世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 東北タイ・中等教育機関日本語科目活性化プロジェクト

コンケン大学
長田 佳奈子

 コンケン大学(以下、KKU)はタイ東北地方にある国立総合大学です。教育学部に日本語教員養成課程が開設されたのは2004年。2012年3月に第4期生が5年間の課程を修了したところです。日本語専門家は、日本語教育アドバイザーとして、KKUの日本語教育課程の運営支援、タイ東北部の中等教育機関支援などの業務に携わっています。今回はKKUの中等教育機関支援の一部を紹介します。

 KKUは、中等教育機関の日本語教員のネットワークを構築することと、中等教育機関の生徒に異文化理解の場や日本語使用の機会を与えることを目指しています。2011年には「東北タイ・中等教育機関日本語科目活性化プロジェクト」と称し、①KKU日本語教育ワークショップ、②出張日本語プロモーション、③日本語イベントを実施しました。

KKU日本語教育ワークショップ

 ワークショップはKKUスタッフとスラナリー校の武井専門家で企画、実施しました。「自分の授業をふりかえり、授業の目標および活動を再考する」、「コミュニケーション能力を伸ばす授業方法を具体的に考える」、「参加者間の情報および意見交換を促進し、ネットワークの構築を図る」を目標に、2011年度中に5回実施、累計188名(各回平均37.6名)の教師が参加しました。テーマは、ひらがな指導、漢字指導、会話練習、文化の扱い方など、初級前半の内容が中心でしたが、講師からの情報提供だけでなく、教員同士で楽しく意見交換ができる場になりました。KKUの若手タイ人教員も講師に挑戦しました。

日本語教育ワークショップの様子1の写真
日本語教育ワークショップの様子①

日本語教育ワークショップの様子2の写真
日本語教育ワークショップの様子②

②出張日本語プロモーション

 ロイエット、ヤソートン、スリン、サコナコーン、バンパイ、ムアンポンの中等教育機関6校へ赴き、コンケン大学2~4年生(累計53名)が日本語プロモーションを実施しました。これは「日本語を学習していても話す機会の少ない生徒と日本語で交流すること」、「日本語未習生徒に日本語や日本文化に触れる機会を提供し、日本語学習に興味を持ってもらうこと」をねらい、各校で3時間程度、日本語や日本文化を扱った活動をするものです。参加生徒は431名。タイの大学生はイベントを盛り上げるのが得意で、生徒に喜ばれました。

③日本語イベント 

 2012年1月13日、KKU教育学部で、在タイ日本国大使館、日本学生支援機構などとの共催で、日本留学フェアを開催。395名(中高生169名、大学生226名)の参加があり、盛況でした。内容は、日本留学説明会、日本留学生経験者の体験談、スピーチ・コンテスト、漢字・語彙クイズ大会などです。スピーチ・コンテストには中高生10名、大学生4名、漢字・語彙クイズ大会には中高生9組27名が参加しました。また、会場の外にカラオケ、習字、カルタ、だんご作り、コスプレなどのブースを作り、中高生が大学生と交流しました。

 本プロジェクトは2012年度も実施しますが、上記①~③に加え、中等教育機関向けに、タイ人教員と日本人教員のティーム・ティーチング事例集を作成することも考えています。タイ東北部だけでなく、タイ北部の先生にも協力をお願いする予定です。そして、授業事例を集めたり、発信していく過程で、多くの先生方と情報交換したいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Khon Kaen University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
コンケン大学は1964年にタイ東北部で最初に設立された大学で、17学部および大学院を有するタイ東北部最大の総合大学である。教育学部、人文社会学部で日本語教育を行っている。日本語教育専門家は、教育学部日本語教育課程の運営サポート、日本語と日本語教育科目の指導、教育実習指導、タイ人講師のサポート、地域支援等を行う。
所在地 123 Mitraparp Highway, Khon Kaen City,40002 THAILAND
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
コンケン大学教育学部日本語教育プログラム
日本語講座の概要
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