日本語専門家 派遣先情報・レポート
クアラルンプール日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
クアラルンプール日本文化センター
The Japan Foundation, Kuala Lumpur
派遣先機関の位置付け及び業務内容
国際交流基金の海外拠点のひとつ。マレーシアの各機関と連携し、日本語教育に関する幅広い業務を行っている。教師全般に対する支援として、教師研修会、「マレーシア日本語教育セミナー」「マレーシア日本語教育国際研究発表会」などを開催している。中等教育機関に対しては、中等教師向けの研修会の実施、教師養成コースへの協力などを行っている。学習者支援としては、JF日本語教育スタンダードに基づいた日本語講座の運営、「JFにほんごeラーニング みなと」を使ったオンライン講座、中等生徒対象の弁論大会などを実施している。
所在地
18th Floor, Northpoint, Block B, Mid-Valley City, No.1, Medan Syed Putra, 59200 Kuala Lumpur, Malaysia
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
1995年

マレーシア人教師とともに

国際交流基金クアラルンプール日本文化センター
長田佳奈子、天願千里佳

「マレーシア人教師とのティーム・ティーチング」

クアラルンプール日本文化センター(以下、JFKL)は、1989年の開所以来、日本語教師育成、日本語教授法の向上を目的とした教師研修やセミナーを実施してきましたが、2021年10月から2022年1月にかけて、全10回20時間の「初級レベルを教えるための日本語教授法講座」をオンラインで実施しました。内容はコースデザイン、かな、語彙、文法、漢字、会話、教室活動、授業設計、異文化理解、評価の10講座です。

この講座を実施するにあたり、マレーシア日本語教師会の協力を得ることができ、9名のマレーシア人教師と日本語専門家でティーム・ティーチングを行いました。初めての試みでしたが、スムーズに講座が実施できたのは、ひとえにマレーシア人教師の教師教育者としての資質が高いからだと考えます。本講座を27名が修了しましたが、受講生も積極的に参加してくれました。以下、受講生の声を紹介します。

  1. どのテーマも日本語教師としてしっかり把握しなくてはならないテーマだと思います。時間が許されるなら、もっと細かいところまでやりたかったです。
  2. 10のテーマで教師としてまだまだ不十分の部分があるので、これから学んだ情報や知識を実践して勉強し続けます。
  3. 異文化理解が特に興味深かったです。ただ日本語を教えるだけではなく、言語を通して文化を教えるのはすごく大事だと知りました。
  4. 私のような日本語を正式に教えた経験がない、そしていい日本語の先生になりたい者にとって、この教授法講座はとてもとても役に立つと思います。
  5. 日本語を教えてきた長年の経験を持つスピーカー全員に刺激を受けました。

2022年2月19日と20日に計7時間、マレーシア教育省教員養成大学を2020年度に修了した13名と2021年度に修了した7名を対象に「教材ワークショップ」を行いました。この20名の新人教師は、教師としての専門知識を1年程度学んだだけで教育現場に入っていきます。JFKLは支援の一環として教材寄贈をすることにしましたが、ただ教材を渡すだけでは使いこなせないと考え、ワークショップを行いました。そして、講義の一部をJFKLの若手マレーシア人講師も担当しました。

マレーシアで実施された日本語教材ワークショップの写真
講義を担当するマレーシア人講師

JFKLがマレーシアの日本語教育支援を進めるうえで、力のあるマレーシア人教師との協働は欠かせませんが、そのためにも、教師研修ができるマレーシア人教師の育成も視野に入れていく必要があると考えます。

「中等教育教科書の副教材を作成しています」

コロナ禍でオンライン授業が続く中、マレーシアの中等学校で使われている日本語教科書の副教材を希望する声が多かったため、JFKLでワークブック作成を企画し、マレーシア教育省の協力のもと、有志の中等教育日本語教師15名とともにワークブック編集委員会を開催することにしました。そして、活動制限令が緩和されたものの、まだ対面で集まるのが難しい中、2021年11月と2022年1月にクアラルンプールにマレーシア全国から教師が集まり、それぞれ2日半ずつ計5日間、作業をしました。日本語専門家2名は2021年4月にマレーシアに着任して以来、オンラインで中等教育の先生方とやりとりしてきましたが、やっと対面で会うことができました。集まった中堅からベテラン教師の皆さんも再会を喜んでいました。

さて編集委員会ですが、意欲にあふれ、個性的な教師が集まっただけあって、すべてがスムーズに進むというわけにはいきません。全国の生徒向けにワークブックを作成するためには、それぞれがいいと思うものを提案するだけではうまくいかないこともあり、途中で方向性を見直す必要もありました。しかし、限られた時間の中で皆がチームワークと調整能力を発揮し、一通り練習問題の草稿を作成することができました。完成までもう少し時間がかかりますが、力を合わせていきたいです。

マレーシア全国の生徒向けに作成するワークブック作成委員会の写真
ワークブック編集委員会の様子

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