世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ニュージーランドの日本語教育を支援するために

ニュージーランド教育省
三上 京子

ニュージーランドに派遣される専門家は、ニュージーランド教育省が外国語教育推進を委託した機関に所属し、日本語のナショナルアドバイザーとして活動します。筆者は現在、オークランド大学のビジネス部門であるUniServicesの下部組織であるFuture Learning Solutions(以下、FLS)という組織に所属しています。FLSには全部で6つの部門がありますが、筆者はその中の言語教育チームにおける日本語アドバイザーとして業務にあたっています。

FLSの言語教育チームには、日本語のほかに中国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語のナショルアドバイザーと、教員研修プログラムを担当するProfessional Expertが数名います。また、全体を統括するマネージャーと事務担当のスタッフもいて、チームとして協力しながら外国語教育の推進と教員たちを支援する活動を行っています。アドバイザーの業務は多岐にわたりますが、中心となるのは学校訪問とワークショップの開催です。また、各地域で開催されるスピーチコンテストや日本関連の行事への出席、大使館や総領事館が行うスクールビジットに同行したりすることも大切な業務の一つです。

イマージョンデーを開催

写真(1)は、2018年7月に開催したイマージョンデーのときのものです。イマージョンというのは、「浸かる」という意味で、それぞれの言語を教える先生たちが、文字通り丸1日その言語に浸かって過ごすというワークショップを開催しました。この日はまず日本語の「漢字」をテーマにとりあげ、基本的な知識をクイズ形式で確認したり、カードを使ったゲームを体験してもらったりしながら、漢字学習の実践例やアイディアを交換しました。漢字のあとには、代表的な「日本語のことわざ」を紹介しました。ことわざの背景にある日本人の生活や考え方、文化的背景について、ニュージーランドの文化や生活とも比較しながらディスカッションをして、おおいに盛り上がりました。

写真(1) 日本語イマージョンデーの様子の写真
写真(1) 日本語イマージョンデーの1日

次のセッションでは、和風デザインの「切り紙」をしました。先生たちは「折り紙」は何度もしたことがあるけれど「切り紙」は初めてということで、干支や和風小物のデザインを作る作業に熱心に取り組みました。続くセッションでは、「書道」をしました。この日のために、ニュージーランドでただ一人というGrand Master of Calligraphyである友人が、南島のネルソンという町からかけつけてくれました。これまで自己流に書道を教えていたという先生たちも、本物の書道の大家に指導を受けることができて感激していました。

総領事館のスクールビジット

写真(2)は、在オークランド日本国総領事館が行っているスクールビジットに同行したときのものです。この日は、オークランドから車で2時間半ほどのタウランガという地方にある小学校を訪問しました。はじめに、日本の伝統的な文化と最新のテクノロジーの両方を紹介するビデオを見せました。その後、フードサンプルを使って日本料理の紹介をしたり、消すことのできるボールペンで秘密の手紙を書いてもらったりしました。ただ、子供たちに一番人気だったのは、「パロ」というアザラシの赤ちゃんの形をしたセラピーロボットでした。子供たちは次々とパロを抱きかかえたりなでたりして、とても満足そうでした。スクールビジットでは、このほかにも浴衣やハッピの着付けをしたり、剣玉やカルタなど日本の伝統的な遊びを紹介したりなどしていて、筆者もできる限り同行するようにしています。スクールビジットを通して、子供たちが日本語や日本文化に少しでも興味をもち、それが日本語学習への動機付けになればと願っています。

写真(2) 総領事館のスクールビジットの様子の写真
写真(2) 総領事館のスクールビジットに同行して

ニュージーランドは、多くの移民を受け入れている多民族国家なのですが、言葉に関してはモノリンガル(一つの言語だけを話す)社会、つまり英語だけ話せればよいという風潮があると言われています。そのため、外国語教育の推進もなかなか思うようにいかないのが現状で、日本語に限らずヨーロッパ言語なども学習者が減る傾向にあります。そんな中、今年はうれしいニュースがありました。昨年まで活動停止状態だった「ニュージーランド日本語教師会」が、若手の先生たちを中心に活動を再開したのです。ニュージーランドにたった一人派遣されているアドバイザーとしてできることは限られていますし、任期も残り8カ月余りとなりましたが、これからも学校訪問やワークショップを通して、日本語教育のために日々頑張っている先生たちを応援していきたいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 フューチャーラーニングソリューションズ
Future Learning Solutions (FLS)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
FLSはオークランド大学の営利組織であるUniServicesの下部組織で、NZ教育省との契約に基づき、FLSの言語教育チームがNZの初等・中等教育段階における外国語教育支援業務を担当している。日本語の他にフランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語のナショナルアドバイザー(以下NA)が所属していて、スペイン語とドイツ語以外のNAはオークランド大学内にあるオフィスで働いている。各NAは学校訪問、教材提供、ワークショップの企画開催などを通じて、外国語教育の推進、普及活動を行っている。FLSではまた、外国語教員の海外研修派遣、アシスタントプログラムの運営管理、日本とニュージーランドの言語・文化交流活動に対する助成金に関する業務なども行っている。
所在地 Gate 2, 76 Epsom Ave, Auckland, New Zealand
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1987年

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