世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)実践!人と人をつなぐ日本語教育

国際交流基金ブダペスト日本文化センター
村上吉文・相川弓映

国際交流基金ブダペスト日本文化センター(以下、JFBP)では、中東欧13カ国の日本語教師の皆さまの支援をしつつ、ハンガリー国内の日本語教育支援やJFBPにおける日本語講座の実施も行っています。ここでは、中東欧全域を担当する村上と、ハンガリー国内を担当する相川が両方の仕事をご紹介します!

當作靖彦先生をお呼びした研修会

今年(2016年)の中東欧日本語教育研修会は「人と人をつなぐ日本語教育」というテーマで開催しました。基調講演はカリフォルニア大学サンディエゴ校教授の當作靖彦先生に「つながれば授業が変わる!ソーシャル・ネットワーキング・アプローチとは」というタイトルでお話していただきました。私がこの研修会を担当するのはこれで3年目ですが、任期中に當作靖彦先生をお呼びすることは着任当初にハンガリーの現場を見て以来の目標でしたので、その目標を実現することができ、當作先生はもちろん、開催に協力してくださったみなさまに改めてお礼を申し上げたいと思います。

今回からは発表中の動画もオンラインで中継され、録画共有を希望された方の発表は、JFBPYouTube公式チャンネルで公開 されています。(一部、肖像権の問題で非公開になっている部分があります)

さて、中東欧日本語教育研修会が「人と人をつなぐ日本語教育」というタイトルになったのは近年のICT(情報通信技術)の発展により海外にいても日本語話者とコミュニケーションを行うことが簡単になったことが背景にあります。

JFBPの講座でもこうした取り組みを各種行っていますので、これ以降は講座担当の相川がご紹介します。

JFBP日本語講座川柳コンテスト

川柳コンテスト最優秀者、表彰の様子の画像
川柳コンテスト最優秀者、表彰の様子

JFBP日本語講座では、昨年から川柳コンテストを実施しています。A1からB2レベルまでの各クラスで川柳を作る活動を行い、その後、インターネット投票を受け付けました。すると、なんと!世界各国100人を超える方から投票やコメントをいただきました。この過程でおもしろかったのは、「雨の中 彼を見つけた どうしよう」という句をめぐって、投票者同士のやり取りが生まれたことです。「雨の日に、自分は傘を持っているけど彼は傘を持っていない。相合傘をするか…どうしようという意味では?」、「いやいや、雨で髪がぐしゃぐしゃな時に、彼を見つけた…どうしようという意味だよ」といったやり取りがありました。このようなやり取りやいただいたコメントを学生に伝えた上で、入賞者にインタビューをとり、YouTube公式チャンネルで公開しました。インタビューの中で、上の句に関する疑問に学生が答えてくれています。この句の背景に興味がある方は、ぜひご覧ください!

このようにICTを活用し、人と人をつなぐことで、学生が作った川柳に対し日本人がどう思ったか、それを聞いて学生がどう思ったか、新たなやり取りが生まれました。このように、教室でただ川柳を作るだけではなく、もう1歩進んだ活動を目指しています!

ハンガリー日本語プレゼンテーションコンテスト

プレゼンコンテストの舞台裏の様子の画像
プレゼンコンテストの舞台裏!

もう1つICTを活用した新たな試みをご紹介します。

JFBPでは、今年から「ハンガリー日本語プレゼンテーションコンテスト(以下、プレゼンコンテスト)」を始めました。ハンガリーの日本語学習者が発表する場を設けることで、日ごろの学習の成果を披露し、更に学習意欲を高めてもらうことを目標としています。

プレゼンコンテストの会場には、一般来場者の姿はなく、発表者と審査員、そしてPCとビデオカメラだけがありました。プレゼンコンテストの様子は、ライブ中継され、現在はYouTube公式チャンネルで公開されています。発表中、日本だけではなく様々な国でライブ中継を見た方からコメントをいただきました。ここでも、ICTを活用することで、その場にいる私と他者だけではなく、ハンガリーを超え、日本…そして世界中の人々とつながることができました。

日本語を勉強することは、自国のことばや文化を日本という視点から見つめ直すことにつながるとよく言われます。ここにICTを加えることで、更に大きく、そして様々な視点からハンガリーを見つめることができるのではないでしょうか。

JFBPでは、教室、ハンガリー国内を超えたコミュニケーションの広がりを目指しています!

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Budapest
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ブダペスト日本文化センターはハンガリーを含む中東欧計13か国を活動範囲とする広域事務所として位置付けられている。中東欧13か国の日本語普及およびアドバイザー業務を担当する日本語上級専門家と、ハンガリー国内およびセンターの日本語講座運営を担当する日本語専門家の計2名が派遣されている。
業務内容は、一般を対象とした日本語講座の運営をはじめ、研修会等の企画および実施、スピーチコンテスト等日本語関連行事への協力、日本語教育関連情報の収集と提供、日本語教育機関・教師への助言や支援、機関訪問等がある。また、日本-ハンガリー協力フォーラム事業で作成したCEFR準拠教材『できる』の普及にも力を入れている。
所在地 1062 Budapest, Aradi u. 8-10. Hungary
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2000年
What We Do事業内容を知る