日本語専門家 派遣先情報・レポート
ジャカルタ日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け及び業務内容
インドネシアの各機関・団体と連携をとりながら、幅広い日本語教育支援を行っている。中等教育では各地域や全国レベルの教師会と、高等教育では主にインドネシア日本語教育学会とその各地域の支部と連携し、勉強会やセミナーを実施しており、「にほんご☆キラキラ」や「にほんご☆ラクラク」等当センターで作成した教科書を積極的に紹介している。2019年には当センター内において特定技能チームが発足し、民間の日本語教育機関を対象とした研修やコンサルティングも開始した。JF日本語教育スタンダードに準拠した「JFにほんごeラーニング みなと」講座、日本語パートナーズ派遣事業、EPAに基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育事業を実施しているほか、近年、需要が高まっているオンライン教材の開発・普及にも力を入れている。
所在地
Summitmas (2) Lt. 1-2, Jl. Jenderal Sudirman, Kav. 61-62 Jakarta 12190, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:3名、専門家:5名、生活日本語コーディネーター3名
国際交流基金からの派遣開始年
1980年

ジャカルタ日本文化センターの日本語教育支援(2022)

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
中等教育担当:今井智絵
NP事業担当:対尾幸華
高等教育・『まるごと』担当:森田衛
EPA担当:大田美紀、江森悦子、平田佑和、竹田恒太
特定技能担当:手島利恵

ジャカルタ日本文化センター(以下、JFJA)では、日本語教師支援、JF にほんごeラーニング「みなと」講座、経済連携協定(以下、EPA)に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育(訪日前研修)、在留資格「特定技能」に対応し日本で生活・就労するために必要な日本語教育の支援、日本語パートナーズ(以下、NP)事業を行っています。現在はコロナ禍で対面での研修や授業の実施が一部に限られていますが、そうした状況においても、オンラインを積極的に活用して効果的に業務を進めています。

『まるごと』中級(B1)の魅力を伝えるために

JFJAではこれまで日本語教師を対象とした『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)教授法研修を各地で実施してきました。2020年に『まるごと』中級2が現地出版社から出版され全冊インドネシア語版がそろいましたが、コロナ禍で対面での広報ができない時期が続いたことから、2021年12月に『まるごと』中級1,2を紹介するセミナーをオンラインで開催しました。このセミナーにはインドネシア国内の大学、高校、民間日本語学校など幅広い機関から日本語教師71名が参加しました。学習者役になって授業を受けるグループ活動や、『まるごと』中級を使っている機関による実践報告を通じて、『まるごと』中級の魅力を伝える工夫をしました。概要や特徴を知るセッションでは、執筆者から直接、豊富な具体例を織り交ぜながら話を聞くことができたのが好評でした。その熱が冷めないうちに、翌月からJFJAで『まるごと』中級教授法オンライン研修(計6回:13時間)を実施しましたが、ここでも参加者の反応はとても良く、研修で取り上げたシャドーイング、ストラテジー、再話等を取り入れた活動を授業に取り入れて実践したいという声が受講者から多く挙がりました。研修が終わった後も、受講者が行う授業への見学依頼や、コースに『まるごと』を導入するためのカリキュラム相談などがJFJAに寄せられており、今後の支援に繋がる研修に手ごたえを感じています。

約2年ぶりの日本語パートナーズ派遣

2021年12月20日、NP30名がインドネシアに着任しました。2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響により中止となったので、約2年ぶりの派遣です。生徒もカウンターパート(以下、CP)の先生も、NPの派遣を待ち望んでいました。活動期間は約3か月と例年と比べて短くなり、保健プロトコルによって体験型文化紹介が制限されるなど特別なルールもありますが、NPは常に前向きに「今、自分にできることは何だろう?」と考えながら活動しています。

現在、多くの学校がオンライン授業を実施しています。オンライン授業でNPが活動するのは初めてです。全てが手探りの中、やはり頼りになるのはCPの先生と同期NPの存在でした。生徒のモチベーションを上げるアイディアやオンラインでできるゲーム・アクティビティを一緒に考えたり、授業内容を投稿している同期のSNSからアイディアを得たり、動画作成をしているCPNPもいます。同じ環境で頑張っている仲間の存在はとても心強いようです。

周りの人との「繋がり」や「協力」の大切さを再認識した日本語パートナーズ派遣プログラム、JFJAもしっかりサポートしていきたいと思います。

「パンデミックでも、できる!」オンラインJSフォーラム開催

かめのり財団とJFの共催で2012年から始まった「にほんご人フォーラム」(以下、JSフォーラム)ですが、今回JFJAではかめのり財団の支援を得て、インドネシア国内の高校生を対象とした「オンラインにほんご人フォーラム」を企画しました。過去にインドネシアからJSフォーラムに参加したことがある中等教育の先生5名と一緒に内容を考え、実施しました。

企画は2021年9月から始まり、5人の先生のアイディアを中心に内容を考えました。2022年1月~2月の当日までZoomで何度も打ち合わせとリハーサルを行いました。生徒も80名近い応募があり、25名を選抜しました。内容は「パンデミックでもできる!」をテーマに、パンデミックになってできなくなったこと、できるようになったことを話したり、他拠点の日本語専門家がゲストとして参加、パンデミックによる国の様子や過ごし方などの生徒のインタビューに答えてもらいました。日本語はいろいろな国の人とつながることができるツールであると、私たちも実感しました。オンラインでの支援の可能性、パンデミックでもオンラインでつながることができることを示せたと思います。ファシリテーターの先生方、参加した生徒のみなさん、ありがとうございました!

EPA訪日前研修:候補者の歩みに応じた自律学習支援

2010年から開始したEPA訪日前研修(以下、「研修」)では、2021年度、約300名の看護師・介護福祉士候補者(以下、「候補者」)を対象に『まるごと』を主教材とした反転授業を行っています。前14期(2020年度)に続き、15期(2021年度)もオンラインで研修がスタートし、毎日3コマは非同期での自律学習時間としています。この非同期の時間に候補者は「みなと」の「まるごと日本語オンラインコース」(以下、「みなと」)などで予習をしてから授業に臨み、Zoomによる同期の授業ではアウトプット活動を中心に行います。反転授業をスムーズに進めるためには、候補者が十分に予習をしていることが非常に重要です!そのため、講師は「みなと」での予習状況を確認したり、授業のための事前課題(タスク)を与えたりして、非同期での自律学習を支援します。

しかし、このような支援をしても、最初から自分で予習ができる候補者もいれば、一人で予習をするのが難しい候補者もいます。そういった候補者に対し、15期研修では非同期の自律学習時間に「チュータークラス」を開講し、同期でも学習支援を行っています。インドネシア人講師がチューターとなり、最初はチューターのリードで「みなと」を進め、学習方法が分かったら、候補者が順番に「チューター役」になります。

研修が始まって約2か月経ち、チュータークラスがなくても自分で学習できる候補者が増えました。候補者の歩みは様々です。約半年の研修を通じ、候補者それぞれの段階に応じた自律学習支援を行っていきたいと思います。

看護師・介護福祉士候補者が訪日前研修に向けて予習をしている写真
仲間と一緒に「みなと」で予習中

特定技能:2年目も「いろどり」ゆたかに…

特定技能制度などで日本での生活や就労を目指す人を対象とした日本語教育支援「外国人材受入関連事業」がJFJAでスタートして2年が経ちました。事業の柱の一つにコースブック『いろどり 生活の日本語』(以下、『いろどり』)の普及があります。インドネシア語版をはじめ、現地の日本語教師が使いやすいように作成した教材は「IRODORI Indonesia」というウェブサイトに載せています。2021年度はここに「教え方のポイント」を紹介するビデオが加わりました。手軽に見られる短いビデオで、全部で5種類あります。『いろどり』を使ってみたい、または使い始めたという声が広がってきた中で、私たちJFJAの役割は「『いろどり』を知ってもらう」から「『いろどり』で教えられる教師を増やす」にシフトしています。そこで「教え方がわからない」「自信がない」という人のために、長い説明を読まなくても音声や映像でポイントが確認できるビデオを作りました。また、ビデオと組み合わせてオンライン「教え方ワークショップ」も開催しました。事前学習でビデオ視聴と確認クイズをしておくことで、ワークショップ当日は模擬授業体験など実践的な内容にフォーカスすることができました。嬉しいことに事後アンケートでは、これまで『いろどり』を使ったことがある参加者は全員「前より自信をもって教えられそうだ」と回答しています。今後も現場の声を大切にし、様々なアプローチで「いろどり」ゆたかに盛り上げていきたいです。

日本語教材を使用して「教え方のポイント」を紹介するビデオ
IRODORI Indonesia「教え方のポイント」ビデオ

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