世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)『にほんご』ができるまで
ラオス教育スポーツ省教育科学研究所
相馬森 佳奈
2016年よりラオス教育スポーツ省教育科学研究所(以下、RIES)に国際交流基金(以下、JF)の専門家が派遣され、中等教育における日本語教育のカリキュラム・シラバスや教科書の作成を始めて4年目になりました。ビエンチャン校、ノンボン校、ピアワット校の3校に加え、2018年9月より新たにポンタン校において第二外国語として日本語が導入され、現在ビエンチャン市内の公立中等教育機関4校で日本語教育が行われています。
M1(中等教育1年生、日本の小学校6年生相当)からM3(中等教育3年生)までは『にほんご』という教科書を使っています。これはRIESに赴任しているJF専門家が現地の先生方と協力しながら毎年作成している教科書です。現在『にほんご3』の試行版を各校で使用しながら正規版に改訂すると同時に、『にほんご4』の試行版を作成しています。
今回はこの『にほんご』がどのような過程を経て作られているのか、ご紹介します。
『にほんご』シリーズ(教科書と教師用指導書)
『にほんご』の1ページ
『にほんご』はラオス国立大学(以下、NUOL)とラオス日本センター(以下、LJI)のラオス人日本語講師2名とRIESに赴任しているJF専門家の合計3名の執筆者が執筆しています。執筆者3名がそれぞれの担当する部分を持ち寄り、コメントし合いながら執筆し、ある程度形になったところでそれをNUOLのJF上級専門家とLJIの専門家との会議を行ってコメントをもらいます。そのコメントをもとに修正したものを、教科書検討会議(以下、CACIM)にかけます。CACIMはRIESの所長・副所長や他科目の教科書作成に携わっている職員、教育スポーツ省の方たち、各校の校長先生や日本語担当教員など多くの方からコメントをもらう場です。CACIMでのコメントを踏まえさらに修正し、ようやく試行版が完成します。試行版が完成したら印刷し、各校に配布、1年間それを使った授業が各校で行われます。その間授業モニタリングやその教科書を使用して授業を行っている教員への聞き取りなどを通して試行版の修正を行い、翌年に再度専門家からのコメントやJFの日本語国際センターの講師からのコメントをもらったあとで最終的にCACIMでの承認を経て正規版が完成します。
ラオスでは初等・中等教育機関で使用されている教科書は国定教科書であり、全国のすべての初等・中等教育機関が同じ教科書を使用しています。それらの教科書はすべてRIESで作成されています。RIESで作成された教科書および教師用指導書はすべてRIESのウェブサイトで閲覧が可能です。もちろん『にほんご』も掲載されています。もしよければぜひご覧ください。
派遣先機関名称 | ラオス教育スポーツ省教育科学研究所 |
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Research Institute for Educational Sciences(RIES), Ministry of Education and Sports | |
派遣先機関の位置付け 及び業務内容 |
RIESは初・中等教育の教科書・カリキュラム開発などを行っている教育スポーツ省の機関である。2010年のカリキュラム改訂で日本語が中等教育の選択第二外国語科目の1つになったことを受け、2016年より国際交流基金の日本語専門家派遣が始まった。現在ビエンチャン市内の4つの中等教育機関で日本語が教えられている。 中等教育支援のための専門家の業務: 1. カリキュラム・シラバス作成・改訂 2. 教科書の作成・改訂 3. 教師研修実施 4. 対象校での日本語教育実施状況のモニタリング・評価 5. 中等教育における日本語教育導入に向けた中期計画への助言 6. ラオスにおける日本語教育普及事業への協力 |
所在地 | Vientiane, Lao P.D.R |
国際交流基金からの派遣者数 | 1名 |
国際交流基金からの派遣開始年 | 2016年 |