日本語専門家 派遣先情報・レポート
ラオス国立大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ラオス国立大学
National University of Laos
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ラオス国立大学文学部日本語学科は、ラオス初の日本語主専攻の高等教育機関として、今後のラオスの日本語教育を牽引して行く立場にある。ここに派遣されている日本語上級専門家は、カリキュラムシラバス作成や教員の日本語力・教授力のスキルアップに協力し、学生の日本語力向上を目指している。
所在地
Dongdok, Vientiane, Laos
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
日本語講座の概要

ラオスの日本語教育のために今できることを

ラオス国立大学
小松原奈保

ラオスでは日本語学習者数が増加しています。国際交流基金の行う海外日本語教育機関調査によると3年毎に学習者数が約2倍に増えていることがわかります。2021年の調査結果はまだ出ていませんが、現場では学習者数の増加を肌で感じています。これを中心で支えているのがラオス国立大学文学部日本語学科(以下、学科)の先生たちです。ここでは、学科の先生がラオスの日本語教育のために行っているさまざまな業務についてご紹介します。

ラオス国立大学の日本語学科で指導している先生の写真
日本語学科の先生たち

学習者の増加に対応するために -校舎の増築-

2020-2021年度から学科の新入生の数が今までの約2倍に増えたため、1学年2クラス体制で対応しました。しかし、2クラス体制になると、今ある教室では学習者を全員収容できません。そこで、在ラオス日本国大使館より草の根文化無償資金協力を受け、現校舎に増築する形で教室を増やすことになりました。学科の先生は忙しい授業の合間を縫って書類作成や建設会社との打ち合わせといった準備を進めました。2022年1月には無事に署名式を終え、すでに工事が始まっています。2022年11月には新しい教室が完成する予定です。

質の高い授業を提供するために -カリキュラム・シラバス改訂-

学科の学習者数は増加傾向にありますが、学習者の内、既習者の占める割合も高くなってきています。特に2023年には、中等教育で日本語を学んだ学生が入学してくる予定なので、今後、既習者の割合はさらに高くなり、より高度な日本語教育が求められるようになります。そこで、学科では卒業後の就職、進学を意識した質の高い授業を提供できるようにカリキュラムを改訂しました。新しいカリキュラムに沿った授業を行いながら、シラバスの調整作業が今も続いています。

未来の大学生を育てるために -中等教育支援-

ラオスでは2015年より中等教育段階で第二外国語としての日本語を導入しています。それ以来、導入校を増やしながら学年が上がり、現在は高校2年生までが日本語を勉強しています。この教科書や指導書の執筆にも学科の先生が携わっています。さらに、中等学校で教える先生たちの研修では学科の先生が講師も務めます。中等学校で日本語を学んだ生徒が大学に入ってくるのを楽しみにしつつ、今も執筆作業は続いています。

共に働く仲間を増やすために -日本語教師養成セミナー-

こうしたラオスの日本語教育を支えるために最も重要なことは、共に働く日本語教師を育てることです。しかし、ラオスにおいて日本語教師の待遇は決して良いとは言えないため、教師を志望する学生は多くありません。また、現在、学科に籍を置く先生たちも、副学部長に昇進したり、定年退職を迎えたりで徐々に学科を離れつつあります。学習者や、学習者を収容する教室が増えても、また、どんなに優れたカリキュラムやシラバスを整備しても、学生を指導する教師がいなければ学科を運営していくことはできません。今、学科の教師は一人も欠けることができない状況まで追い込まれています。

ラオス国立大学の教育学部で日本語を学ぶ学生の写真
日本語を学ぶ教育学部の学生

この問題を解決するため、教育学部の協力を受けて2022年2月~3月に「ラオス日本語教師養成セミナー」を開催しました。このセミナーには2つの目的があります。1つは日本語を学んだ日本語学科の学生や卒業生が教育学部の講師から教育論を学び、ラオスの教員免許取得の準備をするためです。これによって大学の日本語教師不足の解消を目指します。もう1つは教育学部の学生に日本語を学ぶ機会を提供することで、日本語教育に興味、関心を持ってもらうためです。これにより、中等教育における日本語教育の拡大を目指します。本年度は初の試みということで、教員免許を取得できるカリキュラムでの実施はできませんでした。しかし、現在の日本語教育の状況や、日本語教員不足の深刻さを関係者に知ってもらうとともに、教育学部との連携を強めることができ、大変有意義なセミナーとなりました。

学科の教師数が減り、一人あたりの担当授業数が増える中、大学の授業と並行してこんなにも多くの業務を学科の専任講師たった4名で行っています。私もその4人の輪に加わり、学科の先生が思い描く未来のラオスの日本語教育のために一意専心任務に励んでいます。

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