世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)マレーシアの中等日本語教育は30歳になりました

国際交流基金クアラルンプール日本文化センター
小西広明 中野友理

マレーシアの中等教育機関で日本語が学べるようになったのは1984年のことです。選択外国語科目の一つとして、6校の全寮制中等学校でスタートしました。今年でちょうど30年です。ここでは、マレーシアの中等教育機関の現状とクアラルンプール日本文化センター派遣専門家の取り組みをお伝えします。


今マレーシアでは全国56校の全寮制中等学校と、79校の一般中等学校で日本語を学んでいる若者がいます。この30年で学習機関は約23倍にも増えたことになります。今では全国13の州と3つの直轄領、どこに住んでいても日本語が勉強できるようになりました。2012年の日本語教育機関調査の結果によると、中等教育機関に在籍する17,034人が日本語を勉強しているそうです。


学校が増え、日本語を勉強したいと思う若者が増えるにつれて、当然先生の数も増えていきます。マレーシア人事院は1990年から初等・中等教育機関の先生方に、日本に留学してもらい、日本語教育関係の学位(学士)を取得させるプログラムを開始しました。一時中断した時期もありましたが、2008年まで継続されたこのプログラムは、2013年に最終期生たちが帰国して終了しました。このプログラムでの通算留学生数は156人になりました。また2005年からはマレーシア国内の研修で日本語教師を養成するプログラムも始まり、これまでに6期67人の先生方が新たに日本語教師としての道を歩き出しました。これまでは、現職他教科の先生方に日本語教師になってもらうための研修プログラムが中心でしたが、これからは、まだ教職についていない若者に直接日本語教師になってもらうためのプログラムも計画されています。


さて、こうした流れの中、国際交流基金派遣専門家はどのような仕事をしているのでしょうか。わたしたち派遣専門家は教科書、教材作成の支援や弁論大会の実施など、さまざまな中等教育機関支援を行っていますが、なかでも最も力を入れているのが先生方の研修です。たとえば2013年度は、マレーシア国内で日本語教師研修を受けた14人の先生方が1年間のインターン生として新たに全国の中等教育機関に派遣されたのですが、わたしたちは14人の学校すべてを訪問し、教授環境や日本語クラスの実施状況を視察し、先生方の授業を見学してきました。また4月と8月にはクアラルンプールに集まってもらって、それぞれ4日間の研修会を実施しました。また彼らだけではなく、これまでマレーシア国内で日本語教師研修を受けて教壇に立っている先生方に対しても7月と11月にProfessional Language Campと称する集中研修を実施しました。マレーシアでは各機関に日本語教師は一人だけというところが多いので、先生方の日本語力の保持向上とモチベーションの維持が何より大切になってきます。わたしたちの実施する研修会は、そうした悩みを抱える先生方に大いに役立っていると自負しています。

この他にもわたしたちは、地域の先生方を対象とした地域セミナーを全国数か所で開催し、所属機関の垣根を超えた交流の機会を設けたり、全国の先生方が一堂に会する「マレーシア日本語教育研究発表会」や「マレーシア日本語教育セミナー」を開催したりしています。


うれしいニュースもあります。国際交流基金アジアセンターが実施する日本語パートナーズ派遣事業で、今年度10人の日本語パートナーが中等教育機関に派遣される予定になっています。パートナーズの活躍で中等段階での日本語教育が今後ますます活況を呈するのは間違いありません。わたしたち専門家もパートナーズに協力し、その派遣効果を何倍にも高められるように一緒にがんばっていきたいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Kuala Lumpur
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金の海外拠点のひとつ。マレーシアの各機関と連携し、日本語教育に関する幅広い業務を行っている。教師全般に対する支援として、各種セミナー、研修コースの立案・実施、「マレーシア日本語教育セミナー」「マレーシア日本語教育研究発表会・浦和研修報告会」の開催など。中等教育段階に対しては、教師研修会や教師養成コースの実施などに協力するとともに教材開発、試験開発支援なども行っている。学習者支援としては、年に3回の弁論大会のほか、JF日本語教育スタンダードに準じたJFKL日本語講座を開講するなどしている。
所在地 18th Floor, Northpoint, Block B, Mid-Valley City, No.1, Medan Syed Putra, 59200 Kuala Lumpur, Malaysia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1995年

[お問い合わせ]

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
文化事業部 欧州・中東・アフリカチーム 担当:中島、永田
電話:03-5369-6063
Eメールアドレス:Q_europe_mideast_africa@jpf.go.jp
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