世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ドラマ翻訳に挑戦

ラオス国立大学
本多倫子

ここラオスでも、日本のマンガ人気は高く、一般家庭のテレビで吹替え版のアニメが見られますし、マンガとして読むこともできます。ラオス国立大学で日本語を学ぶ学生に、好きな日本のマンガは何ですか?と聞くと、だれでもいくつかあげることができます。しかし、ドラマというとなかなか出てきません。日本にはおもしろいドラマもたくさんあるのですが…。

そこで、今年度の「翻訳」という科目では、日本のホームドラマ全11話をラオス語に翻訳してみようということになりました。今まで「翻訳」の授業では、日本国内のニュースを扱うことが多かったのですが、もっと日常会話や暮らしに接することができる教材に取り組んでみようという試みです。日本語堪能なラオス人教員と履修学生28名、そこに日本人教員2名も参加して一大プロジェクトが発動しました。

グループ作業の様子
グループ作業

まず、学生を3、4名のグループに分け、担当部分の日本語スクリプトを渡します。学生は映像と文字を頼りに、グループで話し合いながら翻訳作業を進め、授業のときに発表します。発表しながら、間違いを直し、みんなから意見を出してもらい、より自然でわかりやすい台詞にしていきます。ときには、日本人ならだれでも知っている古いテレビ番組の主題歌や比喩表現につまずきつつも、それらをそっくりラオス風に置きかえたり、巧みな意訳を作り出したりしていきました。

発表風景の写真
発表風景

学生たちは、思いもよらぬ文化の違いを知ったとき、また、どうしても意味がしっくりこなくて訳に行き詰っていた言葉が腑に落ちたとき、その折々に、普段の授業ではなかなか見ることができない満足げな笑顔を見せてくれました。みんなが熱心にアイディアを出しあう様子は、見ていても大変楽しいものでした。

最初は、日本語の話し言葉、会話のスピード、男女や年齢で違う話し方に苦戦していましたが、何度も繰り返し聞くうちにだんだんわかるようになり、翻訳のスピードも上がっていきました。そして、作業が進むにつれ、登場人物の立場や心情への理解も深まり、ドラマの最終回に向けてストーリーがどう展開していくのか、だれもが目が離せなくなっていきました。特に、今回扱ったのは親子の関係が軸になっているホームドラマだったので、家族を大切にするラオスの人たちにも共感できるところが多かったようです。

授業の最後には、授業内容やグループワークについて振り返りを行いました。その結果からは、協力、責任、作業の効率化、アイディア共有などの言葉が多く見られ、さまざまな学びがあったことが伺えました。

これからも、ラオス国立大学で日本語を学ぶ学生が、もっと日本を知り、もっと日本を身近に感じられるような教材を授業で扱っていきたいと思っています。

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