世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州中等教育機関)
岡本 拓

中部ジャワ州とジョグジャカルタ特別州(以下、ジョグジャ)はジャワ島中部に隣接して位置しており、合わせると九州がすっぽり収まるほどの面積を有しています。中部ジャワ州の州都・スマラン市は2019年現在、人口第10位の都市として栄え、近年外資系企業の進出も増えています。一方、ジョグジャはかつての王朝時代の趣きを今なお残しており、旧宮廷など世界的に有名な観光地が数多く見られます。この2地域は日本語教育も盛んで、州内には大小10の教師会があり、200名以上の日本語教師が参加しています。教師たちは日々日本語能力と教授力の向上に励み、切磋琢磨しています。

オンラインで教師支援

報告者の担当地域では、2018年からオンラインによる新たな教師支援の形を模索しています。地理的・時間的負担を軽減させ、もっと気軽に日本語学習を継続してほしいとの思いから新たな試みを行なっています。そのひとつが「教師のためのオンライン日本語会話会」(以下、会話会)で、もうひとつは「オンライン作文授業」(以下、作文授業)です。会話会というのは、月2回オンラインミーティングを開き、地域の教師たちが日本語で話せる機会を作っています。1回30分ほどでテーマに沿って日本人と日本語で会話します。「忘れかけていた日本語を取り戻せる」と、とても好評を得ています。一方、作文授業は今年から始めた活動で、普段まとまった文章をアウトプットすることが少なくなった教師たちの書く能力の向上を目的に行なっています。課題の提出やフィードバックなどのやりとりはすべてGoogle Classroomを利用して行いました。Google Classroomは、Google社が提供する無料の学習管理システムのことで、担当地域に密着した教師支援ツールとしてとても重宝しています。

このような活動は従来、教師会が主催する勉強会などで行ってきた支援ですが、昨今地理的・時間的事情により参加したくてもできない教師が多いことから、教師たちのモチベーションや向上心を維持するため何かよい手だてはないかと考えた末、辿り着いた方策でした。従来の支援の形は継続しながらも、時勢に沿った支援の形を今後も模索していきたいと思っています。

文化祭も時代に即した教育の場に

中部ジャワ州・ジョグジャ2州合同の教師会が主催する高校文化祭が2019年1月に開かれました。今回はバクティ・プトラ・バンサ専門高校(SMK Bhakti Putra Bangsa Purworejo)で開催され、会場校が位置する地域の教師会が実行委員となって、準備・運営を行ないました。文化祭では例年、様々なコンテストが開催され、高校生たちが日ごろの学習の成果を披露します。コンテストの種目は、弁論大会、書道、ポスター発表、群読(詩などをグループで朗読するパフォーマンス)のほか、今回新たな試みとして、学校紹介のビデオコンテストと、Kahoot!を活用した日本語クイズも実施しました。文化祭というイベントであっても次世代スキルの育成の場ととらえ、実行委員会で協議しながら時代にあわせた種目を取り入れ、進化し続けているようです。

生徒が書道をしている写真
今回の文化祭テーマは「平和への願い」

多読*授業の実践

昨年度の多読ワークショップ**以来、少しずつ多読の実践の輪が広がっています。先日報告者が見学した多読授業の一例をご紹介しましょう。生徒たちは専門高校1年生で、週4時間日本語の授業を受けています。見学した当時の彼らの日本語レベルは、文字を読むにはまだ50音表が必要なくらいで、ひらがなを習い終えたばかりでした。多読授業が始まると、生徒たちはまず、教師が用意した多読教材から好きなものを自分で選び、ペアになって協力して読みます。初級レベルの多読教材には、平易で短い文章にあわせて、カラーのイラストや写真が豊富に掲載されています。そのため、文章が読めない初学者でも視覚的に読書を楽しむことができます。見学した日、生徒たちはイラストや写真から日本の文化や風景を鑑賞する一方で、50音表とにらめっこで一生懸命ひらがなを読み解き、時に教師に質問したりして楽しげに日本語にふれていました。読み終わったら、生徒はペアで教室の前に立ち、一番面白いと思った一節を音読します。それから、インドネシア語で読んだ話を簡単に紹介します。わからない部分も絵からストーリーを想像しながら、上手に紹介していました。初学者であっても楽しみながら日本語をインプットすることができ、知らない単語や表現に出会うたびに日本語への関心も高まることでしょう。

多読のルールについて説明する教師と熱心に聞く生徒たちの写真
多読のルールについて説明する教師と熱心に聞く生徒たち

*多読とは、自分のレベルに合わせた文章から読み始めて、単語や文法がわからなくても気にせず読み進め、楽しくインプットをくり返して身につける外国語学習法のひとつです。(NPO多言語多読より)

**2018年度の多読ワークショップについての詳細は、昨年度の記事をご覧ください。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
中部ジャワ州およびジョグジャカルタ特別州における中等教育機関への日本語教育支援、教師会における人材育成とネットワーク構築のサポート、日本語パートナーズ事業への業務協力、ジャカルタ日本文化センターが依頼する事業への業務協力
所在地 Summitmas Ⅱ Lt. 1-2, Jl. Jenderal Sudirman, Kav. 61-62 Jakarta 12190, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2008年

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