世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ドキドキ!教育実習とインターンシップ

王立プノンペン大学
本橋啓子

4年生の専攻

王立プノンペン大学外国語学部日本語学科(以下、学科)は日本語を主専攻とする、4年制の学士課程です。学生は、1年次に一般教養科目と日本語科目、2年次に日本語科目、3年次に日本語科目と専門科目(日本史、日本文学史)を勉強します。そして、最終学年である4年次には「日本語教育専攻」(以下、教育専攻)と「ビジネスのための日本語専攻」(以下、ビジネス専攻)に分かれ、様々な専門科目を学びます。今年度は教育専攻の学生は26名、ビジネス専攻の学生は33名です。ここ数年は日系企業の進出を受け、ビジネス専攻を希望する学生が多くなっています。

どちらの専攻を選んでも実習を伴う科目があります。教育専攻では「教育実習」、ビジネス専攻では「ビジネス日本語」という科目です。

教育実習

教育実習:後輩の前で実習を行う様子の画像
教育実習:後輩の前で

教育専攻では、1学期に日本語教育の理論を学び、2学期には実習を行います。まず指導案を作り、それからクラスメートを下級生に見立ててリハーサルをします。その後、指導案の書き直し、補助教材の準備などをし、そしていよいよ1年生の前で実習を行います。アルバイトで日本語を教えた経験のある学生も少なくありませんが、やはりクラスメートや先生方が見ている前での実習は特別のようで、皆かなり緊張しています。とはいえ、ふだんはおとなしい学生が大きな声で説明したり、のんびりした学生がきびきびと机間巡視をしたりしている姿にはいつもながら驚かされます。

インターンシップ

ビジネス専攻では、1学期にビジネス会話やビジネスメールの書き方などを練習し、2学期にはカンボジア国内にある様々な職種の日系企業で2週間のインターンシップを行います。どの学生も終了後のレポートには「日本語に苦労した」と書いてきますが、それ以外にも「いつも友達と普通のカンボジア語で話していて丁寧語はあまり使わない。だから、お客さんに対する丁寧語や硬い言葉が難しかった。」と、日本人の新入社員のような言葉遣いについての感想を書く学生や、「来年も後輩をインターンシップに受け入れてもらえるよう、精一杯がんばった。」という後輩思いの感想を書く学生もいます。そして、うれしいことにインターンシップでの働きが認められて、卒業後の入社を誘ってもらえる学生も毎年出ています。

成績優秀者発表会

成績優秀者発表会:インターンシップの様子を報告している様子の画像
成績優秀者発表会:インターンシップの様子を報告

学科では毎年年度末に「成績優秀者発表会」を開いています。教育実習、インターンシップ、そして卒業論文で優秀な成績を収めた4年生6名ほどが、自身の成果を発表します。発表はカンボジア語で行い、学科の後輩たちにはもちろん、他学科の先生方や学外から見学に来てくださった方々に披露しています。

カンボジアの中学校や高校には、日本のような進路指導はないそうです。また大学にも、日本のように就職活動を支援してくれるキャリアセンターはありません。そんな中、教育実習やインターンシップでの経験は、学生たちが卒業する前に自分たちの将来を真剣に考えるよいきっかけになっているようです。学生たちが将来の夢の実現に一歩でも近づけるよう、学科の教師全員が力を合わせ、この2科目の内容をより充実したものにしていかなければならないと思っています。

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