世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)世界へのトビラ

インドネシア教育大学
太原ゆか

インドラマユ県で集まった高校生の写真
インドラマユ県にて

街のレストランで食事をすると、帰り際、店員さんに「ありがとう」と声をかけられることがあります。外国人があまり出入りしないような市場でも、「コニチワ。ワタシ、ワ、アグス!」と、聞いてもいないのに、名前を教えてくれる人も。戦時中の防空壕も残るような地域ですが、当地の人々は日本や日本人に対してとても好意的で、居心地良く暮らすことができます。

日本と同じく島国のインドネシア。地図を見ただけではそれほど感じないかもしれませんが、実は、国土の東西はアメリカ大陸に匹敵し、島国としては世界で一番大きいのです。担当地域の西ジャワ州はジャワ島にあり、面積は約55千km2。北海道(約83千km2)よりは小さいものの、九州(約42千km2)よりも大きく、9市18県あります。そのうち、ジャカルタ首都圏に含まれる3市2県を除いた地域のサポートをしています。

チレボン市で集まった学生に日本語を教える様子の写真
チレボン市にて

所属先はインドネシア教育大学大学院の日本語教育プログラムです。インドネシアで日本語教育学の修士号が取得できる唯一の機関なので、インドネシア全土から院生が集まります。彼らは将来、インドネシア各地の大学で教壇に立ち、日本語の先生を育てる先生になることが期待されています。そのため、研究だけでなく、それぞれの地域での日本語教育の現状や問題などに関して意識を高めたり、改善策を考えたりすることも、授業に盛り込んでいます。

2015年海外日本語教育機関調査によると、西ジャワ州では高校や大学など合わせて600以上の機関で日本語が教えられているとのことです。これはタイ王国一国分に匹敵する規模です。日々様々な要望が寄せられますが、専門家一人でできることは限られており、日本人会の方々や日本人留学生の方にもご協力いただき、なんとか対応しています。

専門家にしかできない業務の一つに、学校訪問があります。片道3時間以上かかる地域の高校を訪問し、主に学習意欲の維持・向上のため、ゲームやクイズを利用して、文化紹介などを行っています。「『生まれて初めて会った日本人』がこんなおばさんでごめんなさい!」という気持ちを吹き飛ばしてくれるくらい、どこへ行っても写真をせがまれます。彼らにとって、日本はあこがれや夢でしかない、遠い存在です。これをきっかけに、日本をより身近に感じ、そして、さらに広い世界へ興味・関心を持ってもらえたら、と思っています。

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