日本語専門家 派遣先情報・レポート
ジャカルタ日本文化センター(西スマトラ州)

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ジャカルタ日本文化センター(西スマトラ州 中等教育機関担当)
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ジャカルタ日本文化センターの業務方針に従い、主にスマトラ地域における中等教育の日本語教育支援のため以下の業務を行う。
  1. 1.巡回指導による地方における高校日本語教師会活動支援
  2. 2.インドネシア日本語教育学会西スマトラ支部等、地域ネットワークが実施する勉強会等の活動支援
  3. 3.ジャカルタ日本文化センターが実施もしくは協力する中等教育向け教師研修と教材作成プロジェクトへの協力
  4. 4.国際交流基金及びジャカルタ日本文化センターが実施する日本語事業への協力
所在地
Summitmas (2) Lt. 1,2, Jl. Jenderal Sudirman, Kav. 61-62 Jakarta 12190, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2008年

オンラインによる教師会活動支援と授業相談

ジャカルタ日本文化センター(西スマトラ州)
重村美代子

インドネシアでは709,479人が日本語を学習しており、その約88パーセントを中等教育機関(高校)で学ぶ学習者が占めます(国際交流基金2018年度日本語教育機関調査結果より)。私の担当地域は、西スマトラというスマトラ島の中部に位置する州で、主な業務は西スマトラの中等教育機関の日本語教師支援です。しかし新型コロナウイルス感染症の影響が続き、現地の直接訪問はまだ叶わず、オンラインで業務を行っています。

オンラインによる教師会活動

西スマトラ州ではおよそ100人の教師が高校で日本語を教えています。学校で日本語を教えるなかで抱える共通の課題を解決したり、日本語プレゼンテーション大会などの日本語教育関連のイベントを開催したりするために、教師会を運営し、活動しています。2021年度は8月から2月まで、月に1回程の定例会が次のようにオンラインで開かれています。

西スマトラの高校日本語教師会の2021年度活動表の図、月、テーマ、8月、オンラインアイスブレイク、9月、おしゃべり会、10月、クォータフレンドリーなテクノロジーによるインタラクティブな日本語学習、11月、学習ブログ作成ワークショップ、12月、上手な日本語の問題作成方法(1)、1月、上手な日本語の問題作成方法(2)、2月、交流会
2021年度西スマトラ高校日本語教師会の活動

2021年度西スマトラ高校日本語教師会の活動

新型コロナウイルス感染症の影響で遠隔授業が続いていたインドネシアですが、西スマトラ州では2021年度の中頃には対面授業が再開され始め、2022年1月末現在も対面授業が行われています。しかし、他の州では遠隔授業が再び始まった学校もあり、新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで続くのか、先が見えません。また、対面授業が再開されても、授業時間が短縮された学校も多く、その穴を埋めるうえでも、遠隔授業を含めた自宅学習をどのように進められるかに教師の関心があります。生徒の中には、自宅学習に使えるパソコンやスマートフォンを持っていなかったり、持っていてもデータ使用量に制限のあったりする生徒も多くいます。そのため、同期型の遠隔授業の方法だけでなく、非同期型の遠隔授業、つまり自宅学習の方法が模索されています。

オンラインによる授業相談

西スマトラ州にはコロナ禍前の2021年3月まで国際交流基金から日本語専門家(以下、専門家)が派遣され、中等教育機関で教える教師を支援してきました。専門家が現地に住み、学校を訪問することは、日本語を学ぶ生徒だけでなく教師のモチベーションの向上にもつながります。また支援する側にとっては、授業を見て生徒や教師の様子を観察したり、教師とコミュニケーションをとったりすることで、支援につながる課題を見つける機会になります。しかしコロナ禍で現地を訪問して学校訪問ができない状況が1年以上続きました。そこで国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(以下、センター)の中等教育機関担当の専門家と講師で協力して、オンラインで全国の教師の授業見学を行うことにしました。希望者募集の案内を出したのが2021年9月初旬でした。16人の教師から依頼があり、うち7人がスマトラ島の教師でした。首都ジャカルタのあるジャワ島に比べて新型コロナウイルス感染症の影響が少なかったスマトラ島では、2021年10月頃には対面授業が再開されました。 そこで授業見学から授業相談に切り替え、ウェブ会議ツールを使って、面談を行うことにしました。面談にはセンターのインドネシア人講師も参加したため、日本語だけでなくインドネシア語も使用しながら、教師一人ひとりの生の声を直接聞いて、課題解決の方法を一緒に考えたり、カメラで教室の様子を見せてもらったりすることができました。

インドネシアの高校の教室の写真
国立MANDAH第1高校の教室(教室内には生徒たちが作った桜の木が飾られている)

今後の支援

以前は対面で行われていた教師会の定例会ですが、オンラインで行われるようになり、教師も長い時間バスに乗って会場まで移動せずに、参加できるようになりました。また、授業相談も、オンラインならインドネシア全国にいる教師を対象にした支援ができます。しかし、以前行われていた対面での支援もやはり大切なものです。例えば、オンラインでの授業相談の時に、対面で会ったことがない教師から自身の抱えている悩みや課題を引き出すのはなかなか難しいものです。授業を直接見られないからなのはもちろん、オンラインのみによる信頼関係づくりにも限界を感じています。コロナ禍の収束後は、対面とオンラインのそれぞれの利点を生かして、柔軟にそしてきめ細かな支援をしていきたいと思っています。

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