世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ラオスの地方の都市にも日本を届けたい

ラオス日本センター
鈴木 千晶

ラオス日本センター(以下LJI)はラオス国立大学の1機関で、高校生から成人一般を対象にJF日本語講座を開講しています。またその他にも、首都ビエンチャン市内の中高生や大学生を対象に日本語・日本文化の普及イベントを数多く行っています。今まではビエンチャン市内に限られていたこの活動を、昨年からは地方の都市でも始めることにしました。というのも、ラオスにおける日本語教育はビエンチャンに集中していて、その他の都市では、中南部にあるサワンナケート大学で日本語が教えられているのみ。それ以外の町では公的機関での日本語教育は行われていません。ビエンチャンとサワンナケート以外の地方の学生にも日本語・日本文化に親しんでもらえるよう、ルアンパバーンとパクセーという町で、日本語・日本文化イベントを行いました。その様子をレポートします。

日本語ガイドも多いルアンパバーン

ルアンパバーンは、ラオス北部にある古都。世界遺産に登録されている観光地なので、ご存知の方も多いかもしれません。日本人観光客も訪れるので、日本語ガイドの仕事をしている人も多いのですが、残念ながらここ数年は日本語を学べる場所がない状態です。こちらではスパヌウォン大学とサンティパブ中高等校を訪問しイベントを行いました。内容はラオスでの日本語教育やLJIについての紹介、自己紹介などの簡単な日本語、それから茶道体験など。アニメや漫画の影響で日本に親しみを持っている学生は多く、日本語での自己紹介も難なくこなしているのが印象的でした。また茶道は大学生にとっても高校生にとっても初の体験だった学生が多く「おいしい!」「苦い!?」などなど、かなり盛り上がりました。地方の高校生は大学入学でビエンチャンに出てくる学生も多くいます。将来はLJIなどでぜひ日本語を勉強してもらいたいものです。

茶道のデモンストレーションに興味を示す学生の写真
茶道のデモンストレーションにはみんな興味津々

ラオス人講師が日本や日本語について説明している写真
LJIのラオス人講師が日本や日本語について説明

経済特区のあるパクセーでも

南部のパクセーでは、チャンパーサック大学でイベントを行いました。パクセー近郊には 日系中小企業専用の経済特区があり、近年日系企業の進出が増えてきています。日本語を勉強したことがある学生も何人かいました。またチャンパーサック大学から前述の経済特区にある企業にインターンに行く学生もいるそうで、日系企業への就職に興味を持っている学生も。日本への留学に関する質問も多く、さすがは大学生ですね、将来を見据えた意識の高い様子が伺えました。パクセーでは今後日系企業の進出はますます増えていくことが予想されています。パクセーには日本語学校もあるので、日本に視線を向けて日本語および日本に興味を持ってもらいたいですね。

どちらもビエンチャン市内で行う以上の盛り上がりを見せたのは、やはりビエンチャンと違いこういったイベントに参加する機会がなかなかないからでしょうか。またルアンパバーンでもパクセーでも、学生のみならず多くの先生方も興味を持って参加してくれていたのが印象的でした。ラオスの地方都市でも日本や日本語への興味が消えてしまうことなく、少しでも芽が生え大きく育っていくよう、これからも支援を続けていければと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Laos-Japan Human Resource Development Institute
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ラオス日本センターは日本の政府開発援助により設立され、現在は国際協力機構(JICA)と国際交流基金の協力のもとで、日本とラオス両国によって運営されている。ビジネス経営の知識や日本語を学ぶ場として、市場経済化促進のための人材育成を行うとともに、様々な文化交流事業を実施することにより、日本とラオスの交流・相互理解促進を目指している。2012年10月よりJF講座が開始され、JF日本語教育スタンダードに基づいた日本語教育の普及、及び、教師育成や教育機関ネットワーク促進の拠点としての役割を担っている。
所在地 Vientiane, Laos
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名 調整員:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2005年
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