世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)より多くの先生方のためにデキルコト-「見る!日本語の教え方」プロジェクト始動-

国際交流基金バンコク日本文化センター(タイ東北部中等教育機関)
福永達士

日本語専門家がいるトコロ

授業の様子その1
日本語クラスで動詞カードゲームをしている様子

まず、私がいるところですが、Google Mapで「ナコーンラーチャシーマー」と入力してみてください。ナコーンラーチャシーマー県は、バンコクの北東約250キロのところにあって、東北部への玄関口と言われています。日本ではあまりなじみのない地名かもしれませんが、タイでは首都バンコクに次いで2番目に人口が多い県です。私がふだんいる学校は、その県の中心にあるスラナリーウィッタヤー学校(以下、スラナリー校)という名門女子中等学校です。生徒数は4000人を超え、外国語科目としては、日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、ミャンマー語などが教えられています。この学校には2012年から国際交流基金の日本語専門家(以下、専門家)が派遣されています。

日本語専門家のシゴト

授業の様子その2
日本語キャンプ出講時の1コマ

私のしごとには、大きく分けると主にふたつのミッションがあります。そのひとつが、配属先校支援です。スラナリー校には、タイ人日本語教師3名と、日本語教育の実習生2名がいます。専門家は、その先生や実習生たちと一緒にティーム・ティーチングで日本語を教えています。また、毎日の授業の中で日本語の教え方についてのアドバイス、そして教材作成などを行っています。そして、授業外で生徒に対する日本語サポートも大切なしごとです。

もうひとつの主な任務は、タイ東北部全体への中等教育支援です。担当する東北部の総面積は約168,854平方kmあり、この広さは東京都の約77倍、九州でいうと約4倍の広さです。この地域の各都市を飛び回って、日本語教育を行っている中等学校を定期的に訪問しています。また、日本語教育のセミナーやワークショップを開催したり、日本語キャンプやスピーチコンテストなどの日本語イベントへの協力を行ったりしています。

より多くの先生方のためにデキルコト
-「見る!日本語の教え方」プロジェクト始動-

ナコーンラーチャシーマーに派遣されてから約1年。これまでに学校訪問で数多くの授業を見学し、また教師研修などで先生方の声に耳を傾けてきた中で、ひとつ急いで解決すべきことがあきらかになりました。それは、日本語を教えることに日々困っている、苦労している先生方への定期的なサポートです。タイ国内のすべての学校を網羅するような教師研修を行うには限界があります。また、学校訪問による指導も、専門家が1学期間に複数回実施することはたいへん難しい状況です。せっかく研修があっても、地理的な問題や学校業務のために、参加したくても参加できない先生方が多くいます。さらに、学校によっては教師用指導書やクラス活動集などがあっても、タイ人の先生方によっては日本語能力などの問題からうまく活用できていないという現状があります。また最近は、「日本語を学ぶ」ためのウェブサイトは多くなってきましたが、「日本語を教える」ためのウェブサイトはあまり多くありません。あっても、専門的な用語が多く使われていると、日本語を母語としない先生方には使いづらいことも少なくありません。

そこで、手軽に見ることができる動画を通して、授業活動のアイディアを提供するプロジェクトを、タイ北部に派遣されている専門家と、国際交流基金バンコク日本文化センターの専任講師、そして私とで考えました。「動画を見て、すぐにわかる。動画を見て、すぐに授業で使える。」をコンセプトに、「見る!日本語の教え方」というウェブページを通して、2014年5月から約1年間、定期的に日本語の教え方について、動画を配信する予定です。

見る!日本語の教え方

https://www.facebook.com/miru.oshiekata

今回の企画趣旨には、わたしたち専門家が公的派遣であるという点も考慮しています。どこか特定の機関だけ、専門家が派遣されている学校だけの日本語教育支援ではなく、タイ全土にあるより多くの学校、より多くの先生方のためにできることを考えて企画しました。試行錯誤しながらですが、タイの日本語教育のために、少しでも多くの日本語教師に役立つ情報を発信していきたいと思っています。

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