における教育関係者のネットワーク、相互交流の促進を図りつつ、日英諸機関と連携して日本語教育振興を目的とする多様な事業の企画・実施している。主要事業としては、初中等教育機関の教師向けのリソースの開発と情報提供、英国日本語教育学会と連携した日本語教育研修会の企画・開発、中等教育段階および高等教育段階の学習者向けのスピーチコンテストの共同主催などがある。このほか、教育機関への支援として、日本語教育プロジェクトへの助成、専門家による出張ワークショップやレクチャー、ボランティア派遣なども行っている。
所在地 101-111 Kensington High Street, London, W8 5SA
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 日本語指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1997年
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