世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ミンスク国立言語大学における業務報告 2012

ミンスク国立言語大学
石橋 美香

 ミンスク国立言語大学(以下、言語大)では、日本語学科は5年に1度のみ新入生を受け入れており、今年度は最終学年となる5年生の2クラスを担当した。報告者の担当授業は週に4コマの「会話」であった。

たった1名のクラスゲスト

クラスゲストとの記念の写真
クラスゲストとの記念写真

 昨年度は少ないながらも日本人のクラスゲストを数人迎えることができていたが、残念ながら今年度は1年間を通して参加してもらえたクラスゲストはたった1名のみであった。それもベラルーシ在住の日本人ではなく、ベラルーシに旅行でいらしていた方に依頼して参加してもらった。学生間のレベル差はあるが、最終学年となりスムーズに日本語でコミュニケーションできるようになってきているのに、それを活かせる場を十分に提供できなかったことが非常に残念であった。

モスクワ国際学生日本語弁論大会

イベント毎に様変わりする言語大構内の写真
イベント毎に様変わりする言語大構内

 ベラルーシで開催された日本語弁論大会で言語大の学生が優勝し、モスクワで行われた国際学生日本語弁論大会に出場した。この学生は昨年度モスクワで行われた同弁論大会にクラスメートが出場し上位入賞したのをきっかけに、自分もぜひ出場したいと1年前から希望していた学生であった。今年度出場したこの学生は上位入賞こそ逃したものの、毎日練習を重ね努力し、また新たな経験ができたことで達成感を感じられたようである。このように教師からだけではなく、クラスメートから良い影響を受け刺激し合える関係というのは日本語学習のモチベーション維持において非常に重要な要素となるだろう。

隣国ウクライナとの関係づくり

 2012年3月、ウクライナで開かれた日本研究のシンポジウムに学生4名と共に参加してきた。4名のうち2名が日本語・日本語研究の分科会で発表させてもらい、1名はロシア語でもう1名は日本語で発表した。時間の関係で報告者は日本語で発表した学生のものしか聞くことができなかったが、堂々と自分の意見を述べる姿は頼もしく感じた。今回発表しなかった学生たちもクラスメートの発表を聞いたり、様々な日本語教師や日本語学習者と交流することができたりと非常に良い刺激となったようである。シンポジウム参加や教師間の交流などベラルーシの日本語教育において隣国ウクライナは欠かせない存在となっている。今後もウクライナとの連携を強めていきたいと考えている。

学生の就職状況 

 ベラルーシでは、在学中に就職活動する学生もいれば、大学を卒業し夏休み後に就職活動を始めるという学生もいる。また在学中に内定をもらい、すでに働き始めている学生もいる。ベラルーシには日系企業が1社もなく、日本語に関する仕事に就職することは非常に厳しいのが現状である。しかし、数人ではあるが翻訳や通訳の仕事の依頼を定期的に受けている学生もいる。それから1名の学生が今年の9月より言語大の日本語学科で非常勤講師として働くことが決まっている。自身の日本語学習の経験を生かし、素晴らしい日本語教師として成長していってもらいたい。

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