世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)アゼルバイジャン人日本語教師の成長を支援するために

バクー国立大学
坂下 太一

バクー国立大学のアゼルバイジャン人日本語教師

今回はアゼルバイジャン人の日本語教師の方々を紹介します。私が派遣されているバクー国立大学では、3名の卒業生が日本語科目の教師として勤務しています。アゼルバイジャンの周辺国を見てみると、日本滞在経験のある方が帰国後に教師として勤務されていることが多いようですが、バクー国立大学の先生方は日本滞在経験者だけではなく、学生時代から日本語学習そのものに魅力を感じ、教師としてその経験を現在の学生に共有したいと考えている方々もいます。日本企業が少なく、日本への留学チャンスも多いとは言えないアゼルバイジャンで、日本語学習自体の意義と魅力を学生に伝えられる非常に頼りになる方々です。

アゼルバイジャン人日本語教師への支援

私は国際交流基金の日本語専門家として、日頃の授業の進め方など、先生方からの相談に乗り、より良い授業ができるようにサポートをしています。学習者としても教師としても経験のある方々ですので、アドバイスをするというより、話を聞きながらお互いの意見をすり合わせ、改善案を探していくといった作業に近いかもしれません。その他にも先生方からの希望にこたえ、週に1回~2回、先生方に日本語の授業を行っています。

教師になった後も日本語能力の向上を目指す先生方に感心しつつも、この時間では教授活動の改善にも生かしてもらえるように、授業では扱っていない教材や教授方法を取り入れています。先生方が学習者として有益であると実感した体験は、教師としての実践にもつながるはずです。また、日本語学習の教材は価値観を問われるものも多く、題材について話し合いを進めるうちに、相互理解が進み、信頼関係を築くことにもつながっています。

教師の交流・協働の場を目指して「日本語教師間勉強会・情報交換会」の開催

さて、アゼルバイジャンでは、バクー国立大学以外にも日本語を教えている方々がいます。しかし、日本語教師同士が交流する機会はほとんどありませんでした。バクー国立大学の日本語講師同士も、1週間に数回、授業の前後に顔を合わせる程度です。
「日本語専門家との勉強の時間だけではなく、アゼルバイジャン人教師同士で学び合える機会を作りたい。」
そう考えた私は、教師の協働学習の場を企画することにしました。アゼルバイジャン人教師の交流が進み、ともに問題解決のために協力できるネットワークができれば、日本語専門家に頼らずとも、この国の日本語教育は進歩していけるのではと考えたのです。

2018年2月より、教師の交流と協働を目指す場として「日本語教師間勉強会・情報交換会」が開かれるようになりました。初級・中級文法の教え方をグループで協議したり、参加者が授業中に扱った教材の紹介をしたり、問題意識の共有や問題解決のためのワークショップを行ったりしています。初めのうちはこのような場に慣れていないこともあり、意見の押し付け合いが目立ち、グループワークもうまく進められないことがありました。しかし、会の趣旨を説明し、内容の改善を重ねるうちに、これまでにはなかった教師同士のつながりが少しずつ生まれてきています。また、日本語専門家主導で始まった「日本語教師間勉強会・情報交換会」ですが、現在では先生方が積極的に提案してくれるようになりました。
「英語の先生を招待してみてはどうでしょう?」
「授業でこの文法を教えるのが難しいので、次のテーマにできませんか?」
このような先生方からの声はこの会を企画した私にとって、何よりの励みになります。 熱心なアゼルバイジャン人日本語教師の方々とともに、アゼルバイジャンの日本語教育の発展を目指して、今後も努力していきたいと思います。

グループワークの結果を発表する先生の写真
グループワークの結果を発表する先生

日本語教育に関するワークショップの様子の写真
日本語教育に関するワークショップの実施

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