世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)みんなでつながる日本語の輪!

バンコク日本文化センター(タイ東北部中等教育機関)
遠藤かおり

派遣先のスラナリー・ウィッタヤー校(以下、スラナリー校)は、タイ東北部の玄関口と言われるナコンラーチャシーマー県にあります。私はここを拠点に、東北部全体の中等教育機関における日本語教育支援を担当しています。

1.みんなでいっしょに

1クラス47名の今年度の高校1年生の画像
今年度の高校1年生は1クラス47名!

今年度スラナリー校には、4名のタイ人教師と2名の教育実習生が在籍しています。日々、先生方といっしょに「どうしたら生徒が楽しく日本語を学べるか」「日本に興味を持ってもらえるか」を考え、授業支援をしたりイベントを企画したりしています。経験や発想が豊かで、生徒たちのために時間や労力を惜しまない先生方の姿からは、私自身学ぶことも多くあります。

私がいつも大切にしていることは、一人ではなくみんなでいっしょに経験することです。何かをするときやしたいと思ったときに、自分一人だけで動くのではなく、できる限り先生方や生徒を巻き込むようにしています。そうすることで、先生方や生徒にとっても経験が増えますし、やり遂げたときの嬉しさも倍増します。みんなで楽しい時間を過ごし喜びを分かち合ってきたことによって、先生方や生徒とのつながりはもちろん、学年を越えた生徒同士のつながりもでき、スラナリー校の日本語の輪がより広く強く深くなってきたように感じています。

2.みんなで共有

私が担当する東北部は、タイの国土(日本の約1.4倍)の3分の1を占め、ラオスとカンボジアと国境を接する地域です。東北部には20の県があり、遠いところでは任地から車で7時間ほどかかる場所もあります。東北部で日本語教育を行っている中等教育機関を定期的に訪問し、アドバイジングや情報提供等を行うことが私の主な仕事のひとつです。

学校訪問をすると、授業や活動、日本語の教室に対する先生方の素晴らしいアイディアや工夫を見ることができます。それらのことを他の学校の先生方みなさんにも共有したいと思い、全国の中等教育機関で教えているタイ人教師を対象としたFacebookのグループページを北部派遣専門家と共に立ち上げました。ここでは、私たちが実際に見たり聞いたりしたアイディアや工夫の紹介をするのはもちろん、タイ全国の中等教育機関の先生方のつながりを作り、日本語の輪を広めていくことも目的のひとつとなっています。

2014年に始まった“日本語パートナーズ”(以下、NP)派遣事業により、東北部にも毎回NPが派遣されています。学校訪問の際には、生徒、先生、NPのみなさんが楽しそうに過ごしている姿を見ることができます。東北部はタイの他の地域と比べて日本人が少なく、教室外で日本語に触れる機会がほとんどないのが現状です。NPが派遣されることによって、生徒にとっては日本人・日本語と触れられる貴重な時間となり、タイ人の先生にとっては日本語のブラッシュアップの機会となっています。

3.みんなで一丸となって

今年度は、全国の公立の中等教育機関を対象とした大規模な日本語キャンプが2つ開催されました。タイ人日本語教師約80名が参加した「日本語教師キャンプ」と、高校2・3年生約100名が参加した「日本語インテンシブキャンプ」です。全国の教師や生徒が一堂に介し、いずれも4泊5日の合宿形式で行いました。教師キャンプはインテンシブキャンプと同じテーマで行い、先生方は「プロジェクト型学習」を教師と生徒の両方の視点から体験しました。そのときのフィードバックを参考にしながら、その後に開催されたインテンシブキャンプの内容を検討していきました。キャンプでは、テーマについて考えを深めながら日本語のスキルアップと21世紀型スキルの育成が目指されます。

今年度のキャンプデザインは、中等教育機関で日本語を教えているタイ人教師がメインとなって進めました。その他、参加者の書類の受け付けから会場準備、キャンプ中の活動に至るまで運営チームとしてキャンプ実施をサポートしてくださったのもタイ人の先生方です。タイ人の先生方、タイ教育省、そしてバンコク日本文化センターが一丸となって取り組んだことで、キャンプに関わった方々同士の新たなつながりが生まれ、タイにおける日本語の輪が広がり、みなさんにとって忘れがたい実り多いキャンプになったことと思います。

東北部の日本語キャンプでグループ発表をしている様子の画像
東北部の日本語キャンプで
グループ発表をしている様子

この全国規模のキャンプの波及効果が、少しずつ見え始めています。キャンプに関わった先生方がアイディアを持ち帰り、各地域で行われる日本語キャンプで実践しているのです。従来のキャンプで行われているような日本文化体験活動だけで終わらない新しいキャンプの形がタイ各地でだんだんと示されてきています。

業務1年目は、スラナリー校や東北部で業務にあたるための足場づくりの年でした。これまで築いてきたつながりや得てきた情報を大切にしながら、2年目はより発展的な支援をしていきたいと思います。

What We Do事業内容を知る