世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)コンケン大学教育学部日本語教育課程について

コンケン大学
飯尾幸司

みなさん、こんにちは。2013年4月からコンケン大学で仕事をさせていただいている飯尾幸司と申します。今回はコンケン大学教育学部で行われている日本語教育について簡単にご報告したいと思います。


タイでは1981年から後期中等教育機関(高校)の第二外国語に日本語が正式に採用され、2001年には前期中等教育機関(中学)でも日本語を取り入れることが可能となり、そして、2010年にはタイ政府の中等教育レベルを国際化に対応できる水準にするという方針のもと、理系を含む全ての後期中等教育機関で第二外国語の履修が可能となりました。国際交流基金が行った調査によると、2009年に78,802人だったタイの日本語学習者数が、2012年には129,616人となっており(増加率64.5%)、増加分の大部分は中等教育機関の伸びによるものとなっています。


タイの中等教育機関で専任外国語教員となるためには、基本的に、大学で5年間の教育課程を修了するか、タイ教育省の定めた機関で1年の教育実習を修了しなければなりません。以前は大学で日本語教育を専攻できるところがなかったため、英語や数学といった他教科からコンバートされた教員が多かったのですが、2009年からコンケン大学教育学部が毎年25名程度の卒業生を輩出するようになり、その半数程度が毎年日本語教師として(数名は公務員として、あとは非常勤講師として)働くようになっています。現在日本語教育が専攻できる大学はタイの中でコンケン大学だけなので(ブラパー大学にも日本語教育課程がありますが、現在新入生を募集していません)、その重要性は今後更に高まることが予想されます。


では、コンケン大学教育学部ではどのようなことが行われているのか、少しだけ紹介させていただきます。日本語の授業はもちろん、音声学、文字教育、文化教育、日本語教授法など、日本人に対して行われる日本語教師養成講座にも引けを取らない専門的かつ実践的な内容となっています。実は、私が当専攻のカリキュラムや学生の力などをまだ十分に把握していない時にある高校教師から、インターンシップなどを利用して4年で教員になる道もあるのに、わざわざ時間とお金をかけて5年通う意味は何なのかという質問を受け、受け答えに窮したことがあるのですが、今なら、日本語教育についてしっかり学ぶことができることが当専攻で学ぶ最大のメリットであると自信をもって答えることができます。


学生たちは4年間日本語と日本語教育等について学び、5年時に1年間の教育実習に出かけて行きます。昨年度は25名の実習生全員が無事教育実習を修了しました。我々教師たちは年に4回その教育実習を評価しに行くことになっているのですが、1回目の評価の際には、正直なところ、1時間ずっと黙って授業を見ているのに苦痛を感じることもありましたが、学生たちは試行錯誤を繰り返し、皆に成長の跡がうかがえたことが我々教員にとってもとても大きな喜びでした。中には4回目の評価の際に減点ポイントを探すのが難しい学生もいたほどです。彼らのうち7名が既に公務員(日本語教員)になることが決まっています。


当専攻は2004年にできたばかりで、更なる発展の可能性を大いに秘めています。今後も当専攻で学ぶ多くの学生が、日本語教師としての喜びややりがいを感じられるよう、一緒に働く教師たちと力を合わせて頑張っていこうと考えています。

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