世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)スラバヤで日本語を学ぶ人たち

スラバヤ国立大学
髙﨑三千代

スラバヤ国立大学の卒業生

スラバヤはインドネシアで人口第2位の都市です。町の富裕層、中間層をそれぞれターゲットにしたショッピングモールと高層アパートが続々と建設され、近郊には工業団地の開発が進む活気ある町です。

期末試験前の教室の画像
期末試験が終われば・・・

このような町で、スラバヤ国立大学(以下、UNESA)で日本語を専攻している学生は卒業してどんな職に就(つ)いているのでしょうか。彼らのカリキュラムには教育関連科目が多く、教育実習も必修科目ですが、すべての学生が教師になるというわけではありません。新規採用のポストが少ないという理由ももちろんありますが、最近では学生の中にも変化が見られます。アニメソングが好きでチョークよりもオタク棒(サイリウム)を手に取りそうな学生や、週末になるとネコ耳を付けてブーツを履く男子学生など、「教師」の一般的なイメージから少し離れた学生がじわじわと増えているのです。教員以外の進路として、日系企業に人気が出始めたのは実は近年のこと。以前は郊外の工業団地で働くことを敬遠していたのです。しかし、「日系企業は労働規則を守るし福利厚生面もいい」という評判で見直されてきています。もちろん日本語能力に合わせて手当が加算されるのは大きいモティベーションでしょう。

珍しいところでは起業する卒業生もいます。彼らは浴衣やかわいい日本グッズを輸入して、facebookをカタログ代わりに通信販売しています。今やインドネシアの文系学部では「起業(アントレプレナー)」が必修科目です。さらには、新聞配達の仕事をしながら日本語学校で勉強している努力家もいます。教師になる道が厳しいなか、日本語を学んだ経験を、自分の個性に照らして仕事につなげる学生は逞しく見えます。

町の日本語学習者

日本語の勉強に集まった人々の画像
金曜の夜は日本語の勉強に集まろう!

スラバヤ市のRumah(ルマー) Bahasa(バハサ) は政府から『2016年度革新的な公的サービスのトップ99』で表彰されました。昨年のこのページにも書きましたが、ここでは無料でさまざまな語学やコンピュータ技能が習えます。日本語を習いに来ている人にインタビューしてみました。

「私の高校の第2外国語科目は日本語ではないので、Rumah Bahasaで習うことにしました。私が友達を誘いました。実は去年も1学期勉強したけど、よく分からなかったからもう1回申し込みました。今度はよく分かって楽しい。(高校1年生・女子二人組)」

「海洋技術高校でコンピュータと英語を教えているんだけど、対外交流担当者になったので、ぜひ日本のマブチ・モーター社を学校に招きたい。日本のモーターはすばらしいからね(と、スマホに保存したモーターの写真を愛し気に見せる)。その時少しでも日本語ができたらいいと思って。30代・男)」

「今、求職中。仕事のために日本語を勉強しているかって? 日本語はそんな簡単じゃないよ。それがいいんだ。日本が好きだから日本語を習ってるということ(昭和天皇の名前を知っていた20代・男)」

「売家・貸家の仲買業を主婦業のかたわらやっていましたが、今はほとんど専業主婦。日本語を勉強するのは初めて。言葉の勉強でこんなこと(授業中にペアで話したり質問し合ったりすること)をやったこともなかったので、最初は声を出すことがたいへんだった。でも、今は好きです(皆勤賞のうえ再履修中の50代・女)」

いかがでしょうか。世界最大のイスラム教徒の国、インドネシアで日本語を学んでいる人たちの横顔を少しでも知っていただけたら幸いです。お返しに、インドネシアのことが好きで熱く語る日本人のことを誰か伝えてくださいね。

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