世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)地方でも日本語頑張っています!(3)

バリアブンタウ大学
笹村 はるか

ベトナム南部の地方にあるバリアブンタウ大学に着任し3年目となりました。ベトナム人教師との関係もより近くなり、3学期制の慌ただしい日々を周りに助けてもらいながら過ごしています。今回は、授業外の取り組みについて書きたいと思います。

大学の外へ

バリアブンタウ省には複数の工業団地があります。そのため日系企業の誘致も積極的に進められており、バリアブンタウ大学には日本語人材輩出も期待されています。しかしながら、学生たちは工業団地の存在を知ってはいても、そこが実際にどのようなところなのか知りません。そこで、将来の職場のイメージ作りの助けになればと思い、ビジネス日本語を学ぶ4年生と共に工業団地のひとつを訪問しました。そこで働く日本の方にビジネス日本語講座として、日本人と働く上で大切なこと、工業団地の概要についてお話しいただき、工業団地内の施設見学もさせていただきました。非常にきれいな施設であったため学生たちも工業団地に対するイメージが変わったようです。工業団地のある地区出身の学生からは「将来はここで働きたい」との声もありました。

この工業団地では卒業生も日本語を生かして働いています。これからさらに日系企業の進出が見込まれるバリアブンタウで、先輩に続き、後輩たちが一人でも二人でも活躍できるよう大学としても努力していかなければなりません。

日系企業の工業団地を見学する生徒たちの写真
将来の職場?

先輩といっしょに

2017年度のこのレポートにも書きましたが、「日本語を勉強したかったわけではない…」という学生が多数存在するのがこの大学の一面でもあり課題です。途中で退学するケースもあり、大学にとっても教師にとっても悩みの種です。ただ、その中でも「あきらめたくない」と頑張り続ける学生がいることも確かです。2年前はベトナム人教師と当時の4年生サポーターの助けを得て2年生対象のキャッチアップクラスを設置しました。今回は、もっと早い段階で少しでも「日本語、難しい」というイメージを払拭するために、ひらがな・カタカナを一通り終えた段階の1年生対象の勉強会が数週間にわたり開かれました。

先輩とともに学ぶ生徒たちの写真
先生より先輩のほうがいいよね

勉強会の進行役は若手のベトナム人教師、実際に1年生をサポートするのは3年生サポーターたち。当初は補講という形でベトナム人教師が授業をするという案でしたが、「先輩が手伝ったらどう?」という私の(いつもの軽々しい!)一言からこのような形になりました。私は一言発しただけで、あとはベトナム人の先生と学生たちで形にし、続けられた勉強会です。いい雰囲気の中、1年生がリラックスして復習している姿、参加してくれた多くの3年生が楽しそうに、誇らしそうに活動している姿が印象的でした。

授業外の取り組みである工業団地訪問も、勉強会も、今回限りにならずベトナム人教師や学生たちの手で、形を変えながら続けていければいいと思います。そして、私は陰ながらそのお手伝いをしていこうと思います。

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