日本語専門家 派遣先情報・レポート
カレル大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
カレル大学
Charles University
派遣先機関の位置付け及び業務内容
チェコにおいて日本語・日本研究専攻の学科を持つ3大学のうちの一つであり、同国の日本研究・日本語教育の中心的な役割を担っている。研究者養成を目標とし、日本語学・社会・経済・歴史・文学・思想史等についての授業が行われており、学生は卒業論文のテーマもこれらから選択する。日本語専門家は、日本語教授、カリキュラム・教材作成への助言を行うほか、日本語教師会を始め、他の教育機関の日本語教育支援や日本語弁論大会等日本語教育関連行事への協力、また日本語教育関係者のネットワーク作りを業務とする。
所在地
Nám. Jana Palacha 2, 116 38 Praha 1, Czech Republic
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名
日本語講座の所属学部、学科名称
哲学部アジア研究所日本研究学専攻(通称 日本研究学科)
日本語講座の概要

「2021年度、欧州各国の先生たちとの協働作業を通じて」

カレル大学
川島眞紀子

2021年10月1日、カレル大学では2021-22年新年度が開講しました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの状況は一進一退をくりかえし、まだ油断はできないものの、推奨されているワクチン接種も進み、町が活気を取り戻してきたところです。今学期は約1年半ぶりに対面授業が復活し、教室で授業ができるようになりました。とりわけ新2年生にとって、これは大きな喜びになったようです。何しろ、入学以来初めて通学することができるようになったのですから。

「協働する意義と喜び」

私が2020年秋から取り組んでいる活動のひとつに「国際小噺合同発表会(KKGH)」があります。これは、日本語学習者の会話練習に小噺を取り入れる活動で、学習者の学習動機の活性化を促進するだけでなく、「小噺」を演じることを通じて、日本語や日本文化に親しむことができます。学習者のほとんどはもちろん小噺初心者ですが、教師側もまたほとんどの先生が小噺を演じるのが初めてなものですから、普段の先生と学習者という立場を越え、参加者として同じ舞台でともに日本語を楽しめる点に最大の魅力があります。

私が小噺に触れたきっかけは、2020年10月に国際交流基金ロンドン日本文化センター(以下、JFLO)が主催した教師のための小噺講座への参加でした。この講座は1回で完結するものではなく、その後も丁寧なフォローアップ研修、講習会や発表会が続きました。もともとコメディやお笑いが好きな私は、ユーモアを日本語教育に取り入れるという点に惹かれ、すべての講座に参加しました。JFLOの講座で知り合った欧州各地の先生方との間には、自ずと小噺発表会の開催計画が持ち上がり、2021年6月に「国際小噺合同発表会(KKGH)」をオンラインで開催することができました。小噺にすっかり魅せられてしまった私たち5名の運営メンバーは、わずか3、4ヶ月程度の突貫工事で発表会を準備し、開催まで漕ぎ着けてしまいました。「てしまいました」と口を突くほどの起動エネルギーが、小噺にあったのです。発表会には欧州の8か国から13人の先生と90名近い学習者が参加しました。カレル大学ではオンラインの「小噺倶楽部」を毎週開き、KKGHにも5名の学生が参加しました。

小噺を披露する和服姿の生徒の写真
「高速道路」を演じるカレル大生

私自身にとってKKGHへの参加には、非常に大きな意義がありました。

まず、あらためてオンラインを人々が有機的に繋がる方法として実感しました。コロナ禍のように行動が制限された状況下においても、オンラインがあったからこそ、外の世界の人々と繋がることができました。未だにKKGH運営メンバーの先生たちに対面でお会いする機会がないのですが、それでも月例で小噺の合同稽古を行ったり、2022年4月に第2回国際小噺合同発表会(KKGH)の開催準備に取りかかっていることは有機的な関係を築くことができたと言えるのではないでしょうか。

KKGHウェブサイトURL: https://sites.google.com/view/kobanashifestival/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0

私はKKGHで他国の先生と繋がることができたおかげで、孤立化をまぬがれたと思っています。海外で好きな仕事ができるという機会は、望めば誰でも手に入るというものではありません。その機会と職場の同僚に恵まれたことは稀有であると、非常に感謝していますが、特に、今回のパンデミックのように、予測不可能な事態が発生した場合、その収束が長引けば長引くほど不安や孤独感は募りやすくなります。ちょうど息苦しさを自覚し始めてきたころ、KKGHという協働プロジェクトは、私の考えに風穴を開けてくれました。小噺を学生とともにもっと楽しみたいという意欲は、ドラマ技法やアニメーテッドラーニングといった周辺分野にも広がっていきました。今は新しい発見と学びに気づくことができる幸せを感じています。

小噺を披露する和服姿の生徒の写真
「登校拒否」を演じるカレル大生

「次はこの経験を地元で」

大学の通常授業と並行し、無我夢中で取り組んできたKKGHがひと段落した頃、私はここまでの状況を振り返り、自分の足元であるチェコ国内の活動に視線を戻していきたいと思い至りました。そこで、2021年12月から月に1度オンラインで、チェコと隣国スロバキアの先生といっしょに日本語教育に携わる上での悩みなどを共有したり、おしゃべりしたりしています。個人で教えていらっしゃる先生やふだんあまり交流できない先生と少人数で気軽に楽しんでいるこの対話が、次はどんなところに繋がっていくか、とても楽しみです。

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