世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ラオス中等教育機関における日本語教育

ラオス教育スポーツ省教育科学研究所
相馬森 佳奈

ラオスでは2010年の中等教育カリキュラム改革によって中等教育での第二外国語が導入され、日本語・フランス語・ベトナム語・中国語が選択第二外国語科目になりました。これを受けて2015年にはビエンチャン中等教育学校で日本語教育が始まりました。また2016年5月に国際交流基金(以下、JF)からラオス教育スポーツ省教育科学研究所(以下、RIES)に短期専門家が派遣されると同時にピアワット中等教育学校・ノンボン中等教育学校がパイロット校に指定され、2016年9月からはその2校での日本語教育も始まりました。初代の短期専門家派遣開始から約2年、合計4人の短期専門家派遣を経て2018年4月から長期専門家の派遣が開始されています。RIESに派遣された専門家の主な仕事は、以下のようなものがあります。

  • (1)カリキュラム・シラバスの作成・改訂
  • (2)教科書作成・改訂
  • (3)教師研修
  • (4)3校での日本語授業のモニタリング・評価

これらのうちのいくつかを紹介します。

毎年、教科書ができていきます

パイロット校での日本語教育は現在2年目(ビエンチャン中等教育学校は3年目)がほぼ終わろうとしています。1年目の2016年から2017年は1年生の教科書が試行・改訂されました。2年目の現在は1年生の教科書は正規版を、2年生の教科書は試行版を使用しながら改訂を行っています。それと同時に3年生の教科書の試行版の作成を行い、2018年7月ごろまでには2年生の正規版と3年生の試行版が完成する予定です。これを毎年繰り返し、7年生まで(ラオスの中等教育機関は7年制です)正規版の教科書を作成することになります。まだまだ先は長いですが、少しずつできていくのは楽しみでもあります。

先生たちも勉強中です

中等教育機関での日本語教育が開始されてまだ2年、パイロット校で日本語を教えている先生たちもほとんどが日本語を学び始めてまだ1~2年です。先生たちは各学校で自分の専門科目の授業を担当しながら日本語の授業も担当し、さらに毎週水曜日の午後には日本語や日本語の教え方を学ぶために研修に参加しています。教師研修は現在、2グループに分れての日本語研修(『みんなの日本語』や『まるごと』を使っています)、それからやラオス中等教育機関用教科書『にほんご』を使った教え方の研修があり、ラオス国立大学文学部日本語学科(以下、日本語学科)の講師と私が協力して行っています。

教師用の日本語指導書「にほんご1」と「にほんご2」の写真
『にほんご1』『にほんご2』と教師用指導書

授業モニタリングはとても新鮮です

毎月第1週目はRIESの職員とともに3校の日本語授業のモニタリングです。日本語学科やラオス日本センター(LJI)に派遣されている専門家・指導助手にも都合がつく限り参加してもらっています。試行中の教科書に関してわかりにくかったり教えにくそうだったりするところはないか、先生方が教科書の各項目を目的に合わせてきちんと教えられているか、現在3校には日本語パートナーズ(以下、NP)も入っているので、先生方とNPのチームティーチングがうまく機能しているか、生徒たちは日本語に興味を持って積極的に授業に参加しているか・・・・などなど、モニタリングの際にはいろいろなことを見ています。私はこれまで日本語学校や大学、日本センターなどで日本語教師として働いてきましたが、中等教育機関での日本語教育に携わるのは初めての経験です。それだけに、実際の中等教育機関での授業を見るモニタリングはとても大事な機会となっています。明るく、元気で、そしてかなり自由な生徒たち。そんな彼らに日本語・日本文化に興味を持ってもらうためにはどんな教科書を作り、どんなクラス授業を行ったらいいのか、彼らに教える先生たちにはどんな研修が役に立つのか・・・・。モニタリングに行くたびに考えさせられることが多いです。

まだ始まったばかり、これからが楽しみなラオスの中等教育機関での日本語教育です。

授業風景の写真
ピアワット中等教育学校での授業風景

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ラオス教育スポーツ省教育科学研究所
Research Institute for Educational Sciences(RIES), Ministry of Education and Sports
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
RIESは初・中等教育の教科書・カリキュラム開発などを行っている教育スポーツ省の機関である。2010年のカリキュラム改訂で日本語が中等教育の選択第二外国語科目の1つになったことを受け、2016年より国際交流基金の日本語専門家派遣が始まった。現在ビエンチャン市内の3つの中等教育機関で日本語が教えられている。

中等教育支援のための専門家の業務:
1. カリキュラム・シラバス作成・改訂
2. 教科書の作成・改訂
3. 教師研修実施
4. 対象校での日本語教育実施状況のモニタリング・評価
5. 中等教育における日本語教育導入に向けた中期計画への助言
6. ラオスにおける日本語教育普及事業への協力
所在地 Vientiane, Lao P.D.R
国際交流基金からの派遣者数 1名
国際交流基金からの派遣開始年 2016年
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