世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ベラルーシ国立大学での活動

ベラルーシ国立大学
山口 覚

私がベラルーシに赴任してからもう数か月で2年になろうとしています。こちらへ来たばかりの頃は、私にとってはまったく理解不能のキリル文字(ロシア文字)やエキゾチックなロシア語の響きに戸惑うことばかりでしたが、派遣先の大学職員の方々や大使館の方々の暖かいサポートのおかげでここまで大きな問題もなく業務を続けてくることができました。ベラルーシ国立大学で私は昨年に引き続き3学年で計6コマの授業を行っています。担当は主に「会話」で、母語話者ならではの授業を心がけています。

弁論大会

語学学校から参加のサーシャさんの写真
笑顔でスピーチ
語学学校から参加のサーシャさん

第11回ベラルーシ弁論大会がベラルーシ国立大学で開催されました。日本とベラルーシのテレビ局が取材に訪れ大会の様子や出場者のインタビューなどが放映されました。審査時間を利用して現地の日本食レストランによる寿司のデモンストレーション/試食会が行われ、学生たちもとても喜んでいました。本年度は民間の日本語学校2校からの参加者がそれぞれ特別賞を獲得し、ベラルーシの日本語教育のすそ野の広がりを印象づけるものでした。

茶の湯デモンストレーション

茶の湯の写真
茶の湯
会場が静寂につつまれる

2013年11月に大使館の主催として、ミンスク市で茶道のデモンストレーションが行われました。学生たちもこのイベントに運営補助として参加しました。粗相があってはいけないと、前日の授業で即席に茶道の基本用語や御点前の手順を教えました。学生たちはまだ若く茶道のような伝統文化に格段の興味はなかったはずですが、当日の会場では学生たちは初めて間近に見る本格的な御点前に好奇心でいっぱいの様子。会場には日本語を学ぶ学生のほか、一般のベラルーシ人も多く訪れ、会場は立ち見が出るほどでした。学生たちは抹茶の味に感動したようです。また女子学生たちは本格的な着物の着付けと髪結いに大満足。イベント後の帰り道に学生たちは「今日は本当にいい一日でした」と、充実の表情を見せていました。

日本人が増えてほしい

ベラルーシでは日本人と接触する機会がほとんどないため、学生にとっては日本語母語話者の教師の授業は生の日本語に触れる貴重な機会となっています。全体的な傾向として、ベラルーシ国立大学の学生たちはいざ喋らなければいけない状況に置かれれば、特に予め準備をした場合は教師の予想をはるかに上回る饒舌さを見せることもあります。しかし、自発的に長い文で喋ってもらうには教師側での段取りに工夫が必要と感じることも多いです。現地でロシア語を学ぶ日本人留学生ともっと交流をもって日本語での会話に慣れてくれれば……と思うのですが、学生によると「恥ずかしい」「なかなかきっかけが作れない」とのことです。日本人からすると学生たちの慎み深さは非常に好感がもてるもので、微笑ましくもあるのですが、教える立場としてはもっと日本人慣れしてほしいと思うのも事実です。彼らが日本人との接触を求めていない訳ではありません。提携大学との交換留学や国際交流基金の訪日研修を経験した学生たちは、その経験を「大学時代の最良の思い出」と言います。このような「優等生」かつ「シャイ」で日本が大好きな学生がいるベラルーシと日本の交流の機会がこれから増えることを心から願います。

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